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『GW編・二日目 夏木青葉の隠し事(7)』
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『GW編・二日目 夏木青葉の隠し事(7)』
母さんが冗談と受け取るのを前提で、からかいがてら本気で言ってやがるんだ。
なんつー悪質な変態だ。
「宮城君。冗談でも若い男の子が女相手にそう言う事を言うと誤解されるからね。気をつけなさい」
立場上、母さんが注意してくれた。
良かった、母さんまで悪ノリに付き合い始めたら、アタシには逆らう手立てがない。
ここで宮城が大人しくひっこめば万歳だ。さあ帰れ、とっとと帰れ!
「冗談ではなくボクはずっと夏木さんと仲良くなりたいと思ってます。よければまたお邪魔してもいいですか?」
また余計な事を!
「宮城、おまえっ、むぐっ」
アタシがその口を物理的にふさごうとしたら、逆にアタシの口がふさがれた。
「もちろんよ! いつでもいらっしゃいな!」
「じゃあ、ボクは今日はこれで失礼します。お母さん……とお呼びしても?」
アタシは母さんの拘束からもがき抜けて叫ぶ。
「いいわけあるか! 誰がお前の母さんだ!」
「じゃあなんて呼べばいいの? 夏木さんは夏木さんでしょ?」
「そりゃあ、お前……その……」
フツーにおばさんって呼べよ! と言いかけたが、宮城のお世辞漬けでご機嫌になっている母さんを、あえて不機嫌にさせる勇気はアタシにはない。
などと考えて、口ごもっていたら。
「じゃあ、夏木さんを青葉さんって呼んで、お母さんを夏木さんって呼ぶ?」
「バカ、やめろ。アタシがこんがらがる」
何をナイスアイデアみたいな顔で言うのか、コイツは。
いや、その、な? ……名前で呼んでくれるのは別にいいけどさ。
さすがに母さんの前では恥ずかしい。そういうのはもっとムードある時に言ってくれるとかないか?
アタシはそんな思いを込めて宮城を見る。
「えー。夏木さんわがまますぎない?」
「なんでアシタが悪いふうになるんだよ」
やっぱり伝わらないよな! くんでくれよ、アタシのこの女心を!
宮城にとっちゃ理不尽だろう怒りをふつふつと心の中で育てていると、唐突に宮城の視線がアタシから母さんに向けられた。
「あ、なら……ええと、お母さんのお名前をうかがっても?」
「お? 私かい? 私は夏木涼香(スズカ)ってのよ」
母さんも不意をつかれたのか、いつもの肝っ玉口調で答えているが、二人とも気づいていない。
「じゃあ夏木さんの事は青葉ちゃん、お母さんの事は涼香さんって呼べばいいんじゃない?」
青葉ちゃん!?
反射的にカッと顔が熱くなり、それを誤魔化す為に大声をあげるアタシ。
「ちゃん付けだぁ!? ふざんけんなよ、お前! そんなの、むぐぐっっっ!」
しかし再び母さんに口をふさがれる。
いや、今度は羽交い絞めもオプションでついてきて、身動きがとれない。
「ええ、そうしましょう。私も君のような子に名前で呼ばれると若返るしね?」
「お母さ、涼香さんはとてもお若いですよ?」
「ふふ。ありがとう」
おい、やめろ! アタシの前で母さんを逆ナンするなぁ!
「じゃあ、今日は本当にこのあたりで失礼しますね」
時計を見ればとっくに営業時間は過ぎていた。人生で最も長く感じた30分だ。
「ええ。またいらしてね?」
「はい、ぜひに、涼香さん。青葉ちゃんも、ま・た・ね?」
最後は口をふさがれているアタシ向かって投げキッスを残していった。
くそっ、面白がりやがって。サマになってるのがますます腹立つ!
「むぐー、むぐーっ!?」
「ふふ、じゃあね」
ようやく宮城は店から出ていき、母さんの羽交い絞めの解放された。
「母さん!」
アタシは母さんを見るが、逆に母さんは涼しい顔で見返してくる。
「アンタ、なんであの子の事隠してたのさ?」
「う」
やっぱりそう来るか。
「私が入院している時だって、ひと言もなかったね?」
「……それは、その。転入してきたの、つい最近の事だし」
言い訳のように言ってるけど、自分゛ても黙っていた理由にはなってない。
「アンタ、惚れたのかい?」
「……そういうわけじゃない。けど、別に、嫌いじゃない」
ダメだ、完全に見透かされてる。
自分でもヘタなごまかしだってわかるくらい、声が小さくなった。
「あんな露骨に向こうからアピってきてるんだから、逃す手はないよ!?」
「う、まぁ、その。わかってるけどさ」
最初はアタシもそう思ってたけどね。
母さん、アイツはそういうのじゃないんだ。
つかまったのはアタシなんだよ!
しかし、そんな事を言えるはずもない。結局、アタシは言葉たらずにもごもごとするだけだった。
母さんが冗談と受け取るのを前提で、からかいがてら本気で言ってやがるんだ。
なんつー悪質な変態だ。
「宮城君。冗談でも若い男の子が女相手にそう言う事を言うと誤解されるからね。気をつけなさい」
立場上、母さんが注意してくれた。
良かった、母さんまで悪ノリに付き合い始めたら、アタシには逆らう手立てがない。
ここで宮城が大人しくひっこめば万歳だ。さあ帰れ、とっとと帰れ!
「冗談ではなくボクはずっと夏木さんと仲良くなりたいと思ってます。よければまたお邪魔してもいいですか?」
また余計な事を!
「宮城、おまえっ、むぐっ」
アタシがその口を物理的にふさごうとしたら、逆にアタシの口がふさがれた。
「もちろんよ! いつでもいらっしゃいな!」
「じゃあ、ボクは今日はこれで失礼します。お母さん……とお呼びしても?」
アタシは母さんの拘束からもがき抜けて叫ぶ。
「いいわけあるか! 誰がお前の母さんだ!」
「じゃあなんて呼べばいいの? 夏木さんは夏木さんでしょ?」
「そりゃあ、お前……その……」
フツーにおばさんって呼べよ! と言いかけたが、宮城のお世辞漬けでご機嫌になっている母さんを、あえて不機嫌にさせる勇気はアタシにはない。
などと考えて、口ごもっていたら。
「じゃあ、夏木さんを青葉さんって呼んで、お母さんを夏木さんって呼ぶ?」
「バカ、やめろ。アタシがこんがらがる」
何をナイスアイデアみたいな顔で言うのか、コイツは。
いや、その、な? ……名前で呼んでくれるのは別にいいけどさ。
さすがに母さんの前では恥ずかしい。そういうのはもっとムードある時に言ってくれるとかないか?
アタシはそんな思いを込めて宮城を見る。
「えー。夏木さんわがまますぎない?」
「なんでアシタが悪いふうになるんだよ」
やっぱり伝わらないよな! くんでくれよ、アタシのこの女心を!
宮城にとっちゃ理不尽だろう怒りをふつふつと心の中で育てていると、唐突に宮城の視線がアタシから母さんに向けられた。
「あ、なら……ええと、お母さんのお名前をうかがっても?」
「お? 私かい? 私は夏木涼香(スズカ)ってのよ」
母さんも不意をつかれたのか、いつもの肝っ玉口調で答えているが、二人とも気づいていない。
「じゃあ夏木さんの事は青葉ちゃん、お母さんの事は涼香さんって呼べばいいんじゃない?」
青葉ちゃん!?
反射的にカッと顔が熱くなり、それを誤魔化す為に大声をあげるアタシ。
「ちゃん付けだぁ!? ふざんけんなよ、お前! そんなの、むぐぐっっっ!」
しかし再び母さんに口をふさがれる。
いや、今度は羽交い絞めもオプションでついてきて、身動きがとれない。
「ええ、そうしましょう。私も君のような子に名前で呼ばれると若返るしね?」
「お母さ、涼香さんはとてもお若いですよ?」
「ふふ。ありがとう」
おい、やめろ! アタシの前で母さんを逆ナンするなぁ!
「じゃあ、今日は本当にこのあたりで失礼しますね」
時計を見ればとっくに営業時間は過ぎていた。人生で最も長く感じた30分だ。
「ええ。またいらしてね?」
「はい、ぜひに、涼香さん。青葉ちゃんも、ま・た・ね?」
最後は口をふさがれているアタシ向かって投げキッスを残していった。
くそっ、面白がりやがって。サマになってるのがますます腹立つ!
「むぐー、むぐーっ!?」
「ふふ、じゃあね」
ようやく宮城は店から出ていき、母さんの羽交い絞めの解放された。
「母さん!」
アタシは母さんを見るが、逆に母さんは涼しい顔で見返してくる。
「アンタ、なんであの子の事隠してたのさ?」
「う」
やっぱりそう来るか。
「私が入院している時だって、ひと言もなかったね?」
「……それは、その。転入してきたの、つい最近の事だし」
言い訳のように言ってるけど、自分゛ても黙っていた理由にはなってない。
「アンタ、惚れたのかい?」
「……そういうわけじゃない。けど、別に、嫌いじゃない」
ダメだ、完全に見透かされてる。
自分でもヘタなごまかしだってわかるくらい、声が小さくなった。
「あんな露骨に向こうからアピってきてるんだから、逃す手はないよ!?」
「う、まぁ、その。わかってるけどさ」
最初はアタシもそう思ってたけどね。
母さん、アイツはそういうのじゃないんだ。
つかまったのはアタシなんだよ!
しかし、そんな事を言えるはずもない。結局、アタシは言葉たらずにもごもごとするだけだった。
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