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『クラスに転入してきた少年は天使だった(冬原interval04)』
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『クラスに転入してきた少年は天使だった(冬原interval04)』
などと浮かれていたのは、せいぜい十分か十五分くらいなものだろう。
宮城の相談というのは、まったくもって予想外だったのだ。
あの美少年フェイスで「人と比べて性欲が強いみたいなんです。それでどう発散したらいかと……」などと言われても見ろ。
ふむふむ、などと反射的にうなずいていた私だったが、一瞬、宮城が何を言っているのか理解できなかった。
適当に受け答えしつつ、頭の中で宮城の言動を整理する。
私は立ち上がり、宮城に動揺した表情を見られないように背中を向ける。
そしていかにも余裕のある大人のように、大きくため息をつきながら。
「先生をからかうものじゃないぞ?」
と言った。
しかし自分で言っておきながら、宮城が教師をからかうという事をするか? と疑問にも思う。
そもそも彼に得がない。
いや、面白がっているだけとか、どこかにカメラが仕掛けて合って私を陥れる為? とか色々な考えがよぎったが、そういう悪辣な男でもないだろう。
つまり宮城が何を考えているか、まったくわけがわからん状態だ。
宮城はなおも私に詰め寄った。
「こんな事、冗談で言えません。本当に性欲をもてあまして困っているんです」
「むむ、むむむ」
性欲性欲と連呼しないでくれ。私だって毎日もてあましているんだぞ。
一人暮らしの女のベッド下の小物入れなんてそれを形にしたようなものだ。
実際、私のコレクションもなかなかのラインナップを誇って……いや、それはどうでもいい。
やはり今回の相談は私には荷が重い。
せっかく懐いてくれている男子生徒を無碍にはしたくないが、私だって我慢の限界がある。
せめて愛想の悪い普通の男子生徒であれば間違いなど起こらないが、こんなに不用心に寄ってくる美少年では私が暴走する可能性もある。
すでにちょっとくらい、どさくさに紛れて触ってもいいんじゃないかとさえ思っているのだから。
私は教師として気合を入れなおす。
とにかくこの場に長居してはいけない。
そして私以外に責任を振る事にした。
こういう時こそ山崎のジイ様だ。
「そういう話であれば、やはり養護教諭の山崎先生の方が適任じゃないか? 私は女だし、その、具体的にどういたせばいいのかという指導はやはり同性でないと……」
ジイ様はとっくに枯れているだろうが……宮城よ、あとはソロ活動の先輩に聞いてくれ。
「いえ。そういう……自分でどうこうというのは色々と試したんですけど」
「試したのか!? あ、いや、スマン、そうだな。宮城も男とは言え、健康な年頃の若者だしな、うんうん、自然な事だぞ!」
つい本心が漏れてあわてて取り繕った。
自慰をしない女はいない。それは男だって同じだ。
そして容姿と性的欲求は関係ない。
いくら宮城の外見が整っているからといって、それは特別ではなく個性の話だ。
下手に騒いで宮城の心に傷でも残したらどうするつもりだ、このバカタレ教師め。
その後も宮城の話は続く。
転入してから性欲を持て余すようになったという。
ふーむ。
であれば生活環境の違いからくるストレスなどからのホルモンバランスの乱れなどか?
精神的なケアとなるとますますもってジイ様の出番なんだが、ここでまた遠ざけるような事を言うのも忍びない。
こういう時は頼れる大人の仮面をかぶって、ひたすら聞き手に回る。これが無難だ。
だと言うのに。
宮城がさらにとんでもない事を言い出した。
私が好きだと。
私に一目ぼれしたと。
どこまでも引き込まれるような美しい瞳で私の心を貫きながら、そんなことを言ったのだ。
頭が真っ白になった。
……夢か。
きっと、今、現実の私は職員室でどーでもいいような書類にハンコを押したり、くっだらない計算をしていたりと残業中に違いない。
疲れがたまって居眠りしているんだろう。
それなら、こんないい夢ぐらい見てもバチはあたらんか。
「先生?」
そんなうつろだった私の意識を宮城が引き戻す。
……ん?
なんだ。
私は何をしていたんだったか。
宮城から相談があると言われて……ええと、なんだったか。
そうだ。課題が難しいとかそんな話だったような気がするぞ。
「もちろん。それでなにかの話の途中だったな。おお、そうだ、宿題が難しいという話だったな?」
「ボクが先生に一目ぼれしたせいで、性欲をもてあましているという話の途中でした」
白昼夢ではなかった。
などと浮かれていたのは、せいぜい十分か十五分くらいなものだろう。
宮城の相談というのは、まったくもって予想外だったのだ。
あの美少年フェイスで「人と比べて性欲が強いみたいなんです。それでどう発散したらいかと……」などと言われても見ろ。
ふむふむ、などと反射的にうなずいていた私だったが、一瞬、宮城が何を言っているのか理解できなかった。
適当に受け答えしつつ、頭の中で宮城の言動を整理する。
私は立ち上がり、宮城に動揺した表情を見られないように背中を向ける。
そしていかにも余裕のある大人のように、大きくため息をつきながら。
「先生をからかうものじゃないぞ?」
と言った。
しかし自分で言っておきながら、宮城が教師をからかうという事をするか? と疑問にも思う。
そもそも彼に得がない。
いや、面白がっているだけとか、どこかにカメラが仕掛けて合って私を陥れる為? とか色々な考えがよぎったが、そういう悪辣な男でもないだろう。
つまり宮城が何を考えているか、まったくわけがわからん状態だ。
宮城はなおも私に詰め寄った。
「こんな事、冗談で言えません。本当に性欲をもてあまして困っているんです」
「むむ、むむむ」
性欲性欲と連呼しないでくれ。私だって毎日もてあましているんだぞ。
一人暮らしの女のベッド下の小物入れなんてそれを形にしたようなものだ。
実際、私のコレクションもなかなかのラインナップを誇って……いや、それはどうでもいい。
やはり今回の相談は私には荷が重い。
せっかく懐いてくれている男子生徒を無碍にはしたくないが、私だって我慢の限界がある。
せめて愛想の悪い普通の男子生徒であれば間違いなど起こらないが、こんなに不用心に寄ってくる美少年では私が暴走する可能性もある。
すでにちょっとくらい、どさくさに紛れて触ってもいいんじゃないかとさえ思っているのだから。
私は教師として気合を入れなおす。
とにかくこの場に長居してはいけない。
そして私以外に責任を振る事にした。
こういう時こそ山崎のジイ様だ。
「そういう話であれば、やはり養護教諭の山崎先生の方が適任じゃないか? 私は女だし、その、具体的にどういたせばいいのかという指導はやはり同性でないと……」
ジイ様はとっくに枯れているだろうが……宮城よ、あとはソロ活動の先輩に聞いてくれ。
「いえ。そういう……自分でどうこうというのは色々と試したんですけど」
「試したのか!? あ、いや、スマン、そうだな。宮城も男とは言え、健康な年頃の若者だしな、うんうん、自然な事だぞ!」
つい本心が漏れてあわてて取り繕った。
自慰をしない女はいない。それは男だって同じだ。
そして容姿と性的欲求は関係ない。
いくら宮城の外見が整っているからといって、それは特別ではなく個性の話だ。
下手に騒いで宮城の心に傷でも残したらどうするつもりだ、このバカタレ教師め。
その後も宮城の話は続く。
転入してから性欲を持て余すようになったという。
ふーむ。
であれば生活環境の違いからくるストレスなどからのホルモンバランスの乱れなどか?
精神的なケアとなるとますますもってジイ様の出番なんだが、ここでまた遠ざけるような事を言うのも忍びない。
こういう時は頼れる大人の仮面をかぶって、ひたすら聞き手に回る。これが無難だ。
だと言うのに。
宮城がさらにとんでもない事を言い出した。
私が好きだと。
私に一目ぼれしたと。
どこまでも引き込まれるような美しい瞳で私の心を貫きながら、そんなことを言ったのだ。
頭が真っ白になった。
……夢か。
きっと、今、現実の私は職員室でどーでもいいような書類にハンコを押したり、くっだらない計算をしていたりと残業中に違いない。
疲れがたまって居眠りしているんだろう。
それなら、こんないい夢ぐらい見てもバチはあたらんか。
「先生?」
そんなうつろだった私の意識を宮城が引き戻す。
……ん?
なんだ。
私は何をしていたんだったか。
宮城から相談があると言われて……ええと、なんだったか。
そうだ。課題が難しいとかそんな話だったような気がするぞ。
「もちろん。それでなにかの話の途中だったな。おお、そうだ、宿題が難しいという話だったな?」
「ボクが先生に一目ぼれしたせいで、性欲をもてあましているという話の途中でした」
白昼夢ではなかった。
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