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『春に舞い降りた私の天使(春日井crushing13)』
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『春に舞い降りた私の天使(春日井crushing13)』
「山崎先生、こんにちは」
「おや。やはり君か。えらく濡れているがどうしたね? それに後ろの子は?」
濡れた私たちを見て何事かと思った山崎先生が、イスから立ち上がった。
山崎先生は、いつもの白衣ではなくスーツ姿だった。
「実はちょっとトラブルで二人とも水をかぶってしまいまして」
「ふむ。それは見ればわかるが……なぜここに?」
首をかしげる山崎先生。
確かに何も知らない先生からしたら、濡れたから保健室に来る、という意味がわからないはすだ。
「冬原先生が着替えを用意してくれるという事で、それまで保健室で待つように言われました」
「なるほど。宮城君の方はすぐに脱いだ方がいい。春先とはいえそこまで濡れたままは良くない。ここに毛布があるから濡れたものは脱いで、これにくるまって待っているといい。仕切りのカーテンをしめて奥のベッドを使いなさい」
山崎先生が保健室の用具入れの中から毛布を取り出し、宮城君に手渡しがら奥のベッドを指さした。
宮城君はそれに従って奥のベッドに腰かけながら、仕切りのカーテンをひいた。
ごそごそと布のこすれる音と、たまに体がふれたのか仕切りのカーテンが揺れる。
「そちらの女子の方はどうだ? 髪がやや濡れているようだが?」
「わ、私は、だ、大丈夫です」
決して大丈夫ではないけれど、そう言うしかない。
「そうか、であれば彼についていてくれるかね。私は所用で今日はもう退勤なのだが、冬原先生が来るまで鍵もかけずに男子生徒を一人にしておけん。君は確か一組の委員長だったろう。普段から真面目で好感の持てる模範生だ。冬原先生が来るまで、鍵と彼をまかせても問題ないと思うが良いかな?」
「わ、わかりました」
山崎先生の信頼が痛い。
こんなことになったのも、全て私が悪いのに。
それを知らず私に宮城君をまかせるといった山崎先生に、私はうなずくしかなかった。
そうして机の中から保健室のカギを取り出し、私に向ける。
「では保健室の鍵を頼む。冬原先生に渡しておいてくれるかね」
「わかりました、お預かりします」
なんとかいつも通りの態度で鍵を受け取る事ができた。
ひとつうなずいた山崎先生は、机の上にあった書類を黒い手提げかばんに入れて保健室から出ていった。
「……」
私は無言でそれを見送る。
あとには音のない保健室に、宮城君とふたりきりとなった。
仕切りのカーテンの向こうに、服を脱いだ宮城君がいる。
いつ冬原先生が着替えを持って現れるかはわからないし、ケガなどをして保健室に生徒がやってくるかもしれない。
しかし、今なら二人きりである事に違いはない。
宮城君は怖くないのだろうか?
自分の机で自慰……いえ、おしっこを漏らしていたような女と保健室に二人でなんて。
いえ。今はそれよれも。
宮城君の真意を知りたい。
私をどうするつもりなのか。
ここまでしてくれて、今更、私を先生や警察に突き出す、そんな事はないと思う。
ないと思うけど、普通はそんなことありえないのだから。
だから私は混乱する。宮城君の考えが理解できなくて混乱する。
であれば、もうまっすぐにたずねるしかない。
今であれば。保健室に二人しかいない今なら、誰にも聞かれずに話ができる。
私は意を決して、仕切りカーテンの向こう側の宮城君へ話しかけた。
「山崎先生、こんにちは」
「おや。やはり君か。えらく濡れているがどうしたね? それに後ろの子は?」
濡れた私たちを見て何事かと思った山崎先生が、イスから立ち上がった。
山崎先生は、いつもの白衣ではなくスーツ姿だった。
「実はちょっとトラブルで二人とも水をかぶってしまいまして」
「ふむ。それは見ればわかるが……なぜここに?」
首をかしげる山崎先生。
確かに何も知らない先生からしたら、濡れたから保健室に来る、という意味がわからないはすだ。
「冬原先生が着替えを用意してくれるという事で、それまで保健室で待つように言われました」
「なるほど。宮城君の方はすぐに脱いだ方がいい。春先とはいえそこまで濡れたままは良くない。ここに毛布があるから濡れたものは脱いで、これにくるまって待っているといい。仕切りのカーテンをしめて奥のベッドを使いなさい」
山崎先生が保健室の用具入れの中から毛布を取り出し、宮城君に手渡しがら奥のベッドを指さした。
宮城君はそれに従って奥のベッドに腰かけながら、仕切りのカーテンをひいた。
ごそごそと布のこすれる音と、たまに体がふれたのか仕切りのカーテンが揺れる。
「そちらの女子の方はどうだ? 髪がやや濡れているようだが?」
「わ、私は、だ、大丈夫です」
決して大丈夫ではないけれど、そう言うしかない。
「そうか、であれば彼についていてくれるかね。私は所用で今日はもう退勤なのだが、冬原先生が来るまで鍵もかけずに男子生徒を一人にしておけん。君は確か一組の委員長だったろう。普段から真面目で好感の持てる模範生だ。冬原先生が来るまで、鍵と彼をまかせても問題ないと思うが良いかな?」
「わ、わかりました」
山崎先生の信頼が痛い。
こんなことになったのも、全て私が悪いのに。
それを知らず私に宮城君をまかせるといった山崎先生に、私はうなずくしかなかった。
そうして机の中から保健室のカギを取り出し、私に向ける。
「では保健室の鍵を頼む。冬原先生に渡しておいてくれるかね」
「わかりました、お預かりします」
なんとかいつも通りの態度で鍵を受け取る事ができた。
ひとつうなずいた山崎先生は、机の上にあった書類を黒い手提げかばんに入れて保健室から出ていった。
「……」
私は無言でそれを見送る。
あとには音のない保健室に、宮城君とふたりきりとなった。
仕切りのカーテンの向こうに、服を脱いだ宮城君がいる。
いつ冬原先生が着替えを持って現れるかはわからないし、ケガなどをして保健室に生徒がやってくるかもしれない。
しかし、今なら二人きりである事に違いはない。
宮城君は怖くないのだろうか?
自分の机で自慰……いえ、おしっこを漏らしていたような女と保健室に二人でなんて。
いえ。今はそれよれも。
宮城君の真意を知りたい。
私をどうするつもりなのか。
ここまでしてくれて、今更、私を先生や警察に突き出す、そんな事はないと思う。
ないと思うけど、普通はそんなことありえないのだから。
だから私は混乱する。宮城君の考えが理解できなくて混乱する。
であれば、もうまっすぐにたずねるしかない。
今であれば。保健室に二人しかいない今なら、誰にも聞かれずに話ができる。
私は意を決して、仕切りカーテンの向こう側の宮城君へ話しかけた。
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