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『GW編・二日目 夏木青葉の隠し事(1)』
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『GW編・二日目 夏木青葉の隠し事(1)』
最後の客が店を出ていき、テーブルを片付けていると母さんが声をかけてくる。
「お疲れ、ありがとさん。今日はもういいよ、なんか作って持っていきな」
「んー」
その日もアタシは忙しい時間帯まで手伝った後、ずいぶんと遅い昼食のサンドイッチを作って自室へ上がった。
それも食べ終えて、ゆっくりしている時にケータイが鳴った。
階下の店にいる母さんからだ。
なんだろうか。また忙しくなったから手伝えって話かとスマホの画面を見てみると。
『緊急事態発生、即帰還セヨ』
……なんか面倒な予感がする。
手伝えっていうならそのまま手伝って、とメールしてくるだろうし、こうしてなんだか遠回しというか、ふざけたセリフ回しの時は総じてロクでもない事が待ってるばずだ。
というわけで私も遠回しに『眠い』と断りの返信をする。
数秒後。
『イケメン襲来、イケメン襲来! アレを見ないともったいないお化けが出るぞ!』
と、メッセージが飛んでくる。
これまでもたまに店にカッコいい男の人が来ると、親子で目の保養だなんだと言って呼ばれていたけども。
「……イヤな予感がする」
えてしてこういう予感はあたるもの。
私はおろしていた髪をポニーテールに結いなおし、ベッドの上に放り出していたエプロンを結びながら――いつもより少しゆるくして――階段を降りていく。
住居から店をつなぐドアを開けて、店内に顔を出し母さんに声をかける。
「……母さん? マジで?」
「ほらほらアレアレ。奥のボックス席でこっちに背中向けて座ってる若い男がいるだろ? せっかくだから間近で拝んできな。はい、お冷。注文も聞いてきなよ? ついでに連絡先とスリーサイズ、今、彼女が何人いるかもな!」
すでに用意されていたトレーには、お冷とおしぼりが乗っていた。
母さんが指さす先のボックス席には確かに男の後ろ姿が座っている。
そしてその客によく似た髪型、よく似た背格好の男をアタシは知っている。
そうだよ、もう間違いない、アイツだ! 何しにきた!?
遊びに行くのを断ったからか? からかいに来たのか!?
アタシ一人の時ならともかく、母さんの前でアイツと会いたくない。
知り合いだと知られたら、何を言われて何をさせられる事やら。
というわけで、ここは逃げの一手だ。
アイツの事は母さんにまかせよう。
「……アタシはいいよ。母さん、いってきなよ。イケメン好きだろ?」
「親孝行なら店の手伝いだけで十分だ。ほら、はやく行きな!」
「う、うー」
無理やりトレーを押し付けられた。
仕方ない。営業時間の終わりも近いし、とっとと何か口につめこませて面倒なことにならないうちに帰らせよう。
そうしてアタシは宮城の座るテーブルへ向かう。
「お前。何しに来たんだよ?」
「あれ。いらっしゃいませは?」
開幕からケンカ腰のアタシに対して、宮城は首をかしげてそんな事をほざく。
「いらっしゃいしたくない相手なんだよ」
「ええー。ウエイトレスをしてる可愛い夏木さんを見に来たのに。なんでもいう事を聞くって言ってくれた夏木さんが最近行方不明でボク悲しいなぁ?」
ウザい。
あと、なんでも言う事きくっていうのは、その、そういう時だけだろうが!
しかしこのバカはアタシがいらっしゃいませと言うまで粘るだろう。そういう性格だ。
「……いらっしゃいませ」
渋々言ってやる。
「スマイルで」
ほんっとに、コイツは!
「いらっしゃいませ!」
ヤケクソ気味の笑顔を浮かべてアタシはそう言い直した。
最後の客が店を出ていき、テーブルを片付けていると母さんが声をかけてくる。
「お疲れ、ありがとさん。今日はもういいよ、なんか作って持っていきな」
「んー」
その日もアタシは忙しい時間帯まで手伝った後、ずいぶんと遅い昼食のサンドイッチを作って自室へ上がった。
それも食べ終えて、ゆっくりしている時にケータイが鳴った。
階下の店にいる母さんからだ。
なんだろうか。また忙しくなったから手伝えって話かとスマホの画面を見てみると。
『緊急事態発生、即帰還セヨ』
……なんか面倒な予感がする。
手伝えっていうならそのまま手伝って、とメールしてくるだろうし、こうしてなんだか遠回しというか、ふざけたセリフ回しの時は総じてロクでもない事が待ってるばずだ。
というわけで私も遠回しに『眠い』と断りの返信をする。
数秒後。
『イケメン襲来、イケメン襲来! アレを見ないともったいないお化けが出るぞ!』
と、メッセージが飛んでくる。
これまでもたまに店にカッコいい男の人が来ると、親子で目の保養だなんだと言って呼ばれていたけども。
「……イヤな予感がする」
えてしてこういう予感はあたるもの。
私はおろしていた髪をポニーテールに結いなおし、ベッドの上に放り出していたエプロンを結びながら――いつもより少しゆるくして――階段を降りていく。
住居から店をつなぐドアを開けて、店内に顔を出し母さんに声をかける。
「……母さん? マジで?」
「ほらほらアレアレ。奥のボックス席でこっちに背中向けて座ってる若い男がいるだろ? せっかくだから間近で拝んできな。はい、お冷。注文も聞いてきなよ? ついでに連絡先とスリーサイズ、今、彼女が何人いるかもな!」
すでに用意されていたトレーには、お冷とおしぼりが乗っていた。
母さんが指さす先のボックス席には確かに男の後ろ姿が座っている。
そしてその客によく似た髪型、よく似た背格好の男をアタシは知っている。
そうだよ、もう間違いない、アイツだ! 何しにきた!?
遊びに行くのを断ったからか? からかいに来たのか!?
アタシ一人の時ならともかく、母さんの前でアイツと会いたくない。
知り合いだと知られたら、何を言われて何をさせられる事やら。
というわけで、ここは逃げの一手だ。
アイツの事は母さんにまかせよう。
「……アタシはいいよ。母さん、いってきなよ。イケメン好きだろ?」
「親孝行なら店の手伝いだけで十分だ。ほら、はやく行きな!」
「う、うー」
無理やりトレーを押し付けられた。
仕方ない。営業時間の終わりも近いし、とっとと何か口につめこませて面倒なことにならないうちに帰らせよう。
そうしてアタシは宮城の座るテーブルへ向かう。
「お前。何しに来たんだよ?」
「あれ。いらっしゃいませは?」
開幕からケンカ腰のアタシに対して、宮城は首をかしげてそんな事をほざく。
「いらっしゃいしたくない相手なんだよ」
「ええー。ウエイトレスをしてる可愛い夏木さんを見に来たのに。なんでもいう事を聞くって言ってくれた夏木さんが最近行方不明でボク悲しいなぁ?」
ウザい。
あと、なんでも言う事きくっていうのは、その、そういう時だけだろうが!
しかしこのバカはアタシがいらっしゃいませと言うまで粘るだろう。そういう性格だ。
「……いらっしゃいませ」
渋々言ってやる。
「スマイルで」
ほんっとに、コイツは!
「いらっしゃいませ!」
ヤケクソ気味の笑顔を浮かべてアタシはそう言い直した。
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