【R18】転生先は男女比１：３０の貞操逆転世界～ビッチを夢見る三十路の魂～

『春日井の想い』

『春日井の想い』

「……ん？」

ドアには大きな窓ガラスがはまっていて中を見る事ができる。

そこから春日井さんの姿はすぐに見て取れた。

彼女の席は最前列。

オレの席は最後列。

であるのに、春日井さんの姿は最後列にあった。

正確にはオレの席の前に立っている。

そしてオレの机をジッと見つめていた。

「……これはもしや、ラブレターイベント？」

誰もいないタイミングを見計らって、オレの机の中に恋文投函の瞬間では？

不意にやってきたラッキーイベントに、オレは息をひそめて春日井さんの動きを見守る。

ちなみに今までそういう事は一度もなかった。

例の冊子にもあったことだが、一方的な男性へのアプローチは場合によって訴訟対象になるとかなんとかで、ラブレターがらみで起きるトラブルはその最たるものらく、受け取った男性も未開封のまま処理する事が望ましいともされている。

なんてひどい話だと思っていたが、届けられた手紙がラブレターと限らない、というのが理由だそうだ。

脅迫文だったり、刃物が仕込んであったり、そういう事件性のある手紙が仕込まれることが過去に何度もあり、警戒なり破棄なりが呼び掛けてられている。

もちろん普通の恋文の方が圧倒的に多いのだろうが、そういった危険性がある限り手紙は避けた方がいいというのが風潮というわけだ。

さらに、一見して普通の手紙に見えても、実は他人の名前をかたって罵詈雑言を書き記し恋敵を脱落させるという悪質なものもあるらしく、直接手渡される手紙でもない限り、差出人が信用できないという点があるらしい。

郷に入っては郷に従えとは言うが、夢もない話である。

しかし、こうして差し出される瞬間を目にしておけば少なくとも差出人は他人ではない。

あとは内容が交際希望とかだったら色と話が早くてうれしいな。

などと、オレは三秒先にやってくるだろう幸せな未来をうたがわず、ドアのガラス越しに春日井さんを見ていたわけだが。

「おや？」

春日井さんはオレの机に寄り添い、その細い指先をオレの机に這わせ。

そのままオレの机に体をよりからせた。

なんだろうと疑問に思っていたが、オレの疑問は次の一瞬で氷解した。

まさに冷や水をぶっかけられる勢いで状況を把握した。

「そうきたか……そうきたかー」

春日井さんはオレの机のカドにスカートをおしつけ腰を振り始めたのだ。

どう見てもカドオナです、本当にありがとうございます。

オレは少しガラスから顔を離し、どうしたものかと悩む。

視聴覚室から出る前、近くの席の子に教科書を取りに教室に戻ると言ってある以上、教室に残っていた春日井さんと出会わないわけがない。

例え、今、知らないフリをしたとしても、春日井さん自身が自分が教室でオナっていた以上、オレがこのタイミングで忘れ物を教室に戻ってきた事を知ったら、この痴態を見られたと知るだろう。

後で知るか。

それとも今、ここでうまく事をおさめるか。

この二択だ。

「……いや、春日井さんがオレに気づいてうまく隠れてくれればあるいは？」

第三の可能性を見いだした。