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『春眠の密約(春日井crushing17)』
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『春眠の密約(春日井crushing17)』
「……ふぅ、宮城よ」
私はその声で意識を取り戻した。
かすむ視界の中、ドアを後ろ手に閉めて出て去っていく宮城君の背中があった。
「いくらなんでも、そんな誤魔化し方でどうにかなる状況ではなかろうに」
聞きなれた声。
私はベッドに寝かされていて、その横に立っている冬原先生の声だった。
思いだした。
思い出してしまった。
私、なんてことを。
正気を失って宮城君に襲い掛かろうとしたところを、冬原先生に止められたんだ。
あ、ううん、止められたわけじゃない。
私が正気を戻して、あまりの事の大きさに耐えられなくて、気絶してしまったんだ。
どうしよう。
これから私は冬原先生に警察に連れていかれるんだろうか。
当然よね。
あんなに私をかばってくれた宮城君の善意を無駄にするどころか、襲おうとしたなんて。
私はもう言い逃れのしようのない性犯罪者なんだから。
すぐにでも起き上がらなければならない。
けれど、やっぱり体が震えてしまう。
そんな中で。
「お前はどう思う、春日井? 起きているんだろう?」
私の体がビクンと跳ねた。
先生は知っていた。
私がすでに起きていて、聞き耳を立てていることを。
私はすべてをあきらめ、観念して目をあけた。
涙がこぼれて、ほほを伝う。
思うのは終わってしまった人生の未練と、宮城君への申し訳なさ。
二度と会う事はないだろうけれど、せめて、ごめんなさいと伝えたい。
私は先生にそうお願いしようとして身を起しかけた時、先生はこう言った。
「さあ、女同士の話を始めようか」
……?
女同士の話し合い?
何を話し合う事があるんだろう?
事情聴取的なそういう話だろうか。
警察に説明するために、事前に内容を把握しておく、とか?
それとも……学園という隠ぺい体質による性犯罪の隠匿?
男子生徒へのセクハラは、時折、隠されることがある。おうおうにしてそれは男子生徒の保護者などから暴露されるけれど、中にはきっと表に出なかったものもあるはずだ。
先生がそういう意図を持っている?
私は混乱しつつ、まずは先生の言う、話し合い、というものに耳をかたむけた。
どうせこれ以上、悪くなることはないのだから。
「春日井。まずハッキリさせたいのは、お前が私の敵になるか、味方になるか、だ」
「え?」
先生がどうにもよくわらない事を言い始めた。
私が身を起こしたベッドのわきに座り、その整った大人の顔でジッと私を見る。
首をかしげて疑問を顔に浮かべる私に、先生は、ああ、とうなずいた。
「ああ、まだ宮城はお前に言っていなかったな。ま、どうせ狙っているんだし、かまわんだろ」
「え、ええと、先生?」
「春日井。まずお前の不安を取り除こう。今回の件、宮城は公にはしないだろうし、奴の意思がそうである以上、私も何もしない」
え。
先生の言っていることが理解できず、つい聞き返す。
「どういう、事でしょうか?」
「宮城はお前を好ましく思っている」
「……え?」
「なんというか、だな……ええい、もう面倒くさい。手っ取り早く言おう」
途中まで言葉を選んでいたような顔だった冬原先生は、頭をガシガシとかいたあと、ジトっとした目で私を見る。
「……ふぅ、宮城よ」
私はその声で意識を取り戻した。
かすむ視界の中、ドアを後ろ手に閉めて出て去っていく宮城君の背中があった。
「いくらなんでも、そんな誤魔化し方でどうにかなる状況ではなかろうに」
聞きなれた声。
私はベッドに寝かされていて、その横に立っている冬原先生の声だった。
思いだした。
思い出してしまった。
私、なんてことを。
正気を失って宮城君に襲い掛かろうとしたところを、冬原先生に止められたんだ。
あ、ううん、止められたわけじゃない。
私が正気を戻して、あまりの事の大きさに耐えられなくて、気絶してしまったんだ。
どうしよう。
これから私は冬原先生に警察に連れていかれるんだろうか。
当然よね。
あんなに私をかばってくれた宮城君の善意を無駄にするどころか、襲おうとしたなんて。
私はもう言い逃れのしようのない性犯罪者なんだから。
すぐにでも起き上がらなければならない。
けれど、やっぱり体が震えてしまう。
そんな中で。
「お前はどう思う、春日井? 起きているんだろう?」
私の体がビクンと跳ねた。
先生は知っていた。
私がすでに起きていて、聞き耳を立てていることを。
私はすべてをあきらめ、観念して目をあけた。
涙がこぼれて、ほほを伝う。
思うのは終わってしまった人生の未練と、宮城君への申し訳なさ。
二度と会う事はないだろうけれど、せめて、ごめんなさいと伝えたい。
私は先生にそうお願いしようとして身を起しかけた時、先生はこう言った。
「さあ、女同士の話を始めようか」
……?
女同士の話し合い?
何を話し合う事があるんだろう?
事情聴取的なそういう話だろうか。
警察に説明するために、事前に内容を把握しておく、とか?
それとも……学園という隠ぺい体質による性犯罪の隠匿?
男子生徒へのセクハラは、時折、隠されることがある。おうおうにしてそれは男子生徒の保護者などから暴露されるけれど、中にはきっと表に出なかったものもあるはずだ。
先生がそういう意図を持っている?
私は混乱しつつ、まずは先生の言う、話し合い、というものに耳をかたむけた。
どうせこれ以上、悪くなることはないのだから。
「春日井。まずハッキリさせたいのは、お前が私の敵になるか、味方になるか、だ」
「え?」
先生がどうにもよくわらない事を言い始めた。
私が身を起こしたベッドのわきに座り、その整った大人の顔でジッと私を見る。
首をかしげて疑問を顔に浮かべる私に、先生は、ああ、とうなずいた。
「ああ、まだ宮城はお前に言っていなかったな。ま、どうせ狙っているんだし、かまわんだろ」
「え、ええと、先生?」
「春日井。まずお前の不安を取り除こう。今回の件、宮城は公にはしないだろうし、奴の意思がそうである以上、私も何もしない」
え。
先生の言っていることが理解できず、つい聞き返す。
「どういう、事でしょうか?」
「宮城はお前を好ましく思っている」
「……え?」
「なんというか、だな……ええい、もう面倒くさい。手っ取り早く言おう」
途中まで言葉を選んでいたような顔だった冬原先生は、頭をガシガシとかいたあと、ジトっとした目で私を見る。
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