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『GW編・六日目 私服の彼女は意外と攻めていた(9)』

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『GW編・六日目 私服の彼女は意外と攻めていた(9)』

わずかに。

腰のボタンとチャック上部の間の、わずかな隙間から黒い繊維が見える。

ブラが黒であれぱ、ショーツも黒。

なるほど自然の摂理だ。どんなお偉い学者先生でも異論は挟みようがないだろう。

黒い上下を身にまとった同級生が至近距離にいうこの状況。

実に良い。

しかも肌が触れ合うほどの距離。

言うなれば我が魔眼の射程圏内だ。

この黒縁眼鏡を外して、春日井さんのアゴをクイっとやって「オレの女になれよ」とカッコよく決めれば勝負あり、だろう。

だがそういう力押しのみで攻めるのはオレの美学に反する。

魔眼は相手がセレフになった後、オレのさらなる美学の追及のために使うぐらいでちょうどいいのだ。

「そ、そういうわけだから。もし副クラス委員になったら、私もふくめてよろしくね。何人か委員が他にいるから、その時になったら改めて紹介するわ」
「あ、うん。もちろんだよ」
「……転入生が宮城君で良かった」
「え?」

唐突にそんな事を言い出す春日井さん。

「だって時期が時期だったじゃない? 新学期にあわせて転入してくるならともかく。始まって少しして転入してくるなんて、前の学校で何か問題を起こして、やむをえず転入してきた問題児、みたいな事も考えられるから」
「……あー。たしかに時期的に中途半端というか、変なタイミングだったよね」
「うん。しかも寄りも寄って夏木さんの隣の席でしょう? トラブルにならないかなと思ったりしたんだけど……」

あー。

カツアゲされてないかと心配された記憶がある。

あ、夏木さんで思い出した。

「夏木さんに聞いたけど……家が近いの?」
「以前はお店にお邪魔したことも会ったけど、今はあまり、ね」

奥歯にものがつまったような口調の春日井さん。

夏木さんは硬派? なのでクラス内でしゃべる方ではないが、かといってほかの生徒に高圧的な態度をとる事はない。

ただ春日井さんに対しては当たりが厳しいと今なら思い当たる事がある。

クラス委員として要件を伝える春日井さんに対して夏木さんの言葉はとげとげしい事が多い。

しかし春日井さんも夏木さんに対して口調や態度がキツいとも感じる。

オレがカツアゲされたと決めつけた事ねそうだ。

あんなふうに決めつけられれば夏木さんだって怒るし、売り言葉に買い言葉となっても仕方ない。

要するに。

「あまり仲良くないんだ?」
「……」

あえて何でもないようなカンジで雑に聞いてみたが、良いとも悪いとも言わず、春日井さんは少し笑った。

どうやらあまり楽しそうな話題ではなさそうだ。

これ以上この話題に踏み込むほどオレは春日井さんと親しくないし、彼女もまた望んでいないだろう。

……うーん、しかしこれは予定外の流れだ。

さきほどまでの男(オレ)に密着されてドギマギしていた初々しい春日井さんはいなくなってしまった。

今、ここで唐突に「オレのセフレになってくれないか」と言い出したら、さすがにこの世界でもおかしい人になってしまう。

この場で少しでも話を進める予定だったが、そういう雰囲気ではなくなってしまった。

人間、諦めも肝心だ。急いては事を仕損じるとも言うし、副委員長というシステムを知る事もできたし収穫がなかったわけでもない。

むしろこんな昼日中のコーヒーショップでセレフにならないかなどと聞こうとしていたさっきまでのオレは本当に正気だったんだろうか? 

今さらだが正気の沙汰ではないと思う。

それというのも、春日井さんのセクシーな装いのせいだ。ギャップ萌え、おそるべし。

ま、そういうわけで春日井さんセレフ契約は仕切りなおす事とする。
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