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『春に舞い降りた私の天使(春日井crushing12)』
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『春に舞い降りた私の天使(春日井crushing12)』
「ほう?」
一方で冬原先生は納得していないようだった。
「で? どういう……ふむ……」
先生は何かを言いかけたものの、宮城君のうしろに隠れるようにしていた私を見て黙り込んだ。
疑われている、きっと何があったのかと追及される。
そう思った、しかし。
「ああ、またあのトイレか。たまたま居合わせた春日井が手伝ったというあたりだろう、お前も災難だったな。宮城。あそこの男子トレイは私が業者さんに連絡を入れておくから今度から別のトイレを使え」
「はい。すみません、せっかくお借りした服を」
まるで周囲に聞こえるような大きな声で先生がなにやら納得したように、宮城君に確認していた。
そして小声で何かを離した後。
「春日井」
「は、はい!」
「お前は制服が濡れてジャージに着替えたのか? ああ、だが髪と肩がまだ少し濡れているな。下着は大丈夫か?」
「あ、はい、ええと……少し、その」
実は水以外で濡れています、なんてとても言えない。
「私のものでよければ用意してやる。安心しろ、新品だ」
先生の下着を融通してくれるようだ。すごくありがたい。
あ、お金。使った下着を返すなんてさすがにできない。
「ええと、はい、あの、ありがとうございます。お金は……」
「バカを言え、生徒から金がとれるか。別に高価なものじゃない。こういう時の為にストックしておいた三枚セットでいくらのセール品だ」
そうして先生はご自分のロッカーらしき所からスポーツバックを取り出し、そこから持ってきたタオルを私と宮城君の頭に一枚ずつかけてくれた。
「保健室で待ってろ、すぐに持って行ってやる。この時間なら山崎先生がみえるはずだ。今の時間の授業は……ああ、視聴覚室に移動だったか。そっちも私が言っておいてやる」
「はい、ありがとうございます」
「はーい、よろしくお願いしまーす」
私は宮城君と一緒に職員室を出た。
横並びに保健室に向かう最中、宮城君が微笑みながらこう言った。
「これで教室に染みが残っていても、着替えた時に濡れたって言えば誤魔化せるしなんとかなったね」
「……」
もう私は声がでなかった。
ただ、ただ、立ち尽くして。
「どうしたの、春日井さん?」
「……う、ひっく……うぇ……」
私を心配そうに振り返る宮城君に謝り続けた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ひっく、ごめんなさい」
こんなことになるなんて。
こんなことまでしてくれるなんて。
「うっ、ひぐッ……ごめんなさい、ごめんなさい……」
ただ泣くしかなくなった私。
すがるものもなく、自分のスカートをにぎりしめて白くなっていた指先に、温かいものがふれた。
宮城君の指、宮城君の手、宮城君の温かさ。それが私の手に重なった。
「さ、こんなところにいつまでも立っていると不審がられるよ。保健室で冬原先生が来るのを待ってよう?」
「う、うん。ごめんね、宮城君、ごめんね……」
涙で前が見えない私。
宮城君が私の手をひいてくれる。
「さ、もう泣き止んで。せっかくうまく誤魔化せたのに山崎先生何かあったかと思われちゃうよ?」
宮城君がハンカチを取り出して私濡れたほほをぬぐってくれた。
私なんかの涙で、せっかくのハンカチが汚れてしまう。
少しでも早く泣き止まないと、そう思うほどに涙が止まらない。
なんとか私が落ち着いた頃合いを見て、宮城君が保健室の扉をノックした。
すると山崎先生の『どうぞ』という、声が返ってきた。
保健室の扉を開けて中に入る宮城君の背中に連れられて、私も中に入る。
「ほう?」
一方で冬原先生は納得していないようだった。
「で? どういう……ふむ……」
先生は何かを言いかけたものの、宮城君のうしろに隠れるようにしていた私を見て黙り込んだ。
疑われている、きっと何があったのかと追及される。
そう思った、しかし。
「ああ、またあのトイレか。たまたま居合わせた春日井が手伝ったというあたりだろう、お前も災難だったな。宮城。あそこの男子トレイは私が業者さんに連絡を入れておくから今度から別のトイレを使え」
「はい。すみません、せっかくお借りした服を」
まるで周囲に聞こえるような大きな声で先生がなにやら納得したように、宮城君に確認していた。
そして小声で何かを離した後。
「春日井」
「は、はい!」
「お前は制服が濡れてジャージに着替えたのか? ああ、だが髪と肩がまだ少し濡れているな。下着は大丈夫か?」
「あ、はい、ええと……少し、その」
実は水以外で濡れています、なんてとても言えない。
「私のものでよければ用意してやる。安心しろ、新品だ」
先生の下着を融通してくれるようだ。すごくありがたい。
あ、お金。使った下着を返すなんてさすがにできない。
「ええと、はい、あの、ありがとうございます。お金は……」
「バカを言え、生徒から金がとれるか。別に高価なものじゃない。こういう時の為にストックしておいた三枚セットでいくらのセール品だ」
そうして先生はご自分のロッカーらしき所からスポーツバックを取り出し、そこから持ってきたタオルを私と宮城君の頭に一枚ずつかけてくれた。
「保健室で待ってろ、すぐに持って行ってやる。この時間なら山崎先生がみえるはずだ。今の時間の授業は……ああ、視聴覚室に移動だったか。そっちも私が言っておいてやる」
「はい、ありがとうございます」
「はーい、よろしくお願いしまーす」
私は宮城君と一緒に職員室を出た。
横並びに保健室に向かう最中、宮城君が微笑みながらこう言った。
「これで教室に染みが残っていても、着替えた時に濡れたって言えば誤魔化せるしなんとかなったね」
「……」
もう私は声がでなかった。
ただ、ただ、立ち尽くして。
「どうしたの、春日井さん?」
「……う、ひっく……うぇ……」
私を心配そうに振り返る宮城君に謝り続けた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ひっく、ごめんなさい」
こんなことになるなんて。
こんなことまでしてくれるなんて。
「うっ、ひぐッ……ごめんなさい、ごめんなさい……」
ただ泣くしかなくなった私。
すがるものもなく、自分のスカートをにぎりしめて白くなっていた指先に、温かいものがふれた。
宮城君の指、宮城君の手、宮城君の温かさ。それが私の手に重なった。
「さ、こんなところにいつまでも立っていると不審がられるよ。保健室で冬原先生が来るのを待ってよう?」
「う、うん。ごめんね、宮城君、ごめんね……」
涙で前が見えない私。
宮城君が私の手をひいてくれる。
「さ、もう泣き止んで。せっかくうまく誤魔化せたのに山崎先生何かあったかと思われちゃうよ?」
宮城君がハンカチを取り出して私濡れたほほをぬぐってくれた。
私なんかの涙で、せっかくのハンカチが汚れてしまう。
少しでも早く泣き止まないと、そう思うほどに涙が止まらない。
なんとか私が落ち着いた頃合いを見て、宮城君が保健室の扉をノックした。
すると山崎先生の『どうぞ』という、声が返ってきた。
保健室の扉を開けて中に入る宮城君の背中に連れられて、私も中に入る。
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