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『GW編・初日 かつての闘技場は様変わりしていた(3)』
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とぼとぼと力なく去っていく小さな修羅の背中を黙って見送るオレ。
一期一会となるか、再会となるか、これもまた縁次第。
少なくともこの出会いを感謝していたところ。
「……君も学生でしょう?」
「おっと、ボクもですか?」
被害が延焼してきた。
「男性の行動を制限するつもりはありませんが、こういった盛り場には悪い娘たちが集まります」
「あ、はい」
「ほどほどにして、暗くならないうちに帰りなさいね。最近は駅付近に不審人物がうろついているようですから」
「はい。ありがとうございます」
それだけを言い残し、白髪の先生は店内の別の場所へと見回りに行ってしまった。
なるほど。
古い考えだとゲームセンターは不良のたまり場か。
そんな場所に若い男が一人でウロウロしていると、悪い娘にからまれて危ないぞ、と。
うーん、それはそれで面白そうだが、ヤンキー娘枠は真っ先に確保しているし遠慮しよう。
あと不審人物もウロウロしているらしいが、お色気要素がないトラブルはご遠慮したいな。
オレはその後、しばらくパズルゲームで対戦そのものを楽しんだ。
最初は敗戦続きだったものの。
「あれ、男の子じゃない?」
「うわ、イケメンじゃん」
などと、ヒソヒソと周囲からささやかれるにしたがって、不思議と勝率が上がっていった。
いぶかしげに思っていたが、なるほど、唐突に納得した。
姫プレイ、改め、この世界では皇子プレイとでも呼ぶべきか。
接待されている。
オレは今、明らかに接待されている。
対戦相手に勝ちを譲られるなど、不快、侮辱、失望の極みだ。
だがそれはそれとして、女の子にそこまで気を使ってもらえるのが心地いい。
そりゃ前世でもオタサーに姫がいなくならないわけだ。
しかも露骨に手抜きというわけでもない。
絶妙に手加減されており、しかも、わざと負けていると思われないように勝ちを譲られている。
それがどういう意味かおわかりだろうか?
天と地ほどの実力差があるという事。
勝ってるけど、勝ってない。
くやしい、でも!
などと、空虚な勝利と皇子プレイの快感のはざまで葛藤していると。
「声かけてみたら?」
「無理無理。さすがに相手されないのわかってて声かけるのは怒〇領蜂(*1ド〇ンパチ)だわ」
「死ぬが良い」
「死にとうない」
ナンパをしかけてくるかどうかあちらこちらでこんな会話が聞こえてくる。
イケメンすぎるというのも問題で、遠巻きにヒソヒソされつつも、今の所、声をかけてくるリアル対戦者はいない。
むーん。そろそろ頃合いか。
本来であれば修羅たちがしのぎを削る場で、こうして接待され続けるというのも申し訳ない。
オレはプレイを終えると立ち上がる。
そうして筐体の近くで腕を組んで観戦していた、おそらくは先ほどまでの対戦者たちに軽く頭を下げつつ、最後にイケメクンスマイルを贈っておく。
彼女たちも慌てたように会釈を返してくれつつ、その頬を赤く染めていた。
優しい世界に乾杯。
ゲームセンターを出た、一つ息をつく。
「ふー……まぁ色々と様変わりはしていたけども」
なんだかんだで、なかなかに楽しい一日だった。
こうしてゴールデンウィーク初日が終わっていった。
「明日は夏木さんのとこに顔出しに行こうかなー」
きっと。
邪険にされるに違いないが、それがまた楽しみだ。
*1 怒首〇蜂(ドド〇パチ)
開発者がクリアを想定していないのでは思われる難易度のシューティングゲーム。
とぼとぼと力なく去っていく小さな修羅の背中を黙って見送るオレ。
一期一会となるか、再会となるか、これもまた縁次第。
少なくともこの出会いを感謝していたところ。
「……君も学生でしょう?」
「おっと、ボクもですか?」
被害が延焼してきた。
「男性の行動を制限するつもりはありませんが、こういった盛り場には悪い娘たちが集まります」
「あ、はい」
「ほどほどにして、暗くならないうちに帰りなさいね。最近は駅付近に不審人物がうろついているようですから」
「はい。ありがとうございます」
それだけを言い残し、白髪の先生は店内の別の場所へと見回りに行ってしまった。
なるほど。
古い考えだとゲームセンターは不良のたまり場か。
そんな場所に若い男が一人でウロウロしていると、悪い娘にからまれて危ないぞ、と。
うーん、それはそれで面白そうだが、ヤンキー娘枠は真っ先に確保しているし遠慮しよう。
あと不審人物もウロウロしているらしいが、お色気要素がないトラブルはご遠慮したいな。
オレはその後、しばらくパズルゲームで対戦そのものを楽しんだ。
最初は敗戦続きだったものの。
「あれ、男の子じゃない?」
「うわ、イケメンじゃん」
などと、ヒソヒソと周囲からささやかれるにしたがって、不思議と勝率が上がっていった。
いぶかしげに思っていたが、なるほど、唐突に納得した。
姫プレイ、改め、この世界では皇子プレイとでも呼ぶべきか。
接待されている。
オレは今、明らかに接待されている。
対戦相手に勝ちを譲られるなど、不快、侮辱、失望の極みだ。
だがそれはそれとして、女の子にそこまで気を使ってもらえるのが心地いい。
そりゃ前世でもオタサーに姫がいなくならないわけだ。
しかも露骨に手抜きというわけでもない。
絶妙に手加減されており、しかも、わざと負けていると思われないように勝ちを譲られている。
それがどういう意味かおわかりだろうか?
天と地ほどの実力差があるという事。
勝ってるけど、勝ってない。
くやしい、でも!
などと、空虚な勝利と皇子プレイの快感のはざまで葛藤していると。
「声かけてみたら?」
「無理無理。さすがに相手されないのわかってて声かけるのは怒〇領蜂(*1ド〇ンパチ)だわ」
「死ぬが良い」
「死にとうない」
ナンパをしかけてくるかどうかあちらこちらでこんな会話が聞こえてくる。
イケメンすぎるというのも問題で、遠巻きにヒソヒソされつつも、今の所、声をかけてくるリアル対戦者はいない。
むーん。そろそろ頃合いか。
本来であれば修羅たちがしのぎを削る場で、こうして接待され続けるというのも申し訳ない。
オレはプレイを終えると立ち上がる。
そうして筐体の近くで腕を組んで観戦していた、おそらくは先ほどまでの対戦者たちに軽く頭を下げつつ、最後にイケメクンスマイルを贈っておく。
彼女たちも慌てたように会釈を返してくれつつ、その頬を赤く染めていた。
優しい世界に乾杯。
ゲームセンターを出た、一つ息をつく。
「ふー……まぁ色々と様変わりはしていたけども」
なんだかんだで、なかなかに楽しい一日だった。
こうしてゴールデンウィーク初日が終わっていった。
「明日は夏木さんのとこに顔出しに行こうかなー」
きっと。
邪険にされるに違いないが、それがまた楽しみだ。
*1 怒首〇蜂(ドド〇パチ)
開発者がクリアを想定していないのでは思われる難易度のシューティングゲーム。
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