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『幕間:二年二組、立花恵子の場合(中)』
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『幕間:二年二組、立花恵子の場合(中)』
アタシは全力で媚びるように加奈子の名を呼ぶ。
「……あのぉ、加奈子さん?」
『負け犬の遠吠えがなんだったけ?』
くそ、シッカリ覚えてやがる。
アタシはきわめて落ち着いた声を意識してこう言った。
「先日は誠に失礼いたしました。つきましては、宮城君と一緒に写真を撮ってもらえるようにお願いしてもらえませんか?」
『その前に言う事は?』
「……チョーシに乗りすぎました。ごめんなさい」
『ま、いいでしょう。全て許しましょう』
「マジで!? さすが我が心の友! あんなにキレてたのに!」
まさかの恩赦だった。
『確かに二組に男子が二人いて、一組にいないってのはありえないって激怒していた頃が私にもありました』
「加奈子、ブチ切れだったよね」
『煽ったのはアンタでしょ。ま、若かったね、あの頃は』
「一ヶ月も経ってないし」
宮城君がやってきてから加奈子は変わった。
なんというか、憑き物が落ちたというか、年頃の女子にありがちな爆発寸前の欲求不満に振り回される余裕の無さというものがなくなった。
『声をかけたら笑顔で返事をしてくれる天使に毎日会える。それだけで人生がこんなに豊かになるとは思わなかった。今の私は全てを許せるわ。それが人の罪たる原罪であろうとも』
「ごめん。宗教の話は今度にしてもらっていい?」
『ノリわるーい。けど、さすがに他クラスの子と一緒に写真はどうかなー?』
「やっぱダメかな?」
アタシもダメモトで頼んでいるが、宮城君の性格などを聞く限りイケそうな気もする。
ただ問題は。
『頼めば宮城君はオッケーしてくれると思うけど。前例を作っちゃうと他にも頼みに来るだろうからね。そうすると宮城君にも迷惑がかかるから……多分、一組の私刑基準を満たすと思う』
「加奈子が亡き者にされるのはアタシもさすがにしのびないわ」
『命まではとられないけど、宮城君には近寄れなくなるのは今の私にとって死も同然ね』
やはり写真は難しいか。
ならば第二希望だ。
「ピンの写真とかないの?」
邪魔な親友が写っていない写真が欲しい。
『めっちゃあるわよ』
「あるの!? 盗撮!?」
『そんなわけないでしょ。宮城君こっち向いて―、からのハイポーズ、でいつでも撮らせてくれるわ』
「アヴァロン?」
『理想郷はここにあったわね』
その後、何枚かのベストショットを送ってもらい、アタシは狂喜乱舞して加奈子に最上級の感謝を贈った。
だが。
アタシと加奈子の付き合いは長い。
隠している。
コイツは絶対に、最高の一枚を隠している。
アタシは全力で媚びるように加奈子の名を呼ぶ。
「……あのぉ、加奈子さん?」
『負け犬の遠吠えがなんだったけ?』
くそ、シッカリ覚えてやがる。
アタシはきわめて落ち着いた声を意識してこう言った。
「先日は誠に失礼いたしました。つきましては、宮城君と一緒に写真を撮ってもらえるようにお願いしてもらえませんか?」
『その前に言う事は?』
「……チョーシに乗りすぎました。ごめんなさい」
『ま、いいでしょう。全て許しましょう』
「マジで!? さすが我が心の友! あんなにキレてたのに!」
まさかの恩赦だった。
『確かに二組に男子が二人いて、一組にいないってのはありえないって激怒していた頃が私にもありました』
「加奈子、ブチ切れだったよね」
『煽ったのはアンタでしょ。ま、若かったね、あの頃は』
「一ヶ月も経ってないし」
宮城君がやってきてから加奈子は変わった。
なんというか、憑き物が落ちたというか、年頃の女子にありがちな爆発寸前の欲求不満に振り回される余裕の無さというものがなくなった。
『声をかけたら笑顔で返事をしてくれる天使に毎日会える。それだけで人生がこんなに豊かになるとは思わなかった。今の私は全てを許せるわ。それが人の罪たる原罪であろうとも』
「ごめん。宗教の話は今度にしてもらっていい?」
『ノリわるーい。けど、さすがに他クラスの子と一緒に写真はどうかなー?』
「やっぱダメかな?」
アタシもダメモトで頼んでいるが、宮城君の性格などを聞く限りイケそうな気もする。
ただ問題は。
『頼めば宮城君はオッケーしてくれると思うけど。前例を作っちゃうと他にも頼みに来るだろうからね。そうすると宮城君にも迷惑がかかるから……多分、一組の私刑基準を満たすと思う』
「加奈子が亡き者にされるのはアタシもさすがにしのびないわ」
『命まではとられないけど、宮城君には近寄れなくなるのは今の私にとって死も同然ね』
やはり写真は難しいか。
ならば第二希望だ。
「ピンの写真とかないの?」
邪魔な親友が写っていない写真が欲しい。
『めっちゃあるわよ』
「あるの!? 盗撮!?」
『そんなわけないでしょ。宮城君こっち向いて―、からのハイポーズ、でいつでも撮らせてくれるわ』
「アヴァロン?」
『理想郷はここにあったわね』
その後、何枚かのベストショットを送ってもらい、アタシは狂喜乱舞して加奈子に最上級の感謝を贈った。
だが。
アタシと加奈子の付き合いは長い。
隠している。
コイツは絶対に、最高の一枚を隠している。
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