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『GW編・五日目 思わぬ出会い(7)』
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『GW編・五日目 思わぬ出会い(7)』
「コーヒー屋さんの常連さんですか」
「カフェもそうだし、コッチも常連だな。あの人達はいい常連だよ。たまにコレを渡すときに、どさくさで手ぇ触ってくるぐらいだ」
シマ先輩もそうだが客もカフェから飲み屋へハシゴらしい。
「かけもちですか?」
「五時からだとコッチのがワリいいんだ。ラクだしな」
確かにコーヒーショップで接客よりはこうしてビラを配っている方がラクそうだ。
だが、飲み屋の前ともなければ今度は酔っ払いにも絡まれそうなものだが。
「大丈夫なんですか? また絡まれません?」
「まー、たまにはな。厄介な酔っ払いに絡まれた時は大人しく店ん中に逃げ込んでるから大丈夫さ」
「え。けど店には入れないんじゃ?」
「そこはほれ。これがオレのパスポートだ」
抱えていたホウキを見せる。
「掃除道具のお片付けって事で、ちょっとお邪魔するだけだよ」
「それ通るんですか……」
「この辺りは繁華街だし、もっと悪い奴の面倒を見るのにお巡りさんも忙しい」
肩をすくめて飄々と言ってのける。このバイト歴もなかなか長そうだ。
「ま、さすがに未成年の客に寄ってくれとは言えないけどな」
「なら、なんで学生服のボクにコレ、渡したんですか?」
「歩いていくるのを見つけてな。ジョークだよ、ジョーク!」
わはははは、と明るく笑いながらオレが持っていたチラシを取り上げるシマ先輩。
「ま、再会は再会だ。名前、教えてくれよ?」
「ええ。ボクは宮城京(ミヤギ キョウ)と言います」
「宮城か。呼び捨てでいーか?」
「はい、もちろん。お好きにどうぞ」
「オレは嶋井明石(シマイ アカシ)。だからシマって呼ばれてる。お前も好きに呼んでくれ」
好きに呼んでいいのであれば、すでにオレの心の中で呼んでいる先輩呼びでいいだろう。
「ではシマ先輩で?」
「おお、頼むぜ、そうしてくれ!」
一転して元のように明るく、いや、さらに明るい顔になったシマ先輩がオレの肩をバンバン叩く。
なるほど。
男の後輩が初めてみたいな話をチラっとしていたし、先輩と呼ばれる交友に憧れがあったわけか。
なんというか、可愛い人である。
「っと、やべえ。店長が中から見てる」
「あの方ですか。優しそうな人ですね」
店の中から年配の女性が笑ってこちらを見ている。
「いっつも笑ってるけど、怒るとこええんだよ。ちなみに笑いながら怒るタイプだ」
「あー、それは怖いですね。表情が変わらないと、相手がどれくらい怒っているかわかりませんし」
「おっ、わかるか。そうなんだよな……」
前世の記憶の残滓がオレの魂を震わせる。
課長そんなに怒ってなかったのに減給とかひどい……うっ頭が。
「じゃあ、仕事に戻るわ。宮城もあっちに顔だせよ?」
「ええ。シマ先輩もがんばって」
「サンキュ、またな」
そう言ってシマ先輩は再びビラ配りを始めた。
ティッシュ配りみたいなものだが、差しだされた人は九割が受け取ってとり、入店する客も一割程度とかなり多い。
一方で別の店の前でも女性スタッフがビラを配っているが、こちらは受け取る人が一割にも満たない。当然、集客率はさらに低い。
シマ先輩の時給がいくらかは知らないが、これだけの成果が見込めるなら、あの笑顔の店長もそうとうに出しているだろう。
むしろ引き抜きとかもありそうだ。オレが店の店長だったら絶対に引き抜く。
「……学生も雇ってくれるなら、オレでもやらせてもらえるかな?」
今の所、お金に困ってはいないがアテがあるというのはいざという時のためにもなる。
「そうなったらシマ先輩に紹介してもらうか」
きっと、おういいぜ! と即答してくれるだろう。
良い友人、良い先輩、良いツテ、一度に手に入れてしまった。
シマ先輩には感謝だ。
オレは非常に有意義な一日を終えた。
明日の日曜日はGW最後の日。あいかわらず予定もないが、さてどうするかな?
「コーヒー屋さんの常連さんですか」
「カフェもそうだし、コッチも常連だな。あの人達はいい常連だよ。たまにコレを渡すときに、どさくさで手ぇ触ってくるぐらいだ」
シマ先輩もそうだが客もカフェから飲み屋へハシゴらしい。
「かけもちですか?」
「五時からだとコッチのがワリいいんだ。ラクだしな」
確かにコーヒーショップで接客よりはこうしてビラを配っている方がラクそうだ。
だが、飲み屋の前ともなければ今度は酔っ払いにも絡まれそうなものだが。
「大丈夫なんですか? また絡まれません?」
「まー、たまにはな。厄介な酔っ払いに絡まれた時は大人しく店ん中に逃げ込んでるから大丈夫さ」
「え。けど店には入れないんじゃ?」
「そこはほれ。これがオレのパスポートだ」
抱えていたホウキを見せる。
「掃除道具のお片付けって事で、ちょっとお邪魔するだけだよ」
「それ通るんですか……」
「この辺りは繁華街だし、もっと悪い奴の面倒を見るのにお巡りさんも忙しい」
肩をすくめて飄々と言ってのける。このバイト歴もなかなか長そうだ。
「ま、さすがに未成年の客に寄ってくれとは言えないけどな」
「なら、なんで学生服のボクにコレ、渡したんですか?」
「歩いていくるのを見つけてな。ジョークだよ、ジョーク!」
わはははは、と明るく笑いながらオレが持っていたチラシを取り上げるシマ先輩。
「ま、再会は再会だ。名前、教えてくれよ?」
「ええ。ボクは宮城京(ミヤギ キョウ)と言います」
「宮城か。呼び捨てでいーか?」
「はい、もちろん。お好きにどうぞ」
「オレは嶋井明石(シマイ アカシ)。だからシマって呼ばれてる。お前も好きに呼んでくれ」
好きに呼んでいいのであれば、すでにオレの心の中で呼んでいる先輩呼びでいいだろう。
「ではシマ先輩で?」
「おお、頼むぜ、そうしてくれ!」
一転して元のように明るく、いや、さらに明るい顔になったシマ先輩がオレの肩をバンバン叩く。
なるほど。
男の後輩が初めてみたいな話をチラっとしていたし、先輩と呼ばれる交友に憧れがあったわけか。
なんというか、可愛い人である。
「っと、やべえ。店長が中から見てる」
「あの方ですか。優しそうな人ですね」
店の中から年配の女性が笑ってこちらを見ている。
「いっつも笑ってるけど、怒るとこええんだよ。ちなみに笑いながら怒るタイプだ」
「あー、それは怖いですね。表情が変わらないと、相手がどれくらい怒っているかわかりませんし」
「おっ、わかるか。そうなんだよな……」
前世の記憶の残滓がオレの魂を震わせる。
課長そんなに怒ってなかったのに減給とかひどい……うっ頭が。
「じゃあ、仕事に戻るわ。宮城もあっちに顔だせよ?」
「ええ。シマ先輩もがんばって」
「サンキュ、またな」
そう言ってシマ先輩は再びビラ配りを始めた。
ティッシュ配りみたいなものだが、差しだされた人は九割が受け取ってとり、入店する客も一割程度とかなり多い。
一方で別の店の前でも女性スタッフがビラを配っているが、こちらは受け取る人が一割にも満たない。当然、集客率はさらに低い。
シマ先輩の時給がいくらかは知らないが、これだけの成果が見込めるなら、あの笑顔の店長もそうとうに出しているだろう。
むしろ引き抜きとかもありそうだ。オレが店の店長だったら絶対に引き抜く。
「……学生も雇ってくれるなら、オレでもやらせてもらえるかな?」
今の所、お金に困ってはいないがアテがあるというのはいざという時のためにもなる。
「そうなったらシマ先輩に紹介してもらうか」
きっと、おういいぜ! と即答してくれるだろう。
良い友人、良い先輩、良いツテ、一度に手に入れてしまった。
シマ先輩には感謝だ。
オレは非常に有意義な一日を終えた。
明日の日曜日はGW最後の日。あいかわらず予定もないが、さてどうするかな?
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