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『春に舞い降りた私の天使(春日井crushing04)』
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『春に舞い降りた私の天使(春日井crushing04)』
私は教室に入ると自分の席につく。
そしてクラスを見渡して彼がいない事を知るとわずかの落胆、そしてすぐにわきあがる期待を胸に予習を始める。
すると、しばらくして。
「あ、おはよう、春日井さん」
「おはよう、宮城君」
「今日は何か仕事ある?」
「どうかしら、今の所は特にないと思うわ」
教室に入ってきた宮城君が近くのクラスメートに挨拶をしつつ、私にも笑顔で挨拶を投げかけてくれる。
宮城君は私の事をクラス委員として頼ってくれることもあれば、こうして朝から副委員として仕事の確認をしてくれつつ、挨拶や会話を交わしてくれる。
一度でも男に微笑まれたら、女はそれを何年も思い出にする。
そんな笑顔を毎日向けられるのだから、もう私だけじゃない、クラスメートの皆が夢中を超えて、陶然としている。
ただそれを必死に隠して、宮城君の前では普通を装って過ごしている。
平和なようでいて、誰か一人が暴走すれば崩れ落ちる、そんな砂上の楼閣が、今の私たちのクラスの実情だ。
しかし、この砂山。互いの監視体制が非常に強固で崩れる気配はない。
確かに出し抜けばさらなる幸せを独り占めできるかもしれない。
しかし、その『さらなる上』を求めて、今ある幸せを失うリスクがとてつもなく怖いのだから。
クラスメートからつるし上げられるだけならともかく、もし宮城君に嫌われたらと思うと、誰も暴走すらできない。
クラスの男子が優しくしてくれるなんていう砂上の楼閣。
されどその実、土台は鉄筋コンクリート。それが私のクラスの真の実情だ。
私も土台の一人として、また、クラス委員として皆より少し楼閣に近い者という優越感を感じながら、さらには罪の意識をも背負いながら、幸せな日々を過ごしていた。
――あの日まで。
***
その日、私は移動教室の為の準備をしていた。
お昼休みが始まってすぐに視聴覚室の鍵を職員室に取りに行って開錠。
そのまま教室に戻ってお弁当を書き込むように食べ終えた後、視聴覚室の鍵を宮城君に渡す。
皆が移動した後の戸締りをお願いしたあと、ふたたび私は視聴覚室へ。
視聴覚室の機材は古くなっており、今年度に新調したばかりという事もあって、高齢の先生だとまだ扱いを覚えていない事が多い。
新学期が始まってから、よくこうした事前準備を頼まれる。
正直、大変だが仕方ない。
内心と将来の為、とは思いつつも、こんな雑用でさほど点数が上がるわけもない。
ただ、まぁ、先生方の印象は悪くないだろうし、何か不意のトラブルなどにを起こしたり巻き込まれたりした時に、普段は優等生とか真面目というイメージがあれば、フォローも期待できる。
それでもワリに合わないかな、という労働量だが、それを今さら言っても仕方ない。
私は事前に渡されていたSDカードを機材に入れて、頭だしをしておく。
あとは一時停止を解除するだけで、映像再生が再開できるようにしたところまで面倒を見て、一息ついた。
そして。
「あ」
肝心な自分の授業の用意を忘れてしまった。
教科書もノートも机の中だ。
我ながら、なんとも間抜け。
すぐに教室に戻ろうと思ったものの。
「いんちょー、おつかれー」
「おつおつー」
と、クラスメートが私をいたわりながら視聴覚室に入ってきた。
私は教室に入ると自分の席につく。
そしてクラスを見渡して彼がいない事を知るとわずかの落胆、そしてすぐにわきあがる期待を胸に予習を始める。
すると、しばらくして。
「あ、おはよう、春日井さん」
「おはよう、宮城君」
「今日は何か仕事ある?」
「どうかしら、今の所は特にないと思うわ」
教室に入ってきた宮城君が近くのクラスメートに挨拶をしつつ、私にも笑顔で挨拶を投げかけてくれる。
宮城君は私の事をクラス委員として頼ってくれることもあれば、こうして朝から副委員として仕事の確認をしてくれつつ、挨拶や会話を交わしてくれる。
一度でも男に微笑まれたら、女はそれを何年も思い出にする。
そんな笑顔を毎日向けられるのだから、もう私だけじゃない、クラスメートの皆が夢中を超えて、陶然としている。
ただそれを必死に隠して、宮城君の前では普通を装って過ごしている。
平和なようでいて、誰か一人が暴走すれば崩れ落ちる、そんな砂上の楼閣が、今の私たちのクラスの実情だ。
しかし、この砂山。互いの監視体制が非常に強固で崩れる気配はない。
確かに出し抜けばさらなる幸せを独り占めできるかもしれない。
しかし、その『さらなる上』を求めて、今ある幸せを失うリスクがとてつもなく怖いのだから。
クラスメートからつるし上げられるだけならともかく、もし宮城君に嫌われたらと思うと、誰も暴走すらできない。
クラスの男子が優しくしてくれるなんていう砂上の楼閣。
されどその実、土台は鉄筋コンクリート。それが私のクラスの真の実情だ。
私も土台の一人として、また、クラス委員として皆より少し楼閣に近い者という優越感を感じながら、さらには罪の意識をも背負いながら、幸せな日々を過ごしていた。
――あの日まで。
***
その日、私は移動教室の為の準備をしていた。
お昼休みが始まってすぐに視聴覚室の鍵を職員室に取りに行って開錠。
そのまま教室に戻ってお弁当を書き込むように食べ終えた後、視聴覚室の鍵を宮城君に渡す。
皆が移動した後の戸締りをお願いしたあと、ふたたび私は視聴覚室へ。
視聴覚室の機材は古くなっており、今年度に新調したばかりという事もあって、高齢の先生だとまだ扱いを覚えていない事が多い。
新学期が始まってから、よくこうした事前準備を頼まれる。
正直、大変だが仕方ない。
内心と将来の為、とは思いつつも、こんな雑用でさほど点数が上がるわけもない。
ただ、まぁ、先生方の印象は悪くないだろうし、何か不意のトラブルなどにを起こしたり巻き込まれたりした時に、普段は優等生とか真面目というイメージがあれば、フォローも期待できる。
それでもワリに合わないかな、という労働量だが、それを今さら言っても仕方ない。
私は事前に渡されていたSDカードを機材に入れて、頭だしをしておく。
あとは一時停止を解除するだけで、映像再生が再開できるようにしたところまで面倒を見て、一息ついた。
そして。
「あ」
肝心な自分の授業の用意を忘れてしまった。
教科書もノートも机の中だ。
我ながら、なんとも間抜け。
すぐに教室に戻ろうと思ったものの。
「いんちょー、おつかれー」
「おつおつー」
と、クラスメートが私をいたわりながら視聴覚室に入ってきた。
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