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『春日井 陽子』
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『春日井 陽子』
将来の妊活と引き換えに春日井さんとセフレ契約を交わした翌日。
一抹の不安とともに、我が愛しのセフレたちがいる二年一組の教室の前でひとつ深呼吸をする。
「ふぅ……よし。おはよー」
軽やかな挨拶とともに横引きの扉をあけて教室に入る。
「あ、おはよう、宮城君!」
「宮君、おはようっ」
「お、おはよう!」
いつも最初に挨拶をする後ろのドア付近の子達と笑顔を交し合いながら教室に入る。
すると最前列の自分の席で今日も書き物をしていた春日井さんが、オレに気付くなり寄ってきた。
いきなりワンワンモードなったりしないよね?
「おはよう、宮城君。さっそくで悪いのだけど……」
春日井さんは手にしていたプリントをオレに見せながら、今日の移動教室で必要な資料がある事を伝えてくる。
「今日も準備でお昼休みの終わりには職員室に行かなといけないから、教室の施錠をお願いしてもいいかしら? お昼前には私が職員室からカギをもらってくるから」
「あ、うん。わかった」
朝からハレンチ学園の始業ベルが鳴ったらどうしようと思ったため一瞬、身構えてしまったが何のことはない。
いつもの春日井さん、いつもの真面目な委員長からの業務連絡だ。
「宮城君どうしたの? 私、何か変な事を言ったかしら?」
「あ、ううん。なんでもないよ」
ついジッとみてしまったせいで春日井さんが首をかしげてたずねてくる。
女の子ってスゲーな。
昨日あんなやりとりがあったのに、こんな平然とできるもんなんだな……。
あ、けど夏木さんの時は普通にキョドりまくっていたから、春日井さんが演技派なだけか。
さすが露出系。胆力が違うってことだろう。いや、そうか?
オレが色々な意味で感心しつつ、ホッと胸をなでおろしていると、春日井さんがサッと周囲を見まわし、すっとオレの耳打ちした。
「大丈夫、私はちゃんとあおずけができるわ。だからたまにでいいの。こうしてご褒美をちょうだい?」
「え?」
何の事かと思った瞬間、春日井さんが持っていたオレの足元にプリントを落としてしまう。
「あら、私ったら」
「……う」
自然な動作でかがみこむ時、立っているオレの股間に何気ない動作でほおずりしていった。
そうしてプリントを拾い上げて、オレの横を通り過ぎる時。
「いつでも私を使ってね?」
春日井さんはオレの耳元でそう囁いたあと、最前列の自分の席に座った。
やってくれるのう、クソエロ真面目系黒髪美少女委員長め。
息子さん、今の不意打ちフェザータッチでお怒り心頭である。
椅子に座り書き物を再開したその背中をイジメたいという欲求に駆られる。
それこそ今から教室から連れ出し、体育館裏のトイレに……と、いかんいかん。
クラスの中で露骨に一人の女のコを誘ったりしすぎると、すぐに噂になってしまう。
しかし――いくらなんでも息子さんが敏感すぎる。
春日井さんに誘われると、まるで自分の意識以上に性衝動に駆られる気がするのは気のせいか?
『テステス。聞こえますか? 私は今、貴方の頭に直接語り掛けています。ちなみに返事は結構です』
唐突の神様通信。
しかも返信不要? 何だろうか?
『貴方の持つ『性癖染色』、つまり、相手好みの性癖や性行為を直感で察知して無意識に忖度するスキルは、彼女の持つ『性癖染色(強火)』に打ち負けるという事ですよ。ふふふ……』
「は? なんて?」
つい言葉が口から漏れた。
周囲の子たちがオレの声に反応してこちらを見る。
オレは手を振って愛想笑いで誤魔化した。
強火? だと?
しかし、それを問いかけてもこの性悪女神が素直に答えてくれるはずもない。
あちらさんが返答無用と言ったのだから、ガン無視させてもらう。
『……まったく面白くありませんね。もう少し慌ててくれれば甲斐もあるというのに。まぁ一つご安心を。彼女に与えた力が効果を発揮する男は貴方のみです。見境なくどうこうという事はありませんよ。ただ、ただ、全て貴方の思い通りになるのが面白くない私の嫌がらせです』
畜生、ハッキリいいやがった!
けど、まぁ。この性的なスキルがオレにだけ向くならそれは安心だ。
見境なく無自覚でエロいスキルをぶちまけていたら、絶対にトラブルになる。
『ふふふ……それではまた。貴方にはもう一つのスキルがありますが、それはまたその時に。もっとも説明するほどのものでもない、最もわかりやすいものですけれどね』
あと一つ、か。
予想がつかないでもないが、それがハッキリする時は……色々と覚悟を決める時だな。
女神の声が消え、オレはホッと息をつき。
「おはよ、夏木さん」
「……ん」
いつもの姿勢。背を丸めるようにして居眠りしている夏木さんの背中に挨拶をすると、寝ぼけたような、虚ろな声が帰ってくる。
「いつも朝、早いわりに眠そうだよね」
ずっと疑問だったことをたずねてみると。
「朝、店の仕込みを手伝ってるからな。それが終わる時間が微妙なんだよ。家で二度寝できるほどの時間でもないし」
「ああ、そういう事。、で、早くから来て学校で寝てるんだ」
「……ん」
話は終わりととばかりに、モゾモゾしたあと眠りに戻る夏木さん。
けれど、お母さんの涼香さんが入院している時も早くから来ていたようだったけれど、それはなぜだろうか。
「涼香さんが入院してた時も早くから来てたよね?」
「……」
お、だんまりだ。
なんか都合の悪い事を聞いたようだ。もちろんつっこむチャンスだ。
「どうしてかな?」
「……アタシだってな」
「ん?」
ものすごく小さい声だ。オレは耳をすませる。
「隣の席に男が転入なんてしてきたら……その、チャンスかなって思うんだよ
「あー」
そう言えば、転入という設定で異世界転生してきているけど、オレの記憶はそこが抜けている。
今の所、不具合はないから特に気にしていないけど、確かに最初に夏木さんにアプローチした時から好感度は高かった。
お手てつなぐのがお駄賃、なんていっていた頃だ。ずいぶんと懐かしいような。
「初めて手をつないだ時、嬉しかった?」
「おまっ……くそ……」
からかわれている事に気付き、腕の中にうずめていた顔をバッとあげてこっちを見る夏木さん。
肌が白いので、紅潮するとすぐにほほがかわいく染まる。
「ああ、そうさ、嬉しかったよ。初めて男に触れたんだからな!」
小声で怒鳴るという器用な事をしてヤオレをにらんでくる。
オレはそれを笑顔でカウンター(イケメンに限る)する。
「ふふ、ボクも夏木さんとで会えて嬉しいよ」
「……バカ」
かわいい。
そうんなふうにかわいいセフレと朝の挨拶をしていると。
「おはよう、朝のホームルームを始めるぞ」
号令係のオレだが、ホームルームは無しだ。
冬原先生が今日のスケジュールを淡々と説明していく。
「そんな所だ」
話が終わると冬原先生は、目の前、最前列の春日井さんをチラリとみる。
春日井さんがうなずいていた。
そして視線がオレに向く。
春日井さんとどうなったのか、その確認だろうか?
けっこう、いや、かなりズサンで穴だらけだったものの、先生の協力あって無事、みんな幸せに収まったという点では感謝すべきかな。
オレは笑顔でうなずく。
すると先生は微妙な顔をしつつも、教壇から降りて教室から出ていった。
先生からすれば、オレにセフレが増えたというマイナスと、今後のセフレ内序列を確立するために味方を作ったというプラスが交錯して、あんな顔になったんだろう。
ふと、ズボンの後ろポケットのケータイが震えた。
メールは先生からだった。
『私が最初で一番なんだからな!!!!!!!』
という内容。
先生の威厳というのは悪い意味でとっくに吹き飛んで、今や消し炭になっているけれど。
大人の魅力がどうとか言うわりに、こういう年下に嫉妬? してしまう振舞いはかわいい。
同じ教室に三人のセフレがいる。
しかもこの二度目の人生はまだ始まったばかりだ。
「……ふふ」
オレはこれから始まるであろう、新しい運命の出会いに胸を躍らせて微笑んだ。
将来の妊活と引き換えに春日井さんとセフレ契約を交わした翌日。
一抹の不安とともに、我が愛しのセフレたちがいる二年一組の教室の前でひとつ深呼吸をする。
「ふぅ……よし。おはよー」
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「あ、おはよう、宮城君!」
「宮君、おはようっ」
「お、おはよう!」
いつも最初に挨拶をする後ろのドア付近の子達と笑顔を交し合いながら教室に入る。
すると最前列の自分の席で今日も書き物をしていた春日井さんが、オレに気付くなり寄ってきた。
いきなりワンワンモードなったりしないよね?
「おはよう、宮城君。さっそくで悪いのだけど……」
春日井さんは手にしていたプリントをオレに見せながら、今日の移動教室で必要な資料がある事を伝えてくる。
「今日も準備でお昼休みの終わりには職員室に行かなといけないから、教室の施錠をお願いしてもいいかしら? お昼前には私が職員室からカギをもらってくるから」
「あ、うん。わかった」
朝からハレンチ学園の始業ベルが鳴ったらどうしようと思ったため一瞬、身構えてしまったが何のことはない。
いつもの春日井さん、いつもの真面目な委員長からの業務連絡だ。
「宮城君どうしたの? 私、何か変な事を言ったかしら?」
「あ、ううん。なんでもないよ」
ついジッとみてしまったせいで春日井さんが首をかしげてたずねてくる。
女の子ってスゲーな。
昨日あんなやりとりがあったのに、こんな平然とできるもんなんだな……。
あ、けど夏木さんの時は普通にキョドりまくっていたから、春日井さんが演技派なだけか。
さすが露出系。胆力が違うってことだろう。いや、そうか?
オレが色々な意味で感心しつつ、ホッと胸をなでおろしていると、春日井さんがサッと周囲を見まわし、すっとオレの耳打ちした。
「大丈夫、私はちゃんとあおずけができるわ。だからたまにでいいの。こうしてご褒美をちょうだい?」
「え?」
何の事かと思った瞬間、春日井さんが持っていたオレの足元にプリントを落としてしまう。
「あら、私ったら」
「……う」
自然な動作でかがみこむ時、立っているオレの股間に何気ない動作でほおずりしていった。
そうしてプリントを拾い上げて、オレの横を通り過ぎる時。
「いつでも私を使ってね?」
春日井さんはオレの耳元でそう囁いたあと、最前列の自分の席に座った。
やってくれるのう、クソエロ真面目系黒髪美少女委員長め。
息子さん、今の不意打ちフェザータッチでお怒り心頭である。
椅子に座り書き物を再開したその背中をイジメたいという欲求に駆られる。
それこそ今から教室から連れ出し、体育館裏のトイレに……と、いかんいかん。
クラスの中で露骨に一人の女のコを誘ったりしすぎると、すぐに噂になってしまう。
しかし――いくらなんでも息子さんが敏感すぎる。
春日井さんに誘われると、まるで自分の意識以上に性衝動に駆られる気がするのは気のせいか?
『テステス。聞こえますか? 私は今、貴方の頭に直接語り掛けています。ちなみに返事は結構です』
唐突の神様通信。
しかも返信不要? 何だろうか?
『貴方の持つ『性癖染色』、つまり、相手好みの性癖や性行為を直感で察知して無意識に忖度するスキルは、彼女の持つ『性癖染色(強火)』に打ち負けるという事ですよ。ふふふ……』
「は? なんて?」
つい言葉が口から漏れた。
周囲の子たちがオレの声に反応してこちらを見る。
オレは手を振って愛想笑いで誤魔化した。
強火? だと?
しかし、それを問いかけてもこの性悪女神が素直に答えてくれるはずもない。
あちらさんが返答無用と言ったのだから、ガン無視させてもらう。
『……まったく面白くありませんね。もう少し慌ててくれれば甲斐もあるというのに。まぁ一つご安心を。彼女に与えた力が効果を発揮する男は貴方のみです。見境なくどうこうという事はありませんよ。ただ、ただ、全て貴方の思い通りになるのが面白くない私の嫌がらせです』
畜生、ハッキリいいやがった!
けど、まぁ。この性的なスキルがオレにだけ向くならそれは安心だ。
見境なく無自覚でエロいスキルをぶちまけていたら、絶対にトラブルになる。
『ふふふ……それではまた。貴方にはもう一つのスキルがありますが、それはまたその時に。もっとも説明するほどのものでもない、最もわかりやすいものですけれどね』
あと一つ、か。
予想がつかないでもないが、それがハッキリする時は……色々と覚悟を決める時だな。
女神の声が消え、オレはホッと息をつき。
「おはよ、夏木さん」
「……ん」
いつもの姿勢。背を丸めるようにして居眠りしている夏木さんの背中に挨拶をすると、寝ぼけたような、虚ろな声が帰ってくる。
「いつも朝、早いわりに眠そうだよね」
ずっと疑問だったことをたずねてみると。
「朝、店の仕込みを手伝ってるからな。それが終わる時間が微妙なんだよ。家で二度寝できるほどの時間でもないし」
「ああ、そういう事。、で、早くから来て学校で寝てるんだ」
「……ん」
話は終わりととばかりに、モゾモゾしたあと眠りに戻る夏木さん。
けれど、お母さんの涼香さんが入院している時も早くから来ていたようだったけれど、それはなぜだろうか。
「涼香さんが入院してた時も早くから来てたよね?」
「……」
お、だんまりだ。
なんか都合の悪い事を聞いたようだ。もちろんつっこむチャンスだ。
「どうしてかな?」
「……アタシだってな」
「ん?」
ものすごく小さい声だ。オレは耳をすませる。
「隣の席に男が転入なんてしてきたら……その、チャンスかなって思うんだよ
「あー」
そう言えば、転入という設定で異世界転生してきているけど、オレの記憶はそこが抜けている。
今の所、不具合はないから特に気にしていないけど、確かに最初に夏木さんにアプローチした時から好感度は高かった。
お手てつなぐのがお駄賃、なんていっていた頃だ。ずいぶんと懐かしいような。
「初めて手をつないだ時、嬉しかった?」
「おまっ……くそ……」
からかわれている事に気付き、腕の中にうずめていた顔をバッとあげてこっちを見る夏木さん。
肌が白いので、紅潮するとすぐにほほがかわいく染まる。
「ああ、そうさ、嬉しかったよ。初めて男に触れたんだからな!」
小声で怒鳴るという器用な事をしてヤオレをにらんでくる。
オレはそれを笑顔でカウンター(イケメンに限る)する。
「ふふ、ボクも夏木さんとで会えて嬉しいよ」
「……バカ」
かわいい。
そうんなふうにかわいいセフレと朝の挨拶をしていると。
「おはよう、朝のホームルームを始めるぞ」
号令係のオレだが、ホームルームは無しだ。
冬原先生が今日のスケジュールを淡々と説明していく。
「そんな所だ」
話が終わると冬原先生は、目の前、最前列の春日井さんをチラリとみる。
春日井さんがうなずいていた。
そして視線がオレに向く。
春日井さんとどうなったのか、その確認だろうか?
けっこう、いや、かなりズサンで穴だらけだったものの、先生の協力あって無事、みんな幸せに収まったという点では感謝すべきかな。
オレは笑顔でうなずく。
すると先生は微妙な顔をしつつも、教壇から降りて教室から出ていった。
先生からすれば、オレにセフレが増えたというマイナスと、今後のセフレ内序列を確立するために味方を作ったというプラスが交錯して、あんな顔になったんだろう。
ふと、ズボンの後ろポケットのケータイが震えた。
メールは先生からだった。
『私が最初で一番なんだからな!!!!!!!』
という内容。
先生の威厳というのは悪い意味でとっくに吹き飛んで、今や消し炭になっているけれど。
大人の魅力がどうとか言うわりに、こういう年下に嫉妬? してしまう振舞いはかわいい。
同じ教室に三人のセフレがいる。
しかもこの二度目の人生はまだ始まったばかりだ。
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