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『GW編・三日目:7時20分発、急に混みだした電車内で起きた奇跡(4)』
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『GW編・三日目:7時20分発、急に混みだした電車内で起きた奇跡(4)』
確かに彼を救うのは簡単だ。
私が席をゆずってやれば済む話だろう。
そうすれば一時の礼の言葉くらいはもらえるかもしれない。
だがそれは近くの女を痴女に仕立て上げ、恩人になるチャンスも失うという事だ。
こんな事を考える私は実に最低な女だし、その自覚もある。
だがこんなに好機がこの先の人生で訪れる保証もない。
この男女比1:30の世界において夢をつかむため、つまり男を捕まえる為ならば触法グレーな領域に突っ込む程度の覚悟がなくては叶えられない。
周囲の女どもだって同じだろう。
彼女らが私の立場でもこの席を譲る事はない。
だと言うのに。
頭ではそうわかっているのに。
「き……君、大丈夫か?」
声をかけてしまった。
周囲から怨嗟の念が飛んでくる。
男に触れられるチャンスを潰しやがって、という恨みのエナジーが私の魂に何発もぶつけられた。
だが私にはここまで苦しんでいる男の子が眼前にいて放っておくことは無理だ。
悪人になりきれない甘さ、これも私の悪癖だ。
「あ、はい、大丈夫……です……」
急に声をかけた私に驚いたのか、彼は気丈にも笑顔を浮かべて大丈夫と言った。
確実に大丈夫ではない顔色でだ。
「いや、強がるな。顔が真っ青だぞ。ここに座れ」
「い、いえ、本当に大丈夫……」
私が立ち上がりかけた所で、彼が脱力して大きくバランスを崩した。
貧血か? このまま倒れるのはマズいぞ。
「おっと」
無意識に抱きしめてしまった。
身長差もあって、彼の顔がちょうど私の胸の中におさまった。
彼が小柄なのではない、私がムダにデカイだけなのだが……これは、この体勢はマズいぞ、かなりヤバイ。
すぐに周囲がざわめく。
それはそうだろう。
目の前には乳房の間に男子学生の顔を押し付けている女がいるんだからな。
いつでも私を取り押さえてやろうという気迫と嫉妬を感じる。
もはやこれまで。
彼が離れた瞬間、私は痴女の現行犯として捕まり、次の駅で駅長室に連れて行かれ、そのまま警察行きだ。
……ふう。
思えばただ苦しいだけのつまらん人生だったな。
せめて学ランの若い男の香りを胸いっぱい吸い込んでやろうと、私は抱きとめた彼の首筋に顔を近づけた時、彼が苦し気に腕を動かした。
それがさらにマズい事になった。
息苦しさからか彼がもがくようにして突き出した手がジャケットの中に入り込み、私の胸をガッシリとわしづかみにしたのだ。
もう言い訳のしようがないほどの凶悪犯罪者だ。
意識がもうろうとしている男子高生の顔を窒息させるほど自分の胸に埋めさせて、さらに胸を揉ませている女。
もはや痴女ではなく、性行為強要あたりまで罪状がグレードアップしてしまった。
私はなんとか彼の腕から逃れようとするが、それが余計に指をくいこませる結果になった。
「んんっ」
胸に走る不意の痛みと、生まれて初めての刺激に、つい声が漏れた。
「?」
私のうめき声で朦朧としていた意識が覚醒したのか、男子高生の顔が私を見上げた。
目が合った。
声が出ない。
――ああ、魂が奪われるとはこの事か。
なんという美少年。
すさまじいまでに庇護欲をかきたてる、この甘い顔立ち。
私はこの後、痴女行為、またはそれ以上の罪を負って、社会的に八つ裂きにされるだろう。
独りで起こした会社も潰され、一生、未成年に手を出した年増女と後ろ指を指される人生が待っている。
だがこのつまらん人生、最後に触れた男がこの美少年というのであれば悔いはない。
最期に良い思いをありがとう、名も知らぬ男子高生(てんし)よ。
もはや覚悟は出来た。
さあ、悲鳴をあげるなり、助けを呼ぶなり、なんなりしてくれ。
周囲も君に恩をうるべく、今か今かと狼どもが待ち構えている。
私はいまだきょとんとしている彼のかわいらしい顔をもう一度瞳にやきつけて、断罪される時を待つべくゆっくりと目を閉じた――。
確かに彼を救うのは簡単だ。
私が席をゆずってやれば済む話だろう。
そうすれば一時の礼の言葉くらいはもらえるかもしれない。
だがそれは近くの女を痴女に仕立て上げ、恩人になるチャンスも失うという事だ。
こんな事を考える私は実に最低な女だし、その自覚もある。
だがこんなに好機がこの先の人生で訪れる保証もない。
この男女比1:30の世界において夢をつかむため、つまり男を捕まえる為ならば触法グレーな領域に突っ込む程度の覚悟がなくては叶えられない。
周囲の女どもだって同じだろう。
彼女らが私の立場でもこの席を譲る事はない。
だと言うのに。
頭ではそうわかっているのに。
「き……君、大丈夫か?」
声をかけてしまった。
周囲から怨嗟の念が飛んでくる。
男に触れられるチャンスを潰しやがって、という恨みのエナジーが私の魂に何発もぶつけられた。
だが私にはここまで苦しんでいる男の子が眼前にいて放っておくことは無理だ。
悪人になりきれない甘さ、これも私の悪癖だ。
「あ、はい、大丈夫……です……」
急に声をかけた私に驚いたのか、彼は気丈にも笑顔を浮かべて大丈夫と言った。
確実に大丈夫ではない顔色でだ。
「いや、強がるな。顔が真っ青だぞ。ここに座れ」
「い、いえ、本当に大丈夫……」
私が立ち上がりかけた所で、彼が脱力して大きくバランスを崩した。
貧血か? このまま倒れるのはマズいぞ。
「おっと」
無意識に抱きしめてしまった。
身長差もあって、彼の顔がちょうど私の胸の中におさまった。
彼が小柄なのではない、私がムダにデカイだけなのだが……これは、この体勢はマズいぞ、かなりヤバイ。
すぐに周囲がざわめく。
それはそうだろう。
目の前には乳房の間に男子学生の顔を押し付けている女がいるんだからな。
いつでも私を取り押さえてやろうという気迫と嫉妬を感じる。
もはやこれまで。
彼が離れた瞬間、私は痴女の現行犯として捕まり、次の駅で駅長室に連れて行かれ、そのまま警察行きだ。
……ふう。
思えばただ苦しいだけのつまらん人生だったな。
せめて学ランの若い男の香りを胸いっぱい吸い込んでやろうと、私は抱きとめた彼の首筋に顔を近づけた時、彼が苦し気に腕を動かした。
それがさらにマズい事になった。
息苦しさからか彼がもがくようにして突き出した手がジャケットの中に入り込み、私の胸をガッシリとわしづかみにしたのだ。
もう言い訳のしようがないほどの凶悪犯罪者だ。
意識がもうろうとしている男子高生の顔を窒息させるほど自分の胸に埋めさせて、さらに胸を揉ませている女。
もはや痴女ではなく、性行為強要あたりまで罪状がグレードアップしてしまった。
私はなんとか彼の腕から逃れようとするが、それが余計に指をくいこませる結果になった。
「んんっ」
胸に走る不意の痛みと、生まれて初めての刺激に、つい声が漏れた。
「?」
私のうめき声で朦朧としていた意識が覚醒したのか、男子高生の顔が私を見上げた。
目が合った。
声が出ない。
――ああ、魂が奪われるとはこの事か。
なんという美少年。
すさまじいまでに庇護欲をかきたてる、この甘い顔立ち。
私はこの後、痴女行為、またはそれ以上の罪を負って、社会的に八つ裂きにされるだろう。
独りで起こした会社も潰され、一生、未成年に手を出した年増女と後ろ指を指される人生が待っている。
だがこのつまらん人生、最後に触れた男がこの美少年というのであれば悔いはない。
最期に良い思いをありがとう、名も知らぬ男子高生(てんし)よ。
もはや覚悟は出来た。
さあ、悲鳴をあげるなり、助けを呼ぶなり、なんなりしてくれ。
周囲も君に恩をうるべく、今か今かと狼どもが待ち構えている。
私はいまだきょとんとしている彼のかわいらしい顔をもう一度瞳にやきつけて、断罪される時を待つべくゆっくりと目を閉じた――。
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