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『春日井、詰む』
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『春日井、詰む』
「……んー」
さて、どうする?
普通であれば施錠がされて人のいないはずの教室で、明らかに人為的な物音がした場合、一般生徒であればどうするか?
職員室もしくは視聴覚室に戻って先生に報告だろう。
オレが報告の為にいなくなった間に春日井さんがダッシュで教室から逃げるという手もあるが、そうなると鍵を持って教室に戻っていたはずの春日井さんが物音の人物ではないかと疑われるはずだし、そうでなくとも鍵を開けたのは誰だ、中にいたのは誰だ? という事にはなる。
どうあっても不審人物がいるという事になるし、場合によっては大事になる可能性もありそうだ。
さらにオレが黙っているという選択肢も厳しい。
明らかに不審な事態にオレが遭遇したのを春日井さんは知っているわけで、オレがそれを報告しないというのは理屈が通らないだろう。
カドオナを見られていないと思っている春日井さんの立場からすれば、不審者が教室内に侵入しているとオレが考えると思うだろう。
その挙句、自身が施錠していた教室にいたと知られれば、彼女自身が窃盗犯の疑いをかけられるかもしれない。
それだけは正直、非常によくない流れだ。
考える。
オレはひたすら考える。
この状況でオレと春日井さんの二人にとって最もダメージが少なく、なんならオレにとっても望ましい状況に導くにはどうするべきかと。
「……いや、詰みだわ。どーにもならんでしょ」
少なくとも春日井さんが鍵を持っている以上、なんらかの追求はされてしまう。
であるなら、もうオレにバレてしまうのは許容してもらおう。
どうして鍵なんかかけていたの? ボク入れなかったよー、などとすっとぼけて何事もなかったように会話を進め、教科書を手に視聴覚室に戻って、無理やりにでもハッピーエンドにしてしまう。
よほど言い逃れができない状況でもない限り、イケメン補正でバフされたオレのトーク力の方が説得力があるはずだ。
そして事を荒立てない方向で話していけば、多少のゴリ押しがあっても春日井さんにとっても都合がいいはずだからスルーしてくれるだろう。
よし。
オレは色々と方向の覚悟を決めて、扉をノックする。
「もしかして、春日井さん?」
まだ確定はさせない。
相手に心の準備をさせる。
もしここで返事をしてこないようならややバッドエンド方面にかたむくが、それはそれに合わせるしかない。
「み、みやぎ、くん、どうしたの?」
か細い、とてもとてもか細い声が扉越しに聞こえた。
「ああ、やっぱり。どうしたの? 鍵なんてかけて? ボクも忘れ物して取りに来たんだけど開けてくれる?」
鍵をかけていた事にまったく疑問を持っていませんアピールをして、コンコンと扉を叩く。
しかし春日井さんは鍵を開けない。
「あ、あの……その……」
そして言葉を詰まらせ何かを言おうとして、やはり言葉にならず。
「う、う……うえぇッ」
涙声を通り越して、いっきに鳴き声になった。
はい、まずいですよ。
春日井さん的には何かしら後ろめたいと事があり、すでに誤魔化しがきかないと思っている状況らしい。
誰も傷つかないハッピーエンドはなくなった気がするが、ここまで来て放置もできない。
ともかくここは開けてもらうしかない。
「春日井さん? どうしたの? まずは鍵を開けてもらえる? ほら、授業も始まってずいぶんと経つから早く戻らないとね?」
「……」
しばらくして。カチャン、と鍵が開けられた。
「どうしたの、春日井さ、ん……?」
オレがけドアをゆっくりと横に開けると、ドアのすぐ前で座り込んでいる春日井さんがいた。
そうして、なぜ泣き出したのか理解した。
「……んー」
さて、どうする?
普通であれば施錠がされて人のいないはずの教室で、明らかに人為的な物音がした場合、一般生徒であればどうするか?
職員室もしくは視聴覚室に戻って先生に報告だろう。
オレが報告の為にいなくなった間に春日井さんがダッシュで教室から逃げるという手もあるが、そうなると鍵を持って教室に戻っていたはずの春日井さんが物音の人物ではないかと疑われるはずだし、そうでなくとも鍵を開けたのは誰だ、中にいたのは誰だ? という事にはなる。
どうあっても不審人物がいるという事になるし、場合によっては大事になる可能性もありそうだ。
さらにオレが黙っているという選択肢も厳しい。
明らかに不審な事態にオレが遭遇したのを春日井さんは知っているわけで、オレがそれを報告しないというのは理屈が通らないだろう。
カドオナを見られていないと思っている春日井さんの立場からすれば、不審者が教室内に侵入しているとオレが考えると思うだろう。
その挙句、自身が施錠していた教室にいたと知られれば、彼女自身が窃盗犯の疑いをかけられるかもしれない。
それだけは正直、非常によくない流れだ。
考える。
オレはひたすら考える。
この状況でオレと春日井さんの二人にとって最もダメージが少なく、なんならオレにとっても望ましい状況に導くにはどうするべきかと。
「……いや、詰みだわ。どーにもならんでしょ」
少なくとも春日井さんが鍵を持っている以上、なんらかの追求はされてしまう。
であるなら、もうオレにバレてしまうのは許容してもらおう。
どうして鍵なんかかけていたの? ボク入れなかったよー、などとすっとぼけて何事もなかったように会話を進め、教科書を手に視聴覚室に戻って、無理やりにでもハッピーエンドにしてしまう。
よほど言い逃れができない状況でもない限り、イケメン補正でバフされたオレのトーク力の方が説得力があるはずだ。
そして事を荒立てない方向で話していけば、多少のゴリ押しがあっても春日井さんにとっても都合がいいはずだからスルーしてくれるだろう。
よし。
オレは色々と方向の覚悟を決めて、扉をノックする。
「もしかして、春日井さん?」
まだ確定はさせない。
相手に心の準備をさせる。
もしここで返事をしてこないようならややバッドエンド方面にかたむくが、それはそれに合わせるしかない。
「み、みやぎ、くん、どうしたの?」
か細い、とてもとてもか細い声が扉越しに聞こえた。
「ああ、やっぱり。どうしたの? 鍵なんてかけて? ボクも忘れ物して取りに来たんだけど開けてくれる?」
鍵をかけていた事にまったく疑問を持っていませんアピールをして、コンコンと扉を叩く。
しかし春日井さんは鍵を開けない。
「あ、あの……その……」
そして言葉を詰まらせ何かを言おうとして、やはり言葉にならず。
「う、う……うえぇッ」
涙声を通り越して、いっきに鳴き声になった。
はい、まずいですよ。
春日井さん的には何かしら後ろめたいと事があり、すでに誤魔化しがきかないと思っている状況らしい。
誰も傷つかないハッピーエンドはなくなった気がするが、ここまで来て放置もできない。
ともかくここは開けてもらうしかない。
「春日井さん? どうしたの? まずは鍵を開けてもらえる? ほら、授業も始まってずいぶんと経つから早く戻らないとね?」
「……」
しばらくして。カチャン、と鍵が開けられた。
「どうしたの、春日井さ、ん……?」
オレがけドアをゆっくりと横に開けると、ドアのすぐ前で座り込んでいる春日井さんがいた。
そうして、なぜ泣き出したのか理解した。
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