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『春日井との雑務』
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『春日井との雑務』
隣の夏木さんは無言でふて寝しているが、明らかに不機嫌オーラが漂っている。
こちらが風下だったら、さぞチクチクするだろうというくらい、淀んだムードをかもしている。
ふーむ、あちらを立てるとこちらが立たず。
オレとしては、どちらも立てたい――無論、いろんな意味で――が、なかなかそううまくはいかない。
オレの異世界転生は、チート無双ハーレム戦記ではないのだ。
いい塩梅の八方美人を演じながらいろんな女子と仲良くなり、いざ望むハーレムの中では極力トラブルが起きないようにそれぞれのご機嫌をケアしていくという、学園ラブコメである。トゥルーエンドはもちろんハーレムエンドである。
そのためにも、いずれはこの二人の仲もなんとかしたいが、まずはその前に春日井さんと仲良くならねばならない。
ゆえにチキンレース。
春日井さんの好感度を上げきるまでに、夏木さんの好感度を修復不能レベルにまで下げないという、古き時代のエロゲー並みのフラグ管理が求められる。
しかもリセットはない。セーブもロードもない。
とんだクソゲーだが、だからこそ燃え上がる。
……正直、夏木さんはどんなに怒ってもごめんなさいで許してくれるチョロインという認識もあるが。
ま、そういうわけで。
「うん、わかったよ」
「お願いね。鍵は視聴覚室に来たら、私に返してくれればいいから」
オレは春日井さんの補佐として、その仕事を了解した。
そうこうする間に四限目が終わり、昼休み、昼食の時間となった。
だいたい皆お弁当を持参しているが、中には購買で買ったパンや、校舎横に併設された学生食堂で食べる生徒もいる。
ゆえに昼休みの教室内というのは人数も半分くらいになっているし、他のクラスの子がやってくる事もある。
最近のオレも教室を抜け出し屋上で冬原先生お手製の弁当を頂く事が多いのだが、いくら鍵を管理している先生が施錠して誰も入れないようにしているとはいえ、そう頻繁に学校内で逢引きしているとマズいだろうと話し合った末、少し控える事にした。
本当に慣れとは怖いものだ。先生も最初は学校内でイチャつく事がバレたらマズい、とってもマズいと認識していたはずなのに、だいぶガードが甘くなっている。
恋は盲目とは言うが、それで先生がクビ、さらに言えば未成年淫行なんかで捕まってしまったら、オレが悲しい。
というわけで、珍しく教室にいるオレは昼食にコンビニで買ってきたパンを食べようとした所。
「……オイ」
「ん? なに夏木さん?」
「ちょっとツラかせ」
隣で立ち上がった夏木さんが、アゴをくいっとやってオレを誘う。
たまにやるよね、こういう昭和ムーブ。
しかし美人は何をやってもサマになる。
「いいけど……ボク、ゴハン食べたいなぁ。あとでじゃダメ? これ以上運動してお腹を減らすと背中とくっつくよ?」
てっきりエッチなお誘いかと思ったオレだったが、運動イコール、エッチという事気づいた夏木さんが顔を赤くした。お怒り半部分、照れ半分だな。
「ちげーよ、バカ。いいから来い」
「もー」
オレはコンビニの袋をカバンにしまいなおし、先に出ていった夏木さんの後を追いかけた。
てっきり校舎裏のトイレまで行くかと思いきや、ちょっと進んだ人気のない廊下のカドで夏木さんは待っていた。
「ほら」
そうして制服の下に隠していた? 紙袋を取り出すとオレに突きつける。
けっこうな大きさの袋だったが、もともとお胸がデッカくて制服が盛り上がっていたので、中にこんなものが入っているとは思いもしなかった。
「なに、これ?」
「……最近、コンビニのパンばっかりだったからよ」
ティンときた。
すぐに紙袋の中をのぞきこむ。
ラップにくるまれたサンドイッチである。
しかも以前からオレがちょくちょくごちそうしてもらっているトーストサンドだった。
隣の夏木さんは無言でふて寝しているが、明らかに不機嫌オーラが漂っている。
こちらが風下だったら、さぞチクチクするだろうというくらい、淀んだムードをかもしている。
ふーむ、あちらを立てるとこちらが立たず。
オレとしては、どちらも立てたい――無論、いろんな意味で――が、なかなかそううまくはいかない。
オレの異世界転生は、チート無双ハーレム戦記ではないのだ。
いい塩梅の八方美人を演じながらいろんな女子と仲良くなり、いざ望むハーレムの中では極力トラブルが起きないようにそれぞれのご機嫌をケアしていくという、学園ラブコメである。トゥルーエンドはもちろんハーレムエンドである。
そのためにも、いずれはこの二人の仲もなんとかしたいが、まずはその前に春日井さんと仲良くならねばならない。
ゆえにチキンレース。
春日井さんの好感度を上げきるまでに、夏木さんの好感度を修復不能レベルにまで下げないという、古き時代のエロゲー並みのフラグ管理が求められる。
しかもリセットはない。セーブもロードもない。
とんだクソゲーだが、だからこそ燃え上がる。
……正直、夏木さんはどんなに怒ってもごめんなさいで許してくれるチョロインという認識もあるが。
ま、そういうわけで。
「うん、わかったよ」
「お願いね。鍵は視聴覚室に来たら、私に返してくれればいいから」
オレは春日井さんの補佐として、その仕事を了解した。
そうこうする間に四限目が終わり、昼休み、昼食の時間となった。
だいたい皆お弁当を持参しているが、中には購買で買ったパンや、校舎横に併設された学生食堂で食べる生徒もいる。
ゆえに昼休みの教室内というのは人数も半分くらいになっているし、他のクラスの子がやってくる事もある。
最近のオレも教室を抜け出し屋上で冬原先生お手製の弁当を頂く事が多いのだが、いくら鍵を管理している先生が施錠して誰も入れないようにしているとはいえ、そう頻繁に学校内で逢引きしているとマズいだろうと話し合った末、少し控える事にした。
本当に慣れとは怖いものだ。先生も最初は学校内でイチャつく事がバレたらマズい、とってもマズいと認識していたはずなのに、だいぶガードが甘くなっている。
恋は盲目とは言うが、それで先生がクビ、さらに言えば未成年淫行なんかで捕まってしまったら、オレが悲しい。
というわけで、珍しく教室にいるオレは昼食にコンビニで買ってきたパンを食べようとした所。
「……オイ」
「ん? なに夏木さん?」
「ちょっとツラかせ」
隣で立ち上がった夏木さんが、アゴをくいっとやってオレを誘う。
たまにやるよね、こういう昭和ムーブ。
しかし美人は何をやってもサマになる。
「いいけど……ボク、ゴハン食べたいなぁ。あとでじゃダメ? これ以上運動してお腹を減らすと背中とくっつくよ?」
てっきりエッチなお誘いかと思ったオレだったが、運動イコール、エッチという事気づいた夏木さんが顔を赤くした。お怒り半部分、照れ半分だな。
「ちげーよ、バカ。いいから来い」
「もー」
オレはコンビニの袋をカバンにしまいなおし、先に出ていった夏木さんの後を追いかけた。
てっきり校舎裏のトイレまで行くかと思いきや、ちょっと進んだ人気のない廊下のカドで夏木さんは待っていた。
「ほら」
そうして制服の下に隠していた? 紙袋を取り出すとオレに突きつける。
けっこうな大きさの袋だったが、もともとお胸がデッカくて制服が盛り上がっていたので、中にこんなものが入っているとは思いもしなかった。
「なに、これ?」
「……最近、コンビニのパンばっかりだったからよ」
ティンときた。
すぐに紙袋の中をのぞきこむ。
ラップにくるまれたサンドイッチである。
しかも以前からオレがちょくちょくごちそうしてもらっているトーストサンドだった。
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