【R18】転生先は男女比1:30の貞操逆転世界~ビッチを夢見る三十路の魂~

尾和 ハボレ

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『後輩は見た! 硬派の先輩が男と歩いているその現場を!(1)』

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『後輩は見た! 硬派の先輩が男と歩いているその現場を!(1)』

日華学園、通称ニチ学、などと呼ばれている学園の風紀や校則はさほど厳しいものではない。

特に髪型や服装(過度の改造は指導対象)だが、ガラが悪い、程度であれば教師もうるさく言わない。

逆にどれだけまともに見える恰好でも、他人に迷惑行為をするという者に関しては厳しい。

特に男子生徒、男子教員などに対する性的な迷惑行為は即座に退学、男性側の対応によっては警察沙汰にもなりかねない。

……と、一般的な学園である。

そんなよくある学園の校舎裏に座り込む一人の女生徒の姿があった。

「だりーッスねぇ」

銀髪のショートカットをゆらしながら、タバコをくゆらせているのは、新一年生の加瀬 薫(カセ カオル)。

いわゆるヤンチャな生徒だ。

タバコも吸うし、街の盛り場やゲームセンターなどでは揉め事やケンカ沙汰なんかも起こす、やや問題児。

中学では仲間とツルんで授業をサボる事も多かったが、中学で一緒だったワルトモ達は別の学校に行ってしまった。

このニチガク、偏差値は決して低い方ではない。

薫はさほど勉強に時間を費やすタイプでは決してないが、要領と物覚えの良さが成績に直結するタイプだった。

また、家庭的、経済的な事情をもあり、中学の恩師が手を尽くしてもぎとった、経済的な支援が受けられる奨学生枠での推薦入学でもある。

素行が悪いといっても男性が関与するものはないため、そこはあまり問題にされなかった。

試験や面接の時は、髪を黒くして猫を十匹くらいかぶった成果でもある。

「んー、返信すらこねーってなんスかねぇ?」

かつての旧友と学外で合流してサボろうと連絡をとっても、新しくクラスメートになった男子に顔を覚えてもらう大事な時期とあって真面目に出席中だった。

「あいつらもアホっすよね、男のダチなんかできるわけねーでしょーに。夏休みまでに男をつくって一緒に海に行く? むりむりむりむり、かたつむりー」

などと、強がりの独り言をとともにタバコを地面におしつけてもみ消す。

「男ねー。まー、ロクなもんじゃねーってわかっちゃいるんスけど」

周りには硬派を謳ってはいるが、彼女も女である。

出来れば男の友人や……恋人なんかも欲しいが、無理だと諦めている。

そもそもグレたキッカケが男がらみだ。

中学二年の頃、思い切って男子に告白したものの、ひどい振られ方をした。

それ自体はよくある話だが、自分のコンプレックスを手ひどくあざわられたのだ。

いわく『その胸、ブヨブヨ揺れて気持ち悪いから寄るな』と。

以来、男が自分の胸を嫌悪する以上に、自分が男を嫌悪するようになった。

「乳を出すためのモンでも、乳が出せるようにならなきゃただのオモリっすわ、ジャマくっさ」

立てば足元が見えなくなるほど、ジャマくさい二つのふくらみが自分の胸にある。

男にとって乳房というのは、不気味な肉塊でしかないと聞く。

少なくとも視界に入って気持ちいいものではなく、万一、触れさせてしまったら大事だ。

胸の大きさに悩む世の女性は、そういった事故が起こらないように、近くに男性がいる時は背を丸めて胸を隠したり、サラシやバンテージなどで胸を圧迫したりすることが多い。

ワルトモの中には自分より胸が小さいくせに、それでも必死にサラシを巻くヤツもいる。

「サラシ程度で隠せる胸がうらやましーッスわ」

薫のそれは多少しめつけただけで隠せる大きさではないため、あきらめている。

とはいえ、生まれ持った身体的特徴を侮蔑の目で見られるというのは気分の良いものではない。

校舎を歩いているだけで、時折すれ違う男子生徒が露骨に眉をしかめたり、場合によっては気持ち悪いなどと罵声を浴びせてくる。

しかしどれだけ相手に否があろうと、男子生徒に文句を言う事や、まして怒って女から殴りかかるなんて事をすれば退学だけではすまない。

結果、薫は登校しても校舎の中にいる時間が少なくなった。

保健室登校なんてガラでもないため、こうして人目につかない場所で時間を潰している。

人付き合いや面倒ごとはゴメンだ、というつもりだが、やはり他人の、特に男の目がわずらわしい。

絶対に誰にも言わないが正直な所、自分をさげすむ男の視線が怖い、というのも大きいのだ。

「海かー……」

男と行くことはできないにしても、ずいぶんと海やプールに行っていない。

特段、そういった場所が好きというわけではないが、行かないというのと、行けないというのでは話がまったく違う。

視線を下にやる。

「はぁ……」

見れば見るほど、ジャマでしかない。

自分の体の一部だというのに、憎しみばかり募っていく。

せめてこれさえなければ、女の友人同士で海やらプールにも行けるだろうが、こんなモノを水着に詰め込んで遊びに行けば、友人たちも巻き添えにして、いつもよりも厳しい男に嫌悪の目を向けられるだけだ。

「男と一緒にいれば、そういうトラブルもないでしょーけどねー」

逆に同伴している男性でもいれば、他の女性から何か言われる事もないし(やっかみや嫉妬しはともかく)他の男も、わざわざ言ってこないだろう。

だからこそ無理だ。

こんな自分と一緒に歩いていてくれるような、それも水着姿で一緒に海を楽しんでくれるような男なんているはずもない。

「ふう……はぁ……ふぅぅぅう」

薫は、今日、何度目かもわからないため息を、タバコの煙とともに吐き出した。

時刻はそろそろ放課後だ。

体育館裏という事もあって、体育館内や少し離れた場所にあるグラウンドから、運動部の声が聞こえ始めてきた。

「元気なこって」

スポーツをバカにするわけではないが、興味のない自分にとっては時間と体力の無駄、ぐらいにしか思っていない。

うるさくなってきたし、そろそろ駅前に出てゲーセンか、夕方過ぎにちょっとヤンチャ系でカッコいい男店員が出てくるコーヒーショップにでも行くかと思っていた時。

「……あ、青葉センパイ」

自分より一つ上の、長い金髪をした女生徒の姿がこちらに向かってくるのを見つけて薫は微笑んだ。

見事なまでの金髪はよく目立つ。

さすがにアレは何か言われそうだが、それでもずっとあの色のままだ。

変わった事と言えばずっとストレートロングだったのが、最近ポニーテールになった事ぐらいだろうか。

とはいえ、知り合って一月たらずだ。

気分で髪型を変える人かもしれないし、首回りが暑くなってきたからとかそういう理由もあるだろう。

「青葉センパ……ッ!?」

薫は校舎裏の陰から出て、声をかけようとしたが、目を見開いて言葉を飲み込んだ。

「え、あれ、マジ……ッスか?」

夏木の隣には――男子生徒がいた。
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