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『クラスに転入してきた少年は天使だった(冬原interval05)』

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『クラスに転入してきた少年は天使だった(冬原interval05)』

だが現実であるはずがない。

私は再度、立ち上がり宮城に背を向ける。

からかうな、と。

これが最後の確認だぞ、と。

今ならゴメンナサイで許してやるぞ、と。

しかし宮城も繰り返す。

私が好きだと。

もし。

もし、これが宮城の本心だとしたら?

男の方から、しかも年下の男の子が、教師と教え子という立場の違いの上から告白している。

そもそも男からこんな事を何度も言わせる女など死んだほうがいい。

だが。だがしかし!

ありえない、ありえるはずがない!

私はついに考えることすらできないほどに混乱する。

どうふるまえばいい?

教師として諭す?

年上の女として断る?

それとも……一人の女として受け入れる? 

私だって選べる事なら三つ目だ。

しかし、しかし……!

そうして私が言葉も発することができなくなったのを、無言の拒否だと受け取ったのか宮城がついに泣き出してしまった。

机から崩れ落ち、床にへたり込んでしまった。あわわわ。

「わかっています! ボクみたいな子供なんて相手にされるはずがないって!」

絞り出すような声で宮城か言う。

「い、いや、そんな事はないぞ!」

私はあわてて駆け寄り、全力で否定する。

相手にされないのは私の方なのだ。

それ以上、何かも投げ捨ててさらっていってしまいたくなるような事を言うのはやめてくれ、この天使が!

何かないか。欲求不満を解消する方法が何か。

私の時はどうだったか……ああ、そうだ。

空手だ。ひたすらに正拳突きをしまくったものだ。

正直、あまり効果はなかったが、同じく色々とため込んでいた先輩と傷のなめあいにより幾分かはマシになった記憶がある。

宮城にもスポーツか何かで発散をアドバイスをする。

しかし宮城は立ち上がり、つらそうな顔をでこう言った。

「み、宮城?」
「わかりました……誰か別の人を探します」
「別の人ぉ!?」
「クラスメートにはとても言えない悩みですし……ネットの掲示板とかでいい人を探せるってテレビでやってましたから」

姉活か!?

ダ、ダメだ、ダメだ!

あんな掃きだめにこの天使を堕天させる事など許されんぞ!

しかし宮城は悲しい顔のまま、あきらめたような声で。

「ボクには優しいお姉さんが必要なんです! 先生にはこの辛さも苦しみもわかってもらえないみたいですし……」

ぐぐ。

「わ、わかった、待て!」

なんでもいいから引き留めなければと、とっさに言葉をかける。

それを宮城は。

「なら、ボクのお姉さんになってもらえますか?」

私が姉活の相手になると了承したととったのだ。

……そりゃあさ!

なってやりたいよ!?

むしろ、姉にしてくださいってお願いするのはコッチの話なんだけどさ!

「私が宮城のお姉さん……いや、ダメだ! そうではなくて……やっぱり山崎先生に明日、相談しよう!」

それが一番、これがベストだ。

このままではきっと私にも宮城にも、まったくもってよろしくない展開になる。

「誰にも言わないと約束してくださったでしょう?」
「確かにそう言ったが……」

ぐ、確かに。

まさかその約束をした時は、山崎すらも範疇外とは想定もしていなかったが。

「やっぱり先生にこんな事、相談するんじゃなかった」

結局、まともな解決案を出せない私に、ポツリと宮城がそう漏らした。

後頭部をブン殴られたようだ。

試合の時に先輩の回し蹴りを食らったときより視界がグラつく。

そうして意識がもうろうしていた私は。

「わ、わ、わかった!」

と、本心が漏れた。

「ボクの姉活の相手に……お姉さんになってくれるんですか?」

いいのか、コレ本当にいいのか!?

明るみにでたら解雇は当然として……わいせつ行為か? いや未成年略取? とにかく確実にお縄になる。

……だけどさあ!!

こんなチャンス、もう絶対にないんだよ!?

おっさん相手に金払って媚びまくって挙句にスルーされまくる姉活生活で私の心はすっかりすり減ったんだよ!

そこにこんな天使が降臨して、私に愛を語ってるんだぞ!?

どんな女だって耐えられないだろ!? むしろ耐えてみろよ!!

私は今の人生を捨てる覚悟を完了した。

一時の感情に流され、しかし流されるだけの価値あるものが得られる可能性を信じてだ。

というのも、宮城の欲求をかなえる、イコールそれはベッドを共にするという事。

当然、避妊はするが、もしこの関係が宮城が成人するほど長く続くものになったら、妊活にも協力してもらえるかもしれない。

無論、交際や認知を求める事はしないし、妊活の成果が出ればまとまったお気持ちを包むつもりでもいる。

宮城だって長く続いた相手であれば多少の情は覚えてくれるだろうという、そんな浅はかで独りよがりな計算を心の中でする私は教師失格だと思いながら、宮城に短く返事をする。

「う……うむ」

罪悪感もともない、どうしたって歯切れが悪くなるのは仕方ないだろう。

だが私は今、ハッキリと自分の意思で宮城が求める関係を認めたのだ。

私とて男に飢える身だが、ガッツクような真似は決してしない。

青く若い性を持て余している宮城を気遣い、この子のペースに合わせて付き合っていくつもりだ。

それがせめてもの大人としての意地。

だというのに。

「先生!」

私はその場ですぐさま押し倒された。
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