【R18】転生先は男女比１：３０の貞操逆転世界～ビッチを夢見る三十路の魂～

『後輩は見た！ 硬派の先輩が男と歩いているその現場を！（７）』

『後輩は見た！　硬派の先輩が男と歩いているその現場を！（７）』

「さて、それでなんだったっけ。ああ、手を握ればいいんだっけ？」
「は、ひゃい！　お、お願いしま、しまッ！」

ろれつが回らない。

いい匂いが！　

イケメンな顔が！

触れるか触れないかぐらい近くにあるのに、まともでいられる女がいるわけない！

それでもなんかと右手をそっと差し出した。

あ、あくしゅ。

あくしゅできる、と。

京センパイはなんのタメもなく。

「薫ちゃんは背も顔も手も小さいねぇ？」
「ひゃっ！」

ウチの右手を京センパイは、その大きな左手で握ってくれた。

そして。

「はい、そっちの手も出してね」
「え、あ、はい、はいッス！」

ちぢこまって胸のあたりに抱えていたウチの左手を、右手でとって優しく握ってくれた。

「ふふ、これでいいのかな？」
「あ、あ、あ」

両手を握られ、ブラブラとさせる先輩。

まるで子供同士が手をつないで遊んでるようで。

「宮城。あんまりガキをからかうなって言っておいただろ」

離れた所から青葉センパイが声をかけてくる。

むぅ。

青葉センパイはいつもウチをガキ扱いしてくる。

青葉センパイの事は好きだが、これだけは前々からイヤだったし、ぶっちゃけ、内心で腹も立ってた。

たったイッコ上なだけでと大人ぶってウチを下に見る。

まぁ、それでイバってきたり、パシらされたりなんてことはされなかったし、うまいサンドイッチも作ってくれるし我慢してたんスけどね？

ただ、今になって考えると確かに、お、男を知ってる青葉センパイに比べれば、ウチはまだガキだった。

けど、今、まさに大人の階段に半分足をのっけかけているウチの邪魔はしないで欲しい！

「まぁまぁ。おててつないで喜んでいる子供相手に大人げないよ、夏木さん」

……あ。

ウチは再び、自分の勘違いを知って、恥ずかしくて顔が火照る。

ウチにとって、いや、男に縁のなかった、そしてこれからも縁のない女にとって、男と手をつなぐってのは一生の思い出で大事件。

けれど、センパイたちからすれば、それはもう当然の日常で。

それどころかセンパイたちの日常はもっとアレ……な、ワケで。

やっぱりウチはガキだった。

悔しいというより、手の届かない場所にいる人たちっていうのが本当に存在している事への絶望感や、自分の存在価値への喪失感みたいな、なんだかよくわからない悪い感情がウチの心をぐちゃぐちゃにしていく。

涙がにじみ始めた。

さすがにこんな顔を見られたら、情けなさすぎる。

ウチは必死に顔を伏せて隠した。

そんなウチの頭の上から京センパイの声が降ってくる。

「さて。これで薫ちゃんとの取引は終えたわけだから、ボクと夏木さんの事は黙っててくれるね？」
「は……はい……ッス」

ああ、この幸せな時間も終わり。

と思った時、握られていた手に力がこもった。

「じゃあ、ここからはわるーい後輩ちゃんにおしおきの時間だね？」
「え？」
「すこしくらい痛い思いをしてもらわないとね？」
「え？　え？」

ウチが見上げると京センパイがこちらを見ている。

笑ってるのに笑顔じゃない、そんな微笑み。

よくわからないけれど、ウチが向けられたことのない男の人の顔だった。