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『後輩は見た! 硬派の先輩が男と歩いているその現場を!(2)』
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『後輩は見た! 硬派の先輩が男と歩いているその現場を!(2)』
目を疑うような光景に薫は見開いた目を、今度は細めて凝視する。
たまたま一緒に並んで歩いている、というにはあまりにも距離が近い。
というか、男子生徒の方からくっついているようにも見える。
「……センパイの彼氏? え、マジッスか?」
普段の言動から、そんな相手がいるとは考えもしなかった。
――薫が夏木と知り合った、否、一方的に自分から話しかけたのは入学式の日。
早々に入学式をバックれていた薫は、慣れない学園の敷地をウロウロとしながら、隠し持ったタバコを吸う場所を探していた。
いつも一緒にサボっていたワルトモたちと学校が離れ、まったく知り合いがいない校舎を一人でうろつき、校舎裏まで足をのばした時、そこには先客がいた。
壁にもたれかかるように座っているヒザの前には缶コーヒーがあり、すでに長居中である事がわかる。
ケータイをイジっていた顔がこちらに向いた。
目つきが悪いというのに、さらに睨んでくるので非常にガラが悪い。
コンクリの床で水たまりのように広がっているロングスカートに、同じく地につくほどの長髪、それも金色に染めている派手な容姿。
迫力ある相手に一瞬ひるんだものの、薫とて、誰彼かまわずケンカをふっかけるわけでもない。
むしろ、群れずに一人でサボりを決めている夏木に興味を持った。
無言で立ちっぱなしだった薫に夏木が先に口を開く。
「一年か? 入学式は?」
「チャス。サボリっす」
話しぶりからして同学年というわけではなさそうだ。
そして、いきなりイチャモンをつけてくるセンパイでもなさそうだと安心した薫。
スカートの中のポケットからタバコを取り出し、あいさつ代わりに一本すすめようと近寄ると、急に夏木が目を細めた。
「相席なら断るぞ、お前、タバコくせえ」
ポケットから手を離す薫。
「……わかるんスか? 今日はまだ吸ってないんスけど。先輩は吸わないッスか?」
「実家が飲食やってる。アタシは吸わないし、吸うダチもいらねえ」
別に飲食店だからといって、身内が吸っていけないという話もないだろうが、客商売の娘が未成年喫煙というのも外聞がわるいのだろうと勝手にアタリをつける。
もしかしたら手伝いなんかもしているかもしれないし、従業員がタバコの匂いをさせるのは、良いイメージにはならないだろう。
かくいう自分の実家も飲食店経営だが、アルコールを提供する店なのでむしろ喫煙する客も多く、そういった匂いをさせる事を気にする必要もないのだ。
むしろ自分がタバコに興味を持ったのも、そんな客たちの悪影響だろう。
「そっスか。じゃあ、まあ、ここではやめときますんで」
「いや、よそ行けよ。なんだ? アタシとお友達にでもなりたいってか?」
「まぁー、そんなかんじッスね。えーと、センパイ、お名前は?」
「なんで初対面のヤニくせーガキに教えなきゃいけねーんだ。どっか行けよ」
別に年上にツナギを作りたいとか、処世術でとか、そういうつもりではなかった。
薫は初めて見たのだ。
テレビや雑誌以外で自分より胸の大きな女を。
この先輩といれば、多少は自分が目立たないかも、そんな打算もあったが、高校色恋デビューを目指して付き合いの悪くなった旧友に自分を合わせるより、一見、無愛想でとっつきにくそうだが、この先輩と過ごした方が楽しそうに思えたのだ。
以来、ヒマを見ては絡みにいき、根負けした夏木に名前を教えてもらい、自分も名乗った後はそこそこ仲良くしてもらっている。
つきあいが始まれば、夏木は嫌がらず、男関係の過去の愚痴なんかを聞いてくれた。
しかも、きまぐれでサンドイッチなんかを持ってきてくれる事がある。
夏木いわく、余り物だからと。
確かに飲食店の娘ならそういう事もあるかもしれない。
ちなみに薫自身は注文聞きと配膳のみしかやらないので、調理はからっきしである。
けど、あれは自分がしばしば食事代を浮かして、腹をすかしているのに気づいたからだと思っている。
(青葉センパイに限って、男のために料理を練習したとか、男に渡そうとして渡せなかった、なんてあるわけネーし)
そんな不器用で、無愛想で、面倒見のいい夏木だったが、自身の事はほとんど口にしない。
誰だって男相手にイヤな記憶はあるものだし、無理に聞くものでもないと思ってる。
少なくとも自分にとって、夏木は大きい胸の苦しみを共感できる貴重な相手だ。
仲良くやっていければいいなと思っていた。
そして、この出会いこそ自分の人生が変わるキッカケになったのだと、後々、夏木と飲むたびに何度も昔話として語りだすので、そのたびに夏木には百回以上聞いたとウザがられる事になる。
そんな人生を一変する出来事が、今まさに起ころうとしていた。
「は? マジで? 青葉センパイ……ッスよね?」
見間違いようのない金髪と長いスカート。
「いや、マジで青葉センパイじゃん。誰ッスか、隣のあのオトコ!?」
目を疑うような光景に薫は見開いた目を、今度は細めて凝視する。
たまたま一緒に並んで歩いている、というにはあまりにも距離が近い。
というか、男子生徒の方からくっついているようにも見える。
「……センパイの彼氏? え、マジッスか?」
普段の言動から、そんな相手がいるとは考えもしなかった。
――薫が夏木と知り合った、否、一方的に自分から話しかけたのは入学式の日。
早々に入学式をバックれていた薫は、慣れない学園の敷地をウロウロとしながら、隠し持ったタバコを吸う場所を探していた。
いつも一緒にサボっていたワルトモたちと学校が離れ、まったく知り合いがいない校舎を一人でうろつき、校舎裏まで足をのばした時、そこには先客がいた。
壁にもたれかかるように座っているヒザの前には缶コーヒーがあり、すでに長居中である事がわかる。
ケータイをイジっていた顔がこちらに向いた。
目つきが悪いというのに、さらに睨んでくるので非常にガラが悪い。
コンクリの床で水たまりのように広がっているロングスカートに、同じく地につくほどの長髪、それも金色に染めている派手な容姿。
迫力ある相手に一瞬ひるんだものの、薫とて、誰彼かまわずケンカをふっかけるわけでもない。
むしろ、群れずに一人でサボりを決めている夏木に興味を持った。
無言で立ちっぱなしだった薫に夏木が先に口を開く。
「一年か? 入学式は?」
「チャス。サボリっす」
話しぶりからして同学年というわけではなさそうだ。
そして、いきなりイチャモンをつけてくるセンパイでもなさそうだと安心した薫。
スカートの中のポケットからタバコを取り出し、あいさつ代わりに一本すすめようと近寄ると、急に夏木が目を細めた。
「相席なら断るぞ、お前、タバコくせえ」
ポケットから手を離す薫。
「……わかるんスか? 今日はまだ吸ってないんスけど。先輩は吸わないッスか?」
「実家が飲食やってる。アタシは吸わないし、吸うダチもいらねえ」
別に飲食店だからといって、身内が吸っていけないという話もないだろうが、客商売の娘が未成年喫煙というのも外聞がわるいのだろうと勝手にアタリをつける。
もしかしたら手伝いなんかもしているかもしれないし、従業員がタバコの匂いをさせるのは、良いイメージにはならないだろう。
かくいう自分の実家も飲食店経営だが、アルコールを提供する店なのでむしろ喫煙する客も多く、そういった匂いをさせる事を気にする必要もないのだ。
むしろ自分がタバコに興味を持ったのも、そんな客たちの悪影響だろう。
「そっスか。じゃあ、まあ、ここではやめときますんで」
「いや、よそ行けよ。なんだ? アタシとお友達にでもなりたいってか?」
「まぁー、そんなかんじッスね。えーと、センパイ、お名前は?」
「なんで初対面のヤニくせーガキに教えなきゃいけねーんだ。どっか行けよ」
別に年上にツナギを作りたいとか、処世術でとか、そういうつもりではなかった。
薫は初めて見たのだ。
テレビや雑誌以外で自分より胸の大きな女を。
この先輩といれば、多少は自分が目立たないかも、そんな打算もあったが、高校色恋デビューを目指して付き合いの悪くなった旧友に自分を合わせるより、一見、無愛想でとっつきにくそうだが、この先輩と過ごした方が楽しそうに思えたのだ。
以来、ヒマを見ては絡みにいき、根負けした夏木に名前を教えてもらい、自分も名乗った後はそこそこ仲良くしてもらっている。
つきあいが始まれば、夏木は嫌がらず、男関係の過去の愚痴なんかを聞いてくれた。
しかも、きまぐれでサンドイッチなんかを持ってきてくれる事がある。
夏木いわく、余り物だからと。
確かに飲食店の娘ならそういう事もあるかもしれない。
ちなみに薫自身は注文聞きと配膳のみしかやらないので、調理はからっきしである。
けど、あれは自分がしばしば食事代を浮かして、腹をすかしているのに気づいたからだと思っている。
(青葉センパイに限って、男のために料理を練習したとか、男に渡そうとして渡せなかった、なんてあるわけネーし)
そんな不器用で、無愛想で、面倒見のいい夏木だったが、自身の事はほとんど口にしない。
誰だって男相手にイヤな記憶はあるものだし、無理に聞くものでもないと思ってる。
少なくとも自分にとって、夏木は大きい胸の苦しみを共感できる貴重な相手だ。
仲良くやっていければいいなと思っていた。
そして、この出会いこそ自分の人生が変わるキッカケになったのだと、後々、夏木と飲むたびに何度も昔話として語りだすので、そのたびに夏木には百回以上聞いたとウザがられる事になる。
そんな人生を一変する出来事が、今まさに起ころうとしていた。
「は? マジで? 青葉センパイ……ッスよね?」
見間違いようのない金髪と長いスカート。
「いや、マジで青葉センパイじゃん。誰ッスか、隣のあのオトコ!?」
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