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『春日井、しつけられる』
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『春日井、しつけられる』
「もちろんジョークだよ」
そう付け加えるよりも早く。
春日井さんはオレに抱き着いてきた。
「私! 私、うれしい! こんなおかしい私に合わせてくれる人が本当に現れるなんて……ッ」
抱き着かれて顔は見えないが、その声は涙に濡れていた。
どれほどの覚悟でオレに告白したのだろうかと、あらためて思う。
少なくとも自分の性的な欲求が常識から逸脱していると自覚した上で、さらに言えばこの男女関係の世界で告白したのだ。
そうして全てをさらけ出してなお、オレが欲しいと言ってくれたこの小さな肩はずっと震えている。
首輪だのなんだのと、さっきはたしかに冗談のつもりで言ったが……別に本気にしてもらってもかまわないのではないか?
オレを好きだと言ってくれる人の願いにこたえる。
それは素敵な事で。
そう。
具体的には、TPOをわきまえた上で法に触れない健全でエッチなお付き合いであれば、少々倒錯した趣味であっても、むろしだからこそオレだって興味がないわけではない。
両者合意の上で、クラスメートの優等生をペットにできる。
その幸運を今一度かみしめ、それに必要なだけの覚悟を決める時だ。
オレがうまく手綱を握って、いやリアル手綱じゃないぞ? 春日井さんが暴走しない程度に、お散歩をしたりすれば両者にとってそれは幸福な世界のはずである。
そう、それゆえに調教はすでに始まっているのだ。
常にご主人様の言う事をきくよう、躾は少しでも早く始めなければいけない。
――後々思えば。
この瞬間から、主導権はオレから離れて春日井さんに移っていたのだろう。
ペットにして。
お利口な犬になる。
何でもするわ。
クラスメートの真面目な委員長にそう連呼された、経験の浅い新米ビッチのオレが精神をゆさぶられないはずもない。
この時のオレは、春日井さんという従順な子犬の手綱を握っていると思っていたものの、実際には大型犬に振り回されている情けない飼い主でしかなかったのだ。
だがこの時のオレはそんな事をつゆほども思っていない。
むしろ春日井さんの性欲に負けじと、相手好みの性癖や性行為を直感で察知して無意識に忖度する『性癖染色』に対抗し、抑えつけているつもりだった。
実に滑稽な話であるが、詳しい事は後々に語る事とする。
ともかく、この時はそんな道化になっていたとは思っていないオレは抱き着いてきた春日井さんの震える小さな背中に手をまわして抱き返し、彼女の耳元に唇を寄せると囁くように名を呼んだ。
「春日井さん」
「は、はい」
ホットパンツの中でいたずらしていた指は、抱き着かれた時に体勢がかわったはずみで外れていて虚空をさ迷っていた。
丁度いいとばかりに、寂しくなった指先を春日井さんの耳にはわせる。
「あっ」
オレの指が今度は下着ではなくその心に触れていく。
「ねえ。春日井さんは今すぐボクが欲しい?」
「え?」
赤い夕日は間もなく沈むだろう。
子供たちの声もいつの間にか聞こえなくなっていた。
きっと彼女は。
「え、ええ! わ、私は、今すぐにでも……ッ」
そう言うと思っていた。
オレは触れていた耳から指をはなし唇を寄せて。
フッと息をふかける。
「ひやっ!」
驚いた春日井さんの体が跳ねる。
「ふふ、かわいいね、ボクのセフレの春日井さんはとってもかわいいね」
オレは耳元でそうささやきながら、さらに体を寄せてその耳を甘噛みをする。
「ひうっ!」
やわらかい耳たぶを前歯で軽くはさみ、舌先でつんつんとつつく。
「あっ、あっ、あっ、み、宮城君!」
オレを抱きしめる春日井さんの腕の力が強くなる。
しかしオレはそんな春日井さんが絡めていた手をとり、強引に体を離して立ちあがる。
「え……?」
「でもね、春日井さん。ボクはね? 時と場所を選ばず、やたらと発情する犬っていうのはあまり好きじゃないんだ」
オレの言葉に呆然とした後、すぐに内容を理解した春日井さんは青ざめた。
「もちろんジョークだよ」
そう付け加えるよりも早く。
春日井さんはオレに抱き着いてきた。
「私! 私、うれしい! こんなおかしい私に合わせてくれる人が本当に現れるなんて……ッ」
抱き着かれて顔は見えないが、その声は涙に濡れていた。
どれほどの覚悟でオレに告白したのだろうかと、あらためて思う。
少なくとも自分の性的な欲求が常識から逸脱していると自覚した上で、さらに言えばこの男女関係の世界で告白したのだ。
そうして全てをさらけ出してなお、オレが欲しいと言ってくれたこの小さな肩はずっと震えている。
首輪だのなんだのと、さっきはたしかに冗談のつもりで言ったが……別に本気にしてもらってもかまわないのではないか?
オレを好きだと言ってくれる人の願いにこたえる。
それは素敵な事で。
そう。
具体的には、TPOをわきまえた上で法に触れない健全でエッチなお付き合いであれば、少々倒錯した趣味であっても、むろしだからこそオレだって興味がないわけではない。
両者合意の上で、クラスメートの優等生をペットにできる。
その幸運を今一度かみしめ、それに必要なだけの覚悟を決める時だ。
オレがうまく手綱を握って、いやリアル手綱じゃないぞ? 春日井さんが暴走しない程度に、お散歩をしたりすれば両者にとってそれは幸福な世界のはずである。
そう、それゆえに調教はすでに始まっているのだ。
常にご主人様の言う事をきくよう、躾は少しでも早く始めなければいけない。
――後々思えば。
この瞬間から、主導権はオレから離れて春日井さんに移っていたのだろう。
ペットにして。
お利口な犬になる。
何でもするわ。
クラスメートの真面目な委員長にそう連呼された、経験の浅い新米ビッチのオレが精神をゆさぶられないはずもない。
この時のオレは、春日井さんという従順な子犬の手綱を握っていると思っていたものの、実際には大型犬に振り回されている情けない飼い主でしかなかったのだ。
だがこの時のオレはそんな事をつゆほども思っていない。
むしろ春日井さんの性欲に負けじと、相手好みの性癖や性行為を直感で察知して無意識に忖度する『性癖染色』に対抗し、抑えつけているつもりだった。
実に滑稽な話であるが、詳しい事は後々に語る事とする。
ともかく、この時はそんな道化になっていたとは思っていないオレは抱き着いてきた春日井さんの震える小さな背中に手をまわして抱き返し、彼女の耳元に唇を寄せると囁くように名を呼んだ。
「春日井さん」
「は、はい」
ホットパンツの中でいたずらしていた指は、抱き着かれた時に体勢がかわったはずみで外れていて虚空をさ迷っていた。
丁度いいとばかりに、寂しくなった指先を春日井さんの耳にはわせる。
「あっ」
オレの指が今度は下着ではなくその心に触れていく。
「ねえ。春日井さんは今すぐボクが欲しい?」
「え?」
赤い夕日は間もなく沈むだろう。
子供たちの声もいつの間にか聞こえなくなっていた。
きっと彼女は。
「え、ええ! わ、私は、今すぐにでも……ッ」
そう言うと思っていた。
オレは触れていた耳から指をはなし唇を寄せて。
フッと息をふかける。
「ひやっ!」
驚いた春日井さんの体が跳ねる。
「ふふ、かわいいね、ボクのセフレの春日井さんはとってもかわいいね」
オレは耳元でそうささやきながら、さらに体を寄せてその耳を甘噛みをする。
「ひうっ!」
やわらかい耳たぶを前歯で軽くはさみ、舌先でつんつんとつつく。
「あっ、あっ、あっ、み、宮城君!」
オレを抱きしめる春日井さんの腕の力が強くなる。
しかしオレはそんな春日井さんが絡めていた手をとり、強引に体を離して立ちあがる。
「え……?」
「でもね、春日井さん。ボクはね? 時と場所を選ばず、やたらと発情する犬っていうのはあまり好きじゃないんだ」
オレの言葉に呆然とした後、すぐに内容を理解した春日井さんは青ざめた。
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