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『高嶺の花にはトゲがある(4)』
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『高嶺の花にはトゲがある(4)』
私は取り乱している事を悟られないように、つとめて平静を装う。
「いえ、何でもないわ。うん、それで、その条件というのはどういうもの?」
「前提として、彼には絶対服従です」
「……ええと、それは金銭的な話かしら?」
今回の話は、いわゆる姉活的な話だろうか。
であれば話は早い。
その彼自身を紹介してもらえるのか、またはその彼を介して別の子を紹介してもらうための紹介料なのかはともかく、金銭で始まる関係なら交渉による条件もつけやすいし、ご破算となった時も女性側が一方的に迫ったなど、えん罪に問われることも少ないから。
けれど春日井さんは首を横に振る。
「お金の話はきっと出ません。彼とうまくいくかどうかは、すべて会長自身の努力によります」
「……どういう事?」
「例えばですが」
春日井さんはスマホを取り出して、何度かフリック操作した後、私にその画面を見せる。
そこに映っているのはデジタルデータのマンガだ。
ただし、青年向けのけっこうエグい内容。
少し読み進めただけで内容が把握できる、というか思い出した。
オラオラ気質だけど淫乱なイケメンが何人ものセフレを囲って、それをペットのように扱うエッチなマンガ。
コンビニで少しだけ、ほんとの少しだけ立ち読みした事のあるマンガだった。
「え、ええと、これは?」
「こちらは『鬼畜天使』というマンガで、天使のようなイケメンが実はサド気質で、女をモノのように扱い、ペットと称して連れましたりする作品です」
「そ、そうなの。春日井さん、こういったものが好きなのね?」
「そうですね。商業誌の中では」
「商業誌?」
「さて。会長」
春日井さんが居住まいを正して、私に向きあう。
「ここからは仮定の話、あくまで仮のお話として聞いてください」
「え、ええ」
つまり、本当の話だけれど他言はするな、という意味かしらね。
けれど男性が関係する話だし、慎重になるのは当然か。
「もしこんなマンガに出てくるような男性が本当にいたらどうしますか?」
「え?」
こんな男性? こんな特殊な性癖の女の欲望を煮詰めたような趣味の?
「そんな男の人、いるわけ……」
「ですから、あくまで仮の話です。もしこんな男性がいて。何でも言う事を聞けばセフレにしてやる、孕ませてやる、と言われたとしたら、会長はどう返事をしますか?」
「そ、そんな事……」
ずい、と春日井さんが机に手をついて、私の顔を正面からのぞきこむ。
「誤解しないでくださいね。私は会長の趣味嗜好をお聞きしているわけではないんです」
春日井さんの目は、私を値踏みするようなものに変わっている。
「私も紹介する立場である以上、彼の機嫌を損ねるような方を紹介するわけにはいきません。それを踏まえて、改めてお伺いします。もし、そういう男性がいて、体を求められる状況になった時、会長は彼からの欲望を受け入れ、女のプライドを捨てて、男性の下になる事を許容できますか??」
春日井さんの言葉や態度にからかっているような気配はない。
まさか本当にそんな男性がいるんだろうか。
いや、いるんだろう。
春日井さんのさきほどのセフレという言葉も聞き間違いではなかった。
ただ、普段の彼女からは想像もできない話や言葉に、私の脳が追い付いていないだけだ。
けれど、もしこれが全て本当の話だったら?
私はゴクリとノドをならした。
祖母や母が求めるような交際ではないかもしれないけれど……肉体関係、さらには妊活への交渉も期待できる相手とこの先、何度出会える?
相手の年や素性はわからない。
けれど、まるで天から降ってきたようなチャンスには違いない。
私は春日井さんに対して、ハッキリと告げた。
「ええ。私は何を求められてもそれを受け入れるわ」
と、そう言ったものの。
例のエッチなマンガを思い出すと少しだけ腰が引けてしまって言葉を付けたした。
「け、けどね? あまり痛いものとか、ケガをしそうな危ない事は、その、ね? そのあたり、どうかしら? 春日井さんは、そういうおつきあいをしているのよね?」
私はそう、春日井さんにたずねかける。
この真面目で誠実だと思っていた後輩は、果たして私よりどれほど先にいるのだろうか。
私は取り乱している事を悟られないように、つとめて平静を装う。
「いえ、何でもないわ。うん、それで、その条件というのはどういうもの?」
「前提として、彼には絶対服従です」
「……ええと、それは金銭的な話かしら?」
今回の話は、いわゆる姉活的な話だろうか。
であれば話は早い。
その彼自身を紹介してもらえるのか、またはその彼を介して別の子を紹介してもらうための紹介料なのかはともかく、金銭で始まる関係なら交渉による条件もつけやすいし、ご破算となった時も女性側が一方的に迫ったなど、えん罪に問われることも少ないから。
けれど春日井さんは首を横に振る。
「お金の話はきっと出ません。彼とうまくいくかどうかは、すべて会長自身の努力によります」
「……どういう事?」
「例えばですが」
春日井さんはスマホを取り出して、何度かフリック操作した後、私にその画面を見せる。
そこに映っているのはデジタルデータのマンガだ。
ただし、青年向けのけっこうエグい内容。
少し読み進めただけで内容が把握できる、というか思い出した。
オラオラ気質だけど淫乱なイケメンが何人ものセフレを囲って、それをペットのように扱うエッチなマンガ。
コンビニで少しだけ、ほんとの少しだけ立ち読みした事のあるマンガだった。
「え、ええと、これは?」
「こちらは『鬼畜天使』というマンガで、天使のようなイケメンが実はサド気質で、女をモノのように扱い、ペットと称して連れましたりする作品です」
「そ、そうなの。春日井さん、こういったものが好きなのね?」
「そうですね。商業誌の中では」
「商業誌?」
「さて。会長」
春日井さんが居住まいを正して、私に向きあう。
「ここからは仮定の話、あくまで仮のお話として聞いてください」
「え、ええ」
つまり、本当の話だけれど他言はするな、という意味かしらね。
けれど男性が関係する話だし、慎重になるのは当然か。
「もしこんなマンガに出てくるような男性が本当にいたらどうしますか?」
「え?」
こんな男性? こんな特殊な性癖の女の欲望を煮詰めたような趣味の?
「そんな男の人、いるわけ……」
「ですから、あくまで仮の話です。もしこんな男性がいて。何でも言う事を聞けばセフレにしてやる、孕ませてやる、と言われたとしたら、会長はどう返事をしますか?」
「そ、そんな事……」
ずい、と春日井さんが机に手をついて、私の顔を正面からのぞきこむ。
「誤解しないでくださいね。私は会長の趣味嗜好をお聞きしているわけではないんです」
春日井さんの目は、私を値踏みするようなものに変わっている。
「私も紹介する立場である以上、彼の機嫌を損ねるような方を紹介するわけにはいきません。それを踏まえて、改めてお伺いします。もし、そういう男性がいて、体を求められる状況になった時、会長は彼からの欲望を受け入れ、女のプライドを捨てて、男性の下になる事を許容できますか??」
春日井さんの言葉や態度にからかっているような気配はない。
まさか本当にそんな男性がいるんだろうか。
いや、いるんだろう。
春日井さんのさきほどのセフレという言葉も聞き間違いではなかった。
ただ、普段の彼女からは想像もできない話や言葉に、私の脳が追い付いていないだけだ。
けれど、もしこれが全て本当の話だったら?
私はゴクリとノドをならした。
祖母や母が求めるような交際ではないかもしれないけれど……肉体関係、さらには妊活への交渉も期待できる相手とこの先、何度出会える?
相手の年や素性はわからない。
けれど、まるで天から降ってきたようなチャンスには違いない。
私は春日井さんに対して、ハッキリと告げた。
「ええ。私は何を求められてもそれを受け入れるわ」
と、そう言ったものの。
例のエッチなマンガを思い出すと少しだけ腰が引けてしまって言葉を付けたした。
「け、けどね? あまり痛いものとか、ケガをしそうな危ない事は、その、ね? そのあたり、どうかしら? 春日井さんは、そういうおつきあいをしているのよね?」
私はそう、春日井さんにたずねかける。
この真面目で誠実だと思っていた後輩は、果たして私よりどれほど先にいるのだろうか。
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