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『GW編・三日目夜:帰り道の暗がりで(2)』
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『GW編・三日目夜:帰り道の暗がりで(2)』
先生たちと別れ、オレは自分のアパートへ続く通りなれた道を歩く。
夕焼け空に沈んでいく太陽を見ながら考える。
「……変質者、ねぇ」
不審者とは言っていない事から、ケガやら盗難やらの被害は出ていないのだろう。
となると、前世の知識からして。
「痴漢、いや、痴女か」
さらに推測をする。
肉体的な接触をしてくる痴女であれば、やはり不審者と表現するだろう。
つまり。
「……露出系、か」
おそらく間違いない。
この男女間での性的犯罪が過剰なまでに反応される世界において、男に直接的な被害を与える覚悟のある女性はよほどの事がない限りいないと思う。
逆説、よほどの事があれば刺されるかもしれなのは過去と同じだと思うので、オレのようなビッチ志願は、そこのところ重々承知して立ち回らなければならない。
そんな事を考えていたからだろうか。
ポツンとポツンと間隔を空けて立っている、まだ明かりのともっていない外灯。
その一つから、オレの進路をふさぐように一つの影があらわれた。
距離にして十メートルほどだろうか。
とっさの事で身構えたものの、その影は立ち止まったままこちらを見ている……だと思う。
というのも、顔にはサングラスとマクス。
春先にはまだ暑いであろうロングコート、そのすそを手で押さえている。
明らかに不審なコーディネイトと、この後の展開をにおわせる手のポジション。
とはいえ、変質者の方ですかと問いかけるわけにもいかない。
もし一般通過の寒がりで花粉症の人だった場合、とても失礼な問いかけになってしまう。
可能性は低いが、この世の中に絶対というものは存在しない。
であれば、ここは見に徹しよう。
決して期待しているわけではない。
悲しいえん罪を生み出さないための配慮だ。
決して期待していない。
「……」
「……」
しかし、サングラスの女性は微動だにしない。
オレのような未熟者には理解できない、露出をする際に適した間合いというものがあるのだろうか?
と思っていると、ようやく女性が動く。
サングラクス越しの視線を右、左、と軽くさまよわせた後、自分の背後にも人影がない事を確認する。
周囲に人影はない。
タイミングとしては今だ。
さらには獲物であるオレを正面にとらている絶好のポジション。
コートのすそにそえられていた白く細い指先がピクリと動く。
――来る。
ならばウエルカムだ、まだ見ぬ観音様。
オレは逃げも隠れもしない!
緊張感を帯びた視線が交錯する中、それまでの緩慢な動きから一転、女性は一気にそのコートのすそを観音開きのごとくバッと開いた。
夕焼けをバックにさらされた白い肌。
「……」
「……」
無言の空気が漂う中、オレは深い悲しみを覚えていた。
ガッカリだった。
ガッカリすぎた。
観音様はそのご尊顔を隠すように、赤い下着でお隠れになっていた。
なんと中途半端な覚悟だろうか。
全裸コートを期待したオレのピュアな少年ハートは、悲しみを通り越しやがて怒りで包まれる。
「よくもボクをォ! だましたなァ!」
先生たちと別れ、オレは自分のアパートへ続く通りなれた道を歩く。
夕焼け空に沈んでいく太陽を見ながら考える。
「……変質者、ねぇ」
不審者とは言っていない事から、ケガやら盗難やらの被害は出ていないのだろう。
となると、前世の知識からして。
「痴漢、いや、痴女か」
さらに推測をする。
肉体的な接触をしてくる痴女であれば、やはり不審者と表現するだろう。
つまり。
「……露出系、か」
おそらく間違いない。
この男女間での性的犯罪が過剰なまでに反応される世界において、男に直接的な被害を与える覚悟のある女性はよほどの事がない限りいないと思う。
逆説、よほどの事があれば刺されるかもしれなのは過去と同じだと思うので、オレのようなビッチ志願は、そこのところ重々承知して立ち回らなければならない。
そんな事を考えていたからだろうか。
ポツンとポツンと間隔を空けて立っている、まだ明かりのともっていない外灯。
その一つから、オレの進路をふさぐように一つの影があらわれた。
距離にして十メートルほどだろうか。
とっさの事で身構えたものの、その影は立ち止まったままこちらを見ている……だと思う。
というのも、顔にはサングラスとマクス。
春先にはまだ暑いであろうロングコート、そのすそを手で押さえている。
明らかに不審なコーディネイトと、この後の展開をにおわせる手のポジション。
とはいえ、変質者の方ですかと問いかけるわけにもいかない。
もし一般通過の寒がりで花粉症の人だった場合、とても失礼な問いかけになってしまう。
可能性は低いが、この世の中に絶対というものは存在しない。
であれば、ここは見に徹しよう。
決して期待しているわけではない。
悲しいえん罪を生み出さないための配慮だ。
決して期待していない。
「……」
「……」
しかし、サングラスの女性は微動だにしない。
オレのような未熟者には理解できない、露出をする際に適した間合いというものがあるのだろうか?
と思っていると、ようやく女性が動く。
サングラクス越しの視線を右、左、と軽くさまよわせた後、自分の背後にも人影がない事を確認する。
周囲に人影はない。
タイミングとしては今だ。
さらには獲物であるオレを正面にとらている絶好のポジション。
コートのすそにそえられていた白く細い指先がピクリと動く。
――来る。
ならばウエルカムだ、まだ見ぬ観音様。
オレは逃げも隠れもしない!
緊張感を帯びた視線が交錯する中、それまでの緩慢な動きから一転、女性は一気にそのコートのすそを観音開きのごとくバッと開いた。
夕焼けをバックにさらされた白い肌。
「……」
「……」
無言の空気が漂う中、オレは深い悲しみを覚えていた。
ガッカリだった。
ガッカリすぎた。
観音様はそのご尊顔を隠すように、赤い下着でお隠れになっていた。
なんと中途半端な覚悟だろうか。
全裸コートを期待したオレのピュアな少年ハートは、悲しみを通り越しやがて怒りで包まれる。
「よくもボクをォ! だましたなァ!」
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