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『春日井と職員室にて』
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『春日井と職員室にて』
オレは春日井さんを連れ立って職員室に急ぐ。
つい先日濡れた先生と一緒だった時、まさかまたこうして春日井さんと同じ状況になるとか予想もしなかった。
当たり前か。こんなもの予想できるのは予知能力者くらいなものだろう。
予知能力かー、いいよねぇ。
どうして女神様はそういったカッコいい系のスキルをさずけてくださらなかったのかと思うが、多分、オレみたいなロクでもない人間がそういうチート系のスキルを得ると欲望のまま闇堕ちしそうなので、分相応なのだろう。
いや、生き返らせてもらった上に、色々なスキルも頂けて十分感謝はしているんですけどね、前世の女神様には。
ただちょっと、こちらの世界の女神様と反りがあわないだけで。
そうこうしているうちに職員室に到着。
すぐに扉をノックし、出入り口で先生を呼ぶ。
「冬原先生、いらっしゃいますかー」
本来は授業中の時間の為、こうして職員室に訪問してくる生徒はいない。
その為、えらく目立った上にぬれねずみのこの恰好ともなれば、先生たちの注目もひとしおだ。
「宮城? どうし……いや、本当にどうした!?」
オレの呼びかけにこちらを向いた先生が驚いた顔でやってくる。
良かった。冬原先生はこの時間、授業がなかったらしい。
もし不在となると他の先生に対しての事情説明やらなんやらで面倒な事になる所だった。
しかし冬原先生がいるなら話が早い。
「実はまたトイレの蛇口が故障しまして」
今朝オレが濡れた姿を見ている先生の姿も何人か受けられる。
またか、という顔をしていたが疑われてはいないようだった。
「ほう?」
そう、ただ一人。真実を知り、嘘つきの共犯者でもある冬原先生以外は。
「で? どういう……ふむ……」
先生は何かを言いかけたものの、オレの後ろにジャージ姿の春日井さんがいる事に気付き黙り込む。
何だかよくわからないが、オレがこうして嘘をつく以上は協力を求めていると察してくれたのだろう。
「せっかく替えを用意してやったというのに仕方のない奴だな。春日井も委員長として手伝ったのか? 災難だったな。宮城。あそこの男子トレイは私が業者さんに連絡を入れておくから今度から別のトイレを使え」
「はい。すみません、せっかくお借りした服を」
などと周囲に聞こえるような大きめの声で先生と話を合わせる。
そうして春日井さんに聞こえないように、先生がオレの耳元でささやく。
「で? どういう事だ?」
「色々とありすぎてここではちょっと。あと、この服ってどうしたんですか?」
「それこそ私も色々あるんだよ。まだ別の替えが車にあるからとってきてやる。下着も同じく用意があるから待ってろ」
「すみません、ありがとうございます」
お互い色々とここで語れない事があるらしいが、着替えを用意してもらえるなら助かる事には違いない。
「春日井」
「は、はい!」
「お前は制服が濡れてジャージに着替えたのか? ああ、だが髪と肩がまだ少し濡れているな。下着は大丈夫か?」
「あ、はい、ええと……少し、その」
朝の先生と同じく自分のエッチなおつゆで濡れてしまって冷たいんです、とは教えられないのでオレは黙って成り行きを見守る。
「私のものでよければ用意してやる。安心しろ、新品だ」
「ええと、はい、あの、ありがとうございます。お金は……」
「バカを言え、生徒から金がとれるか。別に高価なものじゃない。こういう時の為にストックしておいた三枚セットでいくらのセール品だ」
そうして先生は再びスポーツバックからタオルを二枚取り出して、オレと春日井さんの頭に一枚ずつかけた。
何枚入ってるんだろうね、あのバックに。
「保健室で待ってろ、すぐに持って行ってやる。この時間なら山崎先生がみえるはずだ。今の時間の授業は……ああ、視聴覚室に移動だったか。そっちも私が言っておいてやる」
「はい、ありがとうございます」
「はーい、よろしくお願いしまーす」
オレと春日井さんは返事をしつつ、職員室を出た。
結局、サボリとなった春日井さんを道連れに保健室へと向かう。
「これで教室に染みが残っていても、着替えた時に濡れたって言えば誤魔化せるしなんとかなったね」
オレは自分の思い通りに事が進んだ事で達成感もあった為、実に軽やかな口調でそう言った。
「……」
しかし後ろからついてきている春日井さんからの返事はなかった。
オレは春日井さんを連れ立って職員室に急ぐ。
つい先日濡れた先生と一緒だった時、まさかまたこうして春日井さんと同じ状況になるとか予想もしなかった。
当たり前か。こんなもの予想できるのは予知能力者くらいなものだろう。
予知能力かー、いいよねぇ。
どうして女神様はそういったカッコいい系のスキルをさずけてくださらなかったのかと思うが、多分、オレみたいなロクでもない人間がそういうチート系のスキルを得ると欲望のまま闇堕ちしそうなので、分相応なのだろう。
いや、生き返らせてもらった上に、色々なスキルも頂けて十分感謝はしているんですけどね、前世の女神様には。
ただちょっと、こちらの世界の女神様と反りがあわないだけで。
そうこうしているうちに職員室に到着。
すぐに扉をノックし、出入り口で先生を呼ぶ。
「冬原先生、いらっしゃいますかー」
本来は授業中の時間の為、こうして職員室に訪問してくる生徒はいない。
その為、えらく目立った上にぬれねずみのこの恰好ともなれば、先生たちの注目もひとしおだ。
「宮城? どうし……いや、本当にどうした!?」
オレの呼びかけにこちらを向いた先生が驚いた顔でやってくる。
良かった。冬原先生はこの時間、授業がなかったらしい。
もし不在となると他の先生に対しての事情説明やらなんやらで面倒な事になる所だった。
しかし冬原先生がいるなら話が早い。
「実はまたトイレの蛇口が故障しまして」
今朝オレが濡れた姿を見ている先生の姿も何人か受けられる。
またか、という顔をしていたが疑われてはいないようだった。
「ほう?」
そう、ただ一人。真実を知り、嘘つきの共犯者でもある冬原先生以外は。
「で? どういう……ふむ……」
先生は何かを言いかけたものの、オレの後ろにジャージ姿の春日井さんがいる事に気付き黙り込む。
何だかよくわからないが、オレがこうして嘘をつく以上は協力を求めていると察してくれたのだろう。
「せっかく替えを用意してやったというのに仕方のない奴だな。春日井も委員長として手伝ったのか? 災難だったな。宮城。あそこの男子トレイは私が業者さんに連絡を入れておくから今度から別のトイレを使え」
「はい。すみません、せっかくお借りした服を」
などと周囲に聞こえるような大きめの声で先生と話を合わせる。
そうして春日井さんに聞こえないように、先生がオレの耳元でささやく。
「で? どういう事だ?」
「色々とありすぎてここではちょっと。あと、この服ってどうしたんですか?」
「それこそ私も色々あるんだよ。まだ別の替えが車にあるからとってきてやる。下着も同じく用意があるから待ってろ」
「すみません、ありがとうございます」
お互い色々とここで語れない事があるらしいが、着替えを用意してもらえるなら助かる事には違いない。
「春日井」
「は、はい!」
「お前は制服が濡れてジャージに着替えたのか? ああ、だが髪と肩がまだ少し濡れているな。下着は大丈夫か?」
「あ、はい、ええと……少し、その」
朝の先生と同じく自分のエッチなおつゆで濡れてしまって冷たいんです、とは教えられないのでオレは黙って成り行きを見守る。
「私のものでよければ用意してやる。安心しろ、新品だ」
「ええと、はい、あの、ありがとうございます。お金は……」
「バカを言え、生徒から金がとれるか。別に高価なものじゃない。こういう時の為にストックしておいた三枚セットでいくらのセール品だ」
そうして先生は再びスポーツバックからタオルを二枚取り出して、オレと春日井さんの頭に一枚ずつかけた。
何枚入ってるんだろうね、あのバックに。
「保健室で待ってろ、すぐに持って行ってやる。この時間なら山崎先生がみえるはずだ。今の時間の授業は……ああ、視聴覚室に移動だったか。そっちも私が言っておいてやる」
「はい、ありがとうございます」
「はーい、よろしくお願いしまーす」
オレと春日井さんは返事をしつつ、職員室を出た。
結局、サボリとなった春日井さんを道連れに保健室へと向かう。
「これで教室に染みが残っていても、着替えた時に濡れたって言えば誤魔化せるしなんとかなったね」
オレは自分の思い通りに事が進んだ事で達成感もあった為、実に軽やかな口調でそう言った。
「……」
しかし後ろからついてきている春日井さんからの返事はなかった。
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