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『クラスに転入してきた少年は天使だった(冬原interval07)』
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『クラスに転入してきた少年は天使だった(冬原interval07)』
翌日。
私はディナーの店の予約も、部屋の掃除も、毛の処理も完璧に整えた状態で一番いいスーツを着ていった。
校外デートともなればやはりスーツでビシっと決めて、学園の小娘たちとは違う大人の魅力で昨日の失点を取り返すしかない。
昨日の別れ際、宮城が「すみません、女性に恥をかかせるような事を……」と詫びてくれた、あの優しさが今も胸に突き刺さって痛む。
放課後、待ち合わせている進路指導室へスーツの乱れや汚れがないかを確認しながら向かった。
もし来ていなかったらどうしよう、いくら待っても来なかったらどうしよう、という不安もあった。
確かに今回の話は宮城からのものだが、昨日のあの醜態で呆れられたかもしれない。
いや、確実に呆れたはずだ。あんなに懐いてくれていたがそれも無に帰しただろう。
だが一縷の望みを持って進路指導室に向かっているのは、今朝のホームルームでの宮城がいつともと同じ様子だったからだ。
そんな不安で歩みを遅くしつつ、私が進路指導室に到着すると、すでに宮城は私を待っていた。
天使か。
その天使が私を見て「え?」と漏らした。
昨日、あれだけ恥をかいてよく来られましたね的な疑問符ではないと信じたい。
ふむ、どうやら私をスーツ姿に驚いていたようだ。
ふふん。ギャップ萌えを狙ったが正解だったな。
というか、今日の予定を伝えていなかったので校外に出るとも思っていなかったようだ。
当然、宮城は私がジャージで来ると思っていた所に、スーツ姿の私が出てきて驚いた、と。
つまり宮城は昨日の続きを校内で、もしかすれば進路指導室でするつもりだったのだろうか。
「お前。まさか神聖な学び舎で本気であんな事をするつもりだったのか?」
「……」
宮城は無言ながらも、肯定するように私を見つめていた。
「……本気だったのか。い、いや、まぁそれくらい切羽詰まっている苦しみがあるんだな、すまん」
捨てがたい。
確かに捨てがたいシチュエーションなんだが、代わりに色々なものを捨てるハメになる。
昨日は押し倒されたまま間近で熱い瞳に見つめられ、もう何もかも捨てて流れにまかせる覚悟をしたが冷静に考えるととんでもない話だからな。
禁断の関係は秘するもの。
宮城が卒業まで誰にも知られずにこの関係を続けられれば、その後の妊活も頼みやすくなるのだから。
きっと宮城なら承諾してくれる。
だってこんなに天使なんだから!
そんな心中を隠しつつ、私は車のキーを見せる。
「今日は外に出るからな」
「どこへですか?」
本心を言えばこのままラブホ一直線だが、ガッツきすぎる年上の女など見苦しいだろうし、そもそも宮城は制服だ。
入店拒否くらいならまだしも、ホテルの者に通報でもされればジ・エンドだ。
「その、いわゆる”姉”としてお前の面倒を見ると約束したわけだし……デートのエスコートくらいはするさ。今夜は私がうまいものを食わせてやる。予約も入れてあるから、今から行くぞ」
「……え?」
しかし宮城が見せたのはとまどい。
私は何か間違ったのか? いや、デートまでしたくないという事だろうか?
体だけの関係を求めているだけで、こんな年増と並んで歩いているところを見られたくないというか、そんな拒絶だろうか?
ぐるぐると私の頭の中で巡る不安と戸惑い。
だが宮城はそれを一瞬で打ち消した。
いつ誰が通るかもわからないこんな廊下で、抱き着いてきたのだ!
あ、いい匂い、それに腕も胸板も固くて……じゃない!
私は宮城をひきはがし、校内では絶対にこんな事をしないように厳重に注意した。
その後、職員用駐車場で待ち合わせ、私は校内を出てようやく安堵した。
そこから、車でそこそこ時間をかけた場所にある焼き肉屋へ向かう。
翌日。
私はディナーの店の予約も、部屋の掃除も、毛の処理も完璧に整えた状態で一番いいスーツを着ていった。
校外デートともなればやはりスーツでビシっと決めて、学園の小娘たちとは違う大人の魅力で昨日の失点を取り返すしかない。
昨日の別れ際、宮城が「すみません、女性に恥をかかせるような事を……」と詫びてくれた、あの優しさが今も胸に突き刺さって痛む。
放課後、待ち合わせている進路指導室へスーツの乱れや汚れがないかを確認しながら向かった。
もし来ていなかったらどうしよう、いくら待っても来なかったらどうしよう、という不安もあった。
確かに今回の話は宮城からのものだが、昨日のあの醜態で呆れられたかもしれない。
いや、確実に呆れたはずだ。あんなに懐いてくれていたがそれも無に帰しただろう。
だが一縷の望みを持って進路指導室に向かっているのは、今朝のホームルームでの宮城がいつともと同じ様子だったからだ。
そんな不安で歩みを遅くしつつ、私が進路指導室に到着すると、すでに宮城は私を待っていた。
天使か。
その天使が私を見て「え?」と漏らした。
昨日、あれだけ恥をかいてよく来られましたね的な疑問符ではないと信じたい。
ふむ、どうやら私をスーツ姿に驚いていたようだ。
ふふん。ギャップ萌えを狙ったが正解だったな。
というか、今日の予定を伝えていなかったので校外に出るとも思っていなかったようだ。
当然、宮城は私がジャージで来ると思っていた所に、スーツ姿の私が出てきて驚いた、と。
つまり宮城は昨日の続きを校内で、もしかすれば進路指導室でするつもりだったのだろうか。
「お前。まさか神聖な学び舎で本気であんな事をするつもりだったのか?」
「……」
宮城は無言ながらも、肯定するように私を見つめていた。
「……本気だったのか。い、いや、まぁそれくらい切羽詰まっている苦しみがあるんだな、すまん」
捨てがたい。
確かに捨てがたいシチュエーションなんだが、代わりに色々なものを捨てるハメになる。
昨日は押し倒されたまま間近で熱い瞳に見つめられ、もう何もかも捨てて流れにまかせる覚悟をしたが冷静に考えるととんでもない話だからな。
禁断の関係は秘するもの。
宮城が卒業まで誰にも知られずにこの関係を続けられれば、その後の妊活も頼みやすくなるのだから。
きっと宮城なら承諾してくれる。
だってこんなに天使なんだから!
そんな心中を隠しつつ、私は車のキーを見せる。
「今日は外に出るからな」
「どこへですか?」
本心を言えばこのままラブホ一直線だが、ガッツきすぎる年上の女など見苦しいだろうし、そもそも宮城は制服だ。
入店拒否くらいならまだしも、ホテルの者に通報でもされればジ・エンドだ。
「その、いわゆる”姉”としてお前の面倒を見ると約束したわけだし……デートのエスコートくらいはするさ。今夜は私がうまいものを食わせてやる。予約も入れてあるから、今から行くぞ」
「……え?」
しかし宮城が見せたのはとまどい。
私は何か間違ったのか? いや、デートまでしたくないという事だろうか?
体だけの関係を求めているだけで、こんな年増と並んで歩いているところを見られたくないというか、そんな拒絶だろうか?
ぐるぐると私の頭の中で巡る不安と戸惑い。
だが宮城はそれを一瞬で打ち消した。
いつ誰が通るかもわからないこんな廊下で、抱き着いてきたのだ!
あ、いい匂い、それに腕も胸板も固くて……じゃない!
私は宮城をひきはがし、校内では絶対にこんな事をしないように厳重に注意した。
その後、職員用駐車場で待ち合わせ、私は校内を出てようやく安堵した。
そこから、車でそこそこ時間をかけた場所にある焼き肉屋へ向かう。
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