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『春眠の密約(春日井crushing19)』
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『春眠の密約(春日井crushing19)』
驚く私に構わず、先生は話を続けていく。
「無論、宮城を独り占めしたい気持ちはもちろんあるが、そんな狭量さで愛想をつかれるのは私は断固として避けたい」
冬原先生は苦々しい顔をしつつ、諦めたように、それでいて仕方ない、という苦笑を浮かべている。
「アイツは私を初めての女に選んでくれた男でもある。であれば、年上として、アイツの望みをかなえてやりたい。ふふ、なんと言えばいいのかな」
……なんというか。
恋人? 婚約者? それはわからなけれど、先生の顔には嫉妬よりも……優越感。
そう、優越感が見て取れた。
私は唐突に理解した。
のろけだ。
私は今、先生にのろけられている!
「アイツは聞き分けがよさそうに見えて、なかなか頑固な面もあってな?」
しかも無自覚!
私はそれをさえぎるように。
「先生、お話の続きを」
「おっと、すまん。そこでお前だ、春日井」
「私が、何か?」
「宮城が次に狙っている女だよ。宮城は女に対して見境なく……いや、分け隔てなく接していると思うが、それでもお前は自分が優先されたとか、他より親しくなったとか、そういう自覚はないか?」
そういわれると……。
「けれど、それは私がクラス委員長だからという事だと思います」
「順序が逆だ。役職付きのクラスメートに近づくために、副委員なんてものをやり始めたんだよ。確かにお前に勧められたと言っていたが、アイツはアイツでそれを利用する腹積もりがあったわけだ。」
……つまり、私を目当てに副委員になってくれたってこと?
そんな、そんなことってあるの?
「信じられん、といった顔だろうが、そこをありえないと否定すれば、お前はこの先、一生後悔するぞ。私を信じろ。私だって似たような苦悩の果てに、人生を賭けてこの幸運と若い男を勝ち取った」
私よりよほど失うものが大きい冬原先生も、同じように信じられないと思いながらも、可能性にかけて……子供の約束までできたというのなら。
「信じます。先生のお言葉、きっとそれは正しいものですから」
「うむ、それでいい。ようやく本題に入れる」
「え?」
「別にお前に宮城の心のうちを教えてやっても私にメリットはないだろう。我々にとって大事なのはこの先の話だ。いずれ宮城はお前を口説きにかかる。今日は色々あってタイミングを逃したが、本人も仕切り直すつもりだ」
「は、はい」
ほ、本当に?
こんな事をしでかした私を?
「まず。さっき、別れ際に宮城にも言ったが、お前は色々と混乱して教室で気絶していた事になっている。そう言う事にしておけ。教室で何があったか一通りは聞いているが、その処理は私がうまくやっておく」
「ひ、一通り……?」
「お前が宮城の机でオナって、盛大に小便を漏らした事だ」
私は再び気絶しそうになる。
「あとにしろ。話を聞け」
「いたっ……はい」
額にデコピンをされて、なんとか正気にしがみつく私。
そうだ、気を失っている場合じゃない。
「保健室でお前が宮城を襲っていたことを私が見ていた、という事実はまるごとなかったことにしたい」
「は、はい」
「さきほど宮城とも口裏合わせをしたが、お前が教室で気を失っているのを見つけた宮城が私に知らせに来て、対応した私が保健室に運んだという事にする。宮城がお前が小便を漏らしたり、オナっていた事は知らないという事だ」
そんな無茶な……それに。
あ、でも。
「ですけど先生。山崎先生がいらっしゃいましたから、私達の事はご存じですよ?」
私は山崎先生にまかされた保健室の鍵を先生に見せる。
「チッ、あのジジイ。必要な時にはいないくせに」
普段の冬原先生とは思えない言葉が聞こえた。
「構わん。それはもう無視だ。別に山崎先生もわざわざ後日に確認にきたりしないだろう。いや、男子生徒がからんでいるしな……後日の聞き取りはありえない話でもないか?」
うーん、と悩む冬原先生。
しかしあまりいい案が浮かばなかったのか、少しヤケクソ気味な声で。
「もし何かの拍子に山崎先生に何か聞かれたら、濡れたお前は風邪をひき熱を出して、山崎先生が出ていった後、具合が悪くなって当日の事はよく覚えていないと言っておけ。それでも何か突っ込んで来たら私に振れ。私が何とか誤魔化す。アレだ。調子の悪い生徒を放っておいて退室した事と、私がそれをフォローしたと言えば黙り込むだろ。ある種、職務放棄だしな」
すごい事を言いだしたなと思いつつも、私にとっては助かる話だし、あえて口答えはしない。
ただ礼を述べるのみだ。
「わかりました。御手数おかけします」
「要するにここでお前は何もしなかったし、宮城もそういう体で話を合わせて口説いてくるはずだ。いいな?」
「はい」
けれど、なぜそこまでして私をかばうのだろう?
「なんでそんなことを、という顔だが、これからちゃんと説明する」
「は、はい」
お見通しだった。
驚く私に構わず、先生は話を続けていく。
「無論、宮城を独り占めしたい気持ちはもちろんあるが、そんな狭量さで愛想をつかれるのは私は断固として避けたい」
冬原先生は苦々しい顔をしつつ、諦めたように、それでいて仕方ない、という苦笑を浮かべている。
「アイツは私を初めての女に選んでくれた男でもある。であれば、年上として、アイツの望みをかなえてやりたい。ふふ、なんと言えばいいのかな」
……なんというか。
恋人? 婚約者? それはわからなけれど、先生の顔には嫉妬よりも……優越感。
そう、優越感が見て取れた。
私は唐突に理解した。
のろけだ。
私は今、先生にのろけられている!
「アイツは聞き分けがよさそうに見えて、なかなか頑固な面もあってな?」
しかも無自覚!
私はそれをさえぎるように。
「先生、お話の続きを」
「おっと、すまん。そこでお前だ、春日井」
「私が、何か?」
「宮城が次に狙っている女だよ。宮城は女に対して見境なく……いや、分け隔てなく接していると思うが、それでもお前は自分が優先されたとか、他より親しくなったとか、そういう自覚はないか?」
そういわれると……。
「けれど、それは私がクラス委員長だからという事だと思います」
「順序が逆だ。役職付きのクラスメートに近づくために、副委員なんてものをやり始めたんだよ。確かにお前に勧められたと言っていたが、アイツはアイツでそれを利用する腹積もりがあったわけだ。」
……つまり、私を目当てに副委員になってくれたってこと?
そんな、そんなことってあるの?
「信じられん、といった顔だろうが、そこをありえないと否定すれば、お前はこの先、一生後悔するぞ。私を信じろ。私だって似たような苦悩の果てに、人生を賭けてこの幸運と若い男を勝ち取った」
私よりよほど失うものが大きい冬原先生も、同じように信じられないと思いながらも、可能性にかけて……子供の約束までできたというのなら。
「信じます。先生のお言葉、きっとそれは正しいものですから」
「うむ、それでいい。ようやく本題に入れる」
「え?」
「別にお前に宮城の心のうちを教えてやっても私にメリットはないだろう。我々にとって大事なのはこの先の話だ。いずれ宮城はお前を口説きにかかる。今日は色々あってタイミングを逃したが、本人も仕切り直すつもりだ」
「は、はい」
ほ、本当に?
こんな事をしでかした私を?
「まず。さっき、別れ際に宮城にも言ったが、お前は色々と混乱して教室で気絶していた事になっている。そう言う事にしておけ。教室で何があったか一通りは聞いているが、その処理は私がうまくやっておく」
「ひ、一通り……?」
「お前が宮城の机でオナって、盛大に小便を漏らした事だ」
私は再び気絶しそうになる。
「あとにしろ。話を聞け」
「いたっ……はい」
額にデコピンをされて、なんとか正気にしがみつく私。
そうだ、気を失っている場合じゃない。
「保健室でお前が宮城を襲っていたことを私が見ていた、という事実はまるごとなかったことにしたい」
「は、はい」
「さきほど宮城とも口裏合わせをしたが、お前が教室で気を失っているのを見つけた宮城が私に知らせに来て、対応した私が保健室に運んだという事にする。宮城がお前が小便を漏らしたり、オナっていた事は知らないという事だ」
そんな無茶な……それに。
あ、でも。
「ですけど先生。山崎先生がいらっしゃいましたから、私達の事はご存じですよ?」
私は山崎先生にまかされた保健室の鍵を先生に見せる。
「チッ、あのジジイ。必要な時にはいないくせに」
普段の冬原先生とは思えない言葉が聞こえた。
「構わん。それはもう無視だ。別に山崎先生もわざわざ後日に確認にきたりしないだろう。いや、男子生徒がからんでいるしな……後日の聞き取りはありえない話でもないか?」
うーん、と悩む冬原先生。
しかしあまりいい案が浮かばなかったのか、少しヤケクソ気味な声で。
「もし何かの拍子に山崎先生に何か聞かれたら、濡れたお前は風邪をひき熱を出して、山崎先生が出ていった後、具合が悪くなって当日の事はよく覚えていないと言っておけ。それでも何か突っ込んで来たら私に振れ。私が何とか誤魔化す。アレだ。調子の悪い生徒を放っておいて退室した事と、私がそれをフォローしたと言えば黙り込むだろ。ある種、職務放棄だしな」
すごい事を言いだしたなと思いつつも、私にとっては助かる話だし、あえて口答えはしない。
ただ礼を述べるのみだ。
「わかりました。御手数おかけします」
「要するにここでお前は何もしなかったし、宮城もそういう体で話を合わせて口説いてくるはずだ。いいな?」
「はい」
けれど、なぜそこまでして私をかばうのだろう?
「なんでそんなことを、という顔だが、これからちゃんと説明する」
「は、はい」
お見通しだった。
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