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『春に舞い降りた私の天使(春日井crushing02)』
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『春に舞い降りた私の天使(春日井crushing02)』
転入後、彼はすぐにクラス馴染んでいた。
いや、馴染んだ、というのはおかしい。
ゴールデウィークを目前と引き換えた四月末。
転入してから一か月と立っていないのに、もはやいなくてはならない中心人物だった。
普通、男子生徒というものは女子生徒との接触を忌避する。
だというのに、宮城君は挨拶をすれば笑顔で返してくれるし、あろうことか写真すら拒まないのだ。
隣の席が青葉ということもあり、トラブルにならないかとも思ったが、盗み見ている限り、仲良くやっているようだった。
宮城君が誰にでも優しい、というのはすでにわかっていたことだが、青葉に優しくしている所を見ると……どうにも胸に針が刺さったようでチクチクとする。
また青葉だけが、とか。
私はこんなに勉強をがんばっているのに、とか。
そういう自分では制御できない、暗い感情が湧き上がってくるのを感じて、自己嫌悪におちいっていく。
私はそんな現実から目を背けるがごとく、青葉にも、そして宮城君とも、なるべく距離を取るようにしていた。
そうして私は自分の世界にこもる。
いつも帰りの遅い母。
学校から帰って、しばらくは私だけの時間。
「うん……はっ……」
高層マンションの一室の自室で、一人、自分を慰める。
ベッドにもぐりこみ、脇においた雑誌には……女が男性に服従するようなポーズをとった写真ばかり集められている。
それも野外で露出の激しい女を相手に、上から覆いかぶさる男性。
現実には絶対にありえないシチュエーションだからこそ興奮してしまう。
「ふうっ、ふうっ……」
私は自分の性癖に問題がある事を自覚している。
だが、あくまで自分の世界の中、妄想の中で楽しんでいる分には問題ないとも思っている。
他人に、間違っても男性に迷惑をかけるようなことさえしなければ、多かれ少なかれ、誰だって人に言えない趣味の一つ二つはあるものだ。
現にこういった趣味嗜好の本が出ている以上、まだじぶんの趣味はマイナーリーグの中では高めのティアかもしれない。
どのみち、性癖なんてものは他人に言うものでもない。
ただ、それでも思う。
中学の頃、河原で拾った雑誌がこの本ではなかったら、自分の性癖もこうはならなかったのだろうと。
どこかの大人が何気なく捨てたものだろうが、性に未熟だった私にとって鮮烈で衝撃的だった。
確実にあの時、自分はねじれた。
――のだが、別に悲観するものでもない。
新しい扉を開いた、なとど大げさに言うものでもない。
落ちていたエロ本で性が開花するのはわりとメジャーな話だし、そもそも私が河原で本を見つけたのも、そういった拾得物を期待してのものだったのだから。
用もなく中学生がそんな場所をウロウロするはずもない。
河原、河川敷、高架下、アパートやマンションのごみ捨て場など、お宝発掘ポイントは多岐に渡る。
今でこそスマホを持たされているが、中学生で持っていた子は少ないし、セーフティによって閲覧できないサイトも多くある。
デジタル技術がどれほど進歩しようとも、扱いに制限が課せられるのであれば、最後はやはり先人からもたらされるアナログな秘伝書となるのは自然だった。
雨で濡れて乾いた後のガビガビになったページを、期待で震える指で敗れないように慎重にめくっていた過去が懐かしい。
「んっ……んっんっ……」
私は想像する。
写真のような露出の激しい恰好をして、男性に襲われるようなワンシーンを自分に置き換えて妄想する。
露出の多い女というのは、暑苦しいとか、汗臭い、不衛生、そういった悪いイメージがある。
担任の冬原先生などがいい例だ。
本人はスタイルもよくて美人なのに、ジャージにティーシャツやスポブラという体育教師然とした恰好が全てを台無しにしている。
真面目で責任感のある先生だと思うし、ああいう大人になりたいとは思うが、ああいう人にはなりたくないという意識もある。
それでいて、自分は露出に憧れていたり、逆レイプ……というほどではないものの、そういった趣味嗜好があるのだから、人の事をどうこう言える立場でもない事も自覚している。
それでもずっと妄想で、頭の中で楽しむだけで満足していた。
時折、こうしてエロい雑誌をこっそり買ってきて楽しむこともあるが、それでもまだ健全な高校生の範疇だった。
だが。
「宮城君、宮城君……」
彼の存在が自分を変えた。
転入後、彼はすぐにクラス馴染んでいた。
いや、馴染んだ、というのはおかしい。
ゴールデウィークを目前と引き換えた四月末。
転入してから一か月と立っていないのに、もはやいなくてはならない中心人物だった。
普通、男子生徒というものは女子生徒との接触を忌避する。
だというのに、宮城君は挨拶をすれば笑顔で返してくれるし、あろうことか写真すら拒まないのだ。
隣の席が青葉ということもあり、トラブルにならないかとも思ったが、盗み見ている限り、仲良くやっているようだった。
宮城君が誰にでも優しい、というのはすでにわかっていたことだが、青葉に優しくしている所を見ると……どうにも胸に針が刺さったようでチクチクとする。
また青葉だけが、とか。
私はこんなに勉強をがんばっているのに、とか。
そういう自分では制御できない、暗い感情が湧き上がってくるのを感じて、自己嫌悪におちいっていく。
私はそんな現実から目を背けるがごとく、青葉にも、そして宮城君とも、なるべく距離を取るようにしていた。
そうして私は自分の世界にこもる。
いつも帰りの遅い母。
学校から帰って、しばらくは私だけの時間。
「うん……はっ……」
高層マンションの一室の自室で、一人、自分を慰める。
ベッドにもぐりこみ、脇においた雑誌には……女が男性に服従するようなポーズをとった写真ばかり集められている。
それも野外で露出の激しい女を相手に、上から覆いかぶさる男性。
現実には絶対にありえないシチュエーションだからこそ興奮してしまう。
「ふうっ、ふうっ……」
私は自分の性癖に問題がある事を自覚している。
だが、あくまで自分の世界の中、妄想の中で楽しんでいる分には問題ないとも思っている。
他人に、間違っても男性に迷惑をかけるようなことさえしなければ、多かれ少なかれ、誰だって人に言えない趣味の一つ二つはあるものだ。
現にこういった趣味嗜好の本が出ている以上、まだじぶんの趣味はマイナーリーグの中では高めのティアかもしれない。
どのみち、性癖なんてものは他人に言うものでもない。
ただ、それでも思う。
中学の頃、河原で拾った雑誌がこの本ではなかったら、自分の性癖もこうはならなかったのだろうと。
どこかの大人が何気なく捨てたものだろうが、性に未熟だった私にとって鮮烈で衝撃的だった。
確実にあの時、自分はねじれた。
――のだが、別に悲観するものでもない。
新しい扉を開いた、なとど大げさに言うものでもない。
落ちていたエロ本で性が開花するのはわりとメジャーな話だし、そもそも私が河原で本を見つけたのも、そういった拾得物を期待してのものだったのだから。
用もなく中学生がそんな場所をウロウロするはずもない。
河原、河川敷、高架下、アパートやマンションのごみ捨て場など、お宝発掘ポイントは多岐に渡る。
今でこそスマホを持たされているが、中学生で持っていた子は少ないし、セーフティによって閲覧できないサイトも多くある。
デジタル技術がどれほど進歩しようとも、扱いに制限が課せられるのであれば、最後はやはり先人からもたらされるアナログな秘伝書となるのは自然だった。
雨で濡れて乾いた後のガビガビになったページを、期待で震える指で敗れないように慎重にめくっていた過去が懐かしい。
「んっ……んっんっ……」
私は想像する。
写真のような露出の激しい恰好をして、男性に襲われるようなワンシーンを自分に置き換えて妄想する。
露出の多い女というのは、暑苦しいとか、汗臭い、不衛生、そういった悪いイメージがある。
担任の冬原先生などがいい例だ。
本人はスタイルもよくて美人なのに、ジャージにティーシャツやスポブラという体育教師然とした恰好が全てを台無しにしている。
真面目で責任感のある先生だと思うし、ああいう大人になりたいとは思うが、ああいう人にはなりたくないという意識もある。
それでいて、自分は露出に憧れていたり、逆レイプ……というほどではないものの、そういった趣味嗜好があるのだから、人の事をどうこう言える立場でもない事も自覚している。
それでもずっと妄想で、頭の中で楽しむだけで満足していた。
時折、こうしてエロい雑誌をこっそり買ってきて楽しむこともあるが、それでもまだ健全な高校生の範疇だった。
だが。
「宮城君、宮城君……」
彼の存在が自分を変えた。
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