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『高嶺の花にはトゲがある(3)』
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『高嶺の花にはトゲがある(3)』
「あ、あの春日井さん」
「はい?」
「その、プライベートな話だから、イヤなら答えなくても良いのだけどね?」
私は答えを強制していないと強調しつつも、有無を言わせぬ勢いで彼女に迫った。
「春日井さんも副会長の事、気になっていたようだけど、その、彼がもう顔を出さなくてもなんとも思わないの?」
「私"も"という事は、会長はそうなのですか?」
「え、ええ。まぁ、その、そのね」
「ふふ、冗談です。女であれば身近にある男子の事は気になってしまいますもの」
「そ、そうね」
なんだろう。
私の方が年上だというのに、彼女からは私の知らない人生経験からくる、凄み、というのを感じて、つい腰が引けてしまう。
「ご安心を。私は副会長に対して男性以上の興味を持っていません。あと生徒会の輪や規律を乱すような事もいたしませんから」
遠まわしな言い方ながらも、春日井さんは副会長に興味がないと明言した。
「そう、なのね。ええと、それは……春日井さんには特定の、その、パートナーが、いるという事かしら」
私はそのまま確信に迫る。
プライバシーに踏み込んだ質問というのは承知しているけれど、聞かずにはいられなかった。
もし本当に春日井さんにパートナーがいるのであれば、そのツテで誰かを紹介してもらえないか、そういう下心が透けるほどの必死さで。
もちろん、こんな事、誰でも彼でもと言える話じゃない。
一年に満たない付き合いながらも、真面目で誠実さを備えた、春日井さんという相手を信用しての事だ。
「もし私が、そうです、と答えたら会長はどうされます?」
春日井さんはお金の入った封筒を私の机の上に置いて私を見る。
「その方の紹介を。この通り、恥を忍んでお願いしたいわ」
私はイスから立ち上がり、頭を下げた。
「会長、頭を上げてください。何か事情でもおありですか?」
正面に立っていた春日井さんが慌てて私の横に回り込み、肩を抱きしめてくれる。
「そうね。あまり他人に言えるようなお話ではないのだけれど……」
このやり取りからして、春日井さんに男性のパートナーがいる事は間違いない。
「会長のご実家にはウチの母もお世話になっていますし、決して他言はしません」
「そうだったわね。春日井さんのお母さまのお勤め先はウチの系列会社だったかしら?」
私は思い出したように振舞うが、春日井さんは最初からそれをしっかり考慮に入れて対応している。
親同士のビジネス関係を、私自身の学園生活に持ち込むことは決してしないと誓っていたが、状況が状況であり、かつ、春日井さんから言い出してくれたのなら……今回だけは。
「それで会長の事情というのは? 私でよければお聞きしますけれど」
「あのね、実は……」
私はそんな春日井さんを信用して、私を取り巻く状況を簡単に説明した。
今まで他人にこんな細かく家の事を離した事はないけれど、副会長にそっぽを向かれてショックを受けていたせいか、色々と話しすぎてしまった。
春日井さんは黙ってそんな私の言葉に耳を傾け、時折うなずき、そうして全てを聞き終えた後。
「いくつか条件をお付けしますが、それでよろしければ私のセフレを紹介します。もちろん彼が承諾すればですが。ただ会長であれば大丈夫だと思います。私も彼には"偽物の優等生な私"でガッカリさせてしまった埋め合わせをしたかったので」
「本当!? ありがと……えっ?」
今。
春日井さんはなんと言ったのだろう?
「あの。春日井さん、ええと、今、その?」
「何か?」
きょとんとした顔で、首をかしげる春日井さん。
……そうよね。聞き間違いよね。
そもそも、セ、セフレだなんて、そんな淫らな言葉、真面目な春日井さんの口から出るはずもないわ。
私だって、コンビニでちょっとだけ立ち読みした雑誌で見ただけだし。
ホントに少しだけ見ただけよ。
「あ、あの春日井さん」
「はい?」
「その、プライベートな話だから、イヤなら答えなくても良いのだけどね?」
私は答えを強制していないと強調しつつも、有無を言わせぬ勢いで彼女に迫った。
「春日井さんも副会長の事、気になっていたようだけど、その、彼がもう顔を出さなくてもなんとも思わないの?」
「私"も"という事は、会長はそうなのですか?」
「え、ええ。まぁ、その、そのね」
「ふふ、冗談です。女であれば身近にある男子の事は気になってしまいますもの」
「そ、そうね」
なんだろう。
私の方が年上だというのに、彼女からは私の知らない人生経験からくる、凄み、というのを感じて、つい腰が引けてしまう。
「ご安心を。私は副会長に対して男性以上の興味を持っていません。あと生徒会の輪や規律を乱すような事もいたしませんから」
遠まわしな言い方ながらも、春日井さんは副会長に興味がないと明言した。
「そう、なのね。ええと、それは……春日井さんには特定の、その、パートナーが、いるという事かしら」
私はそのまま確信に迫る。
プライバシーに踏み込んだ質問というのは承知しているけれど、聞かずにはいられなかった。
もし本当に春日井さんにパートナーがいるのであれば、そのツテで誰かを紹介してもらえないか、そういう下心が透けるほどの必死さで。
もちろん、こんな事、誰でも彼でもと言える話じゃない。
一年に満たない付き合いながらも、真面目で誠実さを備えた、春日井さんという相手を信用しての事だ。
「もし私が、そうです、と答えたら会長はどうされます?」
春日井さんはお金の入った封筒を私の机の上に置いて私を見る。
「その方の紹介を。この通り、恥を忍んでお願いしたいわ」
私はイスから立ち上がり、頭を下げた。
「会長、頭を上げてください。何か事情でもおありですか?」
正面に立っていた春日井さんが慌てて私の横に回り込み、肩を抱きしめてくれる。
「そうね。あまり他人に言えるようなお話ではないのだけれど……」
このやり取りからして、春日井さんに男性のパートナーがいる事は間違いない。
「会長のご実家にはウチの母もお世話になっていますし、決して他言はしません」
「そうだったわね。春日井さんのお母さまのお勤め先はウチの系列会社だったかしら?」
私は思い出したように振舞うが、春日井さんは最初からそれをしっかり考慮に入れて対応している。
親同士のビジネス関係を、私自身の学園生活に持ち込むことは決してしないと誓っていたが、状況が状況であり、かつ、春日井さんから言い出してくれたのなら……今回だけは。
「それで会長の事情というのは? 私でよければお聞きしますけれど」
「あのね、実は……」
私はそんな春日井さんを信用して、私を取り巻く状況を簡単に説明した。
今まで他人にこんな細かく家の事を離した事はないけれど、副会長にそっぽを向かれてショックを受けていたせいか、色々と話しすぎてしまった。
春日井さんは黙ってそんな私の言葉に耳を傾け、時折うなずき、そうして全てを聞き終えた後。
「いくつか条件をお付けしますが、それでよろしければ私のセフレを紹介します。もちろん彼が承諾すればですが。ただ会長であれば大丈夫だと思います。私も彼には"偽物の優等生な私"でガッカリさせてしまった埋め合わせをしたかったので」
「本当!? ありがと……えっ?」
今。
春日井さんはなんと言ったのだろう?
「あの。春日井さん、ええと、今、その?」
「何か?」
きょとんとした顔で、首をかしげる春日井さん。
……そうよね。聞き間違いよね。
そもそも、セ、セフレだなんて、そんな淫らな言葉、真面目な春日井さんの口から出るはずもないわ。
私だって、コンビニでちょっとだけ立ち読みした雑誌で見ただけだし。
ホントに少しだけ見ただけよ。
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