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『冬原、採点される』

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『冬原、採点される』

今、オレが冬原先生に求めたのは、エロい言葉で誘惑しろ、という事だが。

「宮城、今、何と言った?」

まさかそんな事を望まれるとは思ってもいない、そんな顔だ。

「性交渉だなんだと言われて立つと思いますか?」
「た、たつ……? な、なにがだ?」
「ナニがですよ」
「……」

ついに先生がうつむいた。

耳まで真っ赤だ。

姉活なんてしているわりに、うぶすぎやないだろうか。

「ちなみに先生」
「なんだ」
「姉活での実績というか、成果は?」
「……言いたくない」
「気になるんですけど。先生ほどの美人なら経験豊富なのかなって」
「……」

うつむきつつも、にらまれた。

「いや、そんな怖い顔をされても」
「ゼロだ」
「え?」
「二十四になってから焦りだしてな? 色々なアプリやサイトを駆使して金も時間も使って。その上で、この二年間で会えた男性はゼロだ」
「……うっそでしょ」

さっきも思ったけど、姉活ハードルが高すぎるぞ。

「アプローチやアポまではとれたが、こちらの条件と折り合わない事ばかりでな」
「ああ、なんだ。そういうビジネス的な不一致のせいですか」
「……妊活目的と伝えた途端、即ブロックされる」
「そんなにイヤなんですかねー」
「普通はイヤだろう。子を作っても男にとっては重石になれどメリットがない」
「そういうものですか」

このあたりがいまだ理解も納得もできないが、オレはしょせん他所の世界から来た人間だ。

冬原先生が今口にした価値観こそ、この世界の標準。

「むしろ宮城がそこまで無頓着なのが怖いぞ。先日も山崎先生との三者での特別授業の時も私の前に座っただろう」
「はい。けれど担任の先生の前に座るのが普通では?」
「普通、男子生徒は男性教諭の近くに座るものだよ」

美人の先生がいるのに、しわしわおじいちゃんの前に座らなければならないのか。

それは拷問ではなかろうか。

「普段からもクラスメートに対して不信感や嫌悪感が見られないし、育った環境によるかものか?」
「どうでしょう。あんまり意識した事はなかったですけど、女性が苦手という事はないですよ。ですが……」

オレは冬原先生の言葉の雰囲気から、女なら誰てもいいのか的な探りを感じたので否定しておく。

「ですが?」
「誰とでも仲良くなりたいわけじゃないですからね」

言外に先生とは仲良くなりたいと視線に込めてジッと見つめる。

「か、からかうな」
「本気だからこんなお話をしてるんですよ?」

さて、話がそれまくったな。

いや先生が意識してそうさせているなら、なおさら軌道修正だ。

「では先生。さっきの続きです。ボクをエッチな言葉で誘ってください」
「う、覚えていたか」

うーん、とうなる先生だが、顔は耳まで真っ赤だ。

キリっとした美人が羞恥に頬を染めるとしいうのは実に美しい。

「わ、私に……」
「はい。私に」

うーん、うーん、とうなりつつ、顔は赤いままだ。

「……生でたくさん出してほしい」
「はい。ナマでたくさん出してほしい、五点です」

悪くないが淡白すぎる。

あと表情が真面目すぎる。

「厳しくないか!? こ、これでも相当に恥ずかしかったんだぞ!?」
「ちなみに百点満点での五点です」

だがオレのジャッジは冷酷極まりない事を追加する。

「厳しすぎて百点の回答が気になる」
「少なくとも、誰のどこに誰の何を、どうして欲しいのか、これは必須です」
「なんで私は説教されているんだろうな? おい、それ、焼けてるぞ」
「いただきます……おいしー! では、リトライです」
「本気か」

その後、おいしいお肉を食べながら、先生には淫らな言葉で誘う練習を続けてもらった。
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