43 / 415
『夏木、ファーストキス』
しおりを挟む
『夏木、ファーストキス』
戦々恐々としながら、夏木さんの言葉を待つオレ。
「で、さっきお前がアタシと本当にする気があるって言ったから……ちょっと安心して、ついあんな事」
……どうやらオレが最後までするつもりがないと残念がったり、不安になったりしていたようだ。
「抱き着いて泣いちゃった、アレ?」
「言うなよ!」
さらにオレには気遣いが足りてない。
「だからさ。お前さえ”その気に”なってくれたなら……今夜、お前のモノにしてくれねぇか」
「その気、ね。確かにそう言ったね、ボク」
セフレの約束をした時、確かにそう言った記憶がある。
さて、どうしたものか。
抱きたいという気持ちはある。
もちろんある。
ただ、処女の不良娘がお口プレイだけうまくなっていくのもまた浪漫だ。
捨て難い。
このまま処女のまま口だけがエロくなっていく夏木さんと。
いつでもなんでもどこでもオレのいう事を約束する夏木さん。
どっちの夏木さんも捨てがたい。
そうやって考え込んでいたのはわずかな時間だったはずだ。
だけども夏木さんは、うつむいたまま肩を震わせ始めた。
「やっぱり……ぐすっ……アタシなんか……」
その嗚咽を聞いらて、かつての地球にいた男で答えを出せないヤツはいないだろう。
「夏木さん」
「……なんだよ? んむっ!?」
驚きに目を大きく見開いた夏木さん。
オレはその唇を奪っていた。
思えばこれがファーストキスだ。
「……み、みやぎ……?」
「じゃ、行こうか」
呆然とする夏木さんの手をとる。
まだ校内だが、かまうものか。
「……どこへ?」
「夏木さんの家。良かったね? 明日は土曜日。学校は休みだよ?」
一瞬、何を言われているのかわからなかった夏木さんだったが。
「……う、うん」
オレの意図を理解した瞬間、今までないほど顔を真っ赤にした。
「じゃあ、連れていってくれるかな?」
「わ、わかった」
とはいえ、オレは夏木さんがどこに住んでいるのかは知らない。
「夏木さんの家、近いて言ってたけど」
「ああ。歩いて二十分くらいだよ。地元もいいとこさ」
「へー、そうなんだ」
夏木さんは少し考えた後に、こんなことも言った。
「……あと、春日井のヤツも地元だよ。家、ワリと近い」
「春日井……ああ、委員長? 友達なんだ?」
「腐れ縁だよ。いつもつっかかってきやがるんだ」
「へー、そうだったんだ」
道理で、クラスの中で夏木さんに直接つっかかっていたわけだ。
まさか知り合い、いや、昔からの友人だったわけだ。
「なんだよ? 別にアイツと仲がいいわけじゃないからな?」
「別に何も聞いてないけど……嫌ってはいないんだ?」
「フン、うるさいな」
何かを誤魔化すようにオレの手をひっぱり始めて、オレと夏木さんは校門を出た。
***
「ここだよ。今はちょっと閉めてるけどな」
「へー、夏木さんの家って喫茶店なんだ?」
案内された先は、個人経営の喫茶店だった。
前世では用事もないし、来た事も無い住宅街。
その中にある、落ち着いたカンジの雰囲気がある店構えだった。
一階が店舗で二階が自宅という作りで、なかなかに大きなお店だ。
閉めているという言葉通り、確かに店内に電気はついていない。
「今はちょっと閉めてる?」
「母さんがケガで入院してんだよ。だからその間だけの臨時休業だ」
「そうなんだ。お母さんの具合、大丈夫?」
地雷を踏んだかと思ったが、夏木さんは軽く手を振る。
「庭でコケて骨折しただけだ。ただ折れたのが大腿骨……ふとももの骨でな。手術は終わったし、すぐに帰ってくるけど、リハビリやなんやで、しばらくは歩けないってよ。だから店もしばらくは休みだな」
「そっか、大変だね。お大事にしてね」
「ありがとよ、けど大した事ねーさ」
そんなやりとりをしながらオレたちはシャッターの降ろされた店側の正面ドアではなく、裏手にある『夏木』と表札のかけられた玄関から入った。
戦々恐々としながら、夏木さんの言葉を待つオレ。
「で、さっきお前がアタシと本当にする気があるって言ったから……ちょっと安心して、ついあんな事」
……どうやらオレが最後までするつもりがないと残念がったり、不安になったりしていたようだ。
「抱き着いて泣いちゃった、アレ?」
「言うなよ!」
さらにオレには気遣いが足りてない。
「だからさ。お前さえ”その気に”なってくれたなら……今夜、お前のモノにしてくれねぇか」
「その気、ね。確かにそう言ったね、ボク」
セフレの約束をした時、確かにそう言った記憶がある。
さて、どうしたものか。
抱きたいという気持ちはある。
もちろんある。
ただ、処女の不良娘がお口プレイだけうまくなっていくのもまた浪漫だ。
捨て難い。
このまま処女のまま口だけがエロくなっていく夏木さんと。
いつでもなんでもどこでもオレのいう事を約束する夏木さん。
どっちの夏木さんも捨てがたい。
そうやって考え込んでいたのはわずかな時間だったはずだ。
だけども夏木さんは、うつむいたまま肩を震わせ始めた。
「やっぱり……ぐすっ……アタシなんか……」
その嗚咽を聞いらて、かつての地球にいた男で答えを出せないヤツはいないだろう。
「夏木さん」
「……なんだよ? んむっ!?」
驚きに目を大きく見開いた夏木さん。
オレはその唇を奪っていた。
思えばこれがファーストキスだ。
「……み、みやぎ……?」
「じゃ、行こうか」
呆然とする夏木さんの手をとる。
まだ校内だが、かまうものか。
「……どこへ?」
「夏木さんの家。良かったね? 明日は土曜日。学校は休みだよ?」
一瞬、何を言われているのかわからなかった夏木さんだったが。
「……う、うん」
オレの意図を理解した瞬間、今までないほど顔を真っ赤にした。
「じゃあ、連れていってくれるかな?」
「わ、わかった」
とはいえ、オレは夏木さんがどこに住んでいるのかは知らない。
「夏木さんの家、近いて言ってたけど」
「ああ。歩いて二十分くらいだよ。地元もいいとこさ」
「へー、そうなんだ」
夏木さんは少し考えた後に、こんなことも言った。
「……あと、春日井のヤツも地元だよ。家、ワリと近い」
「春日井……ああ、委員長? 友達なんだ?」
「腐れ縁だよ。いつもつっかかってきやがるんだ」
「へー、そうだったんだ」
道理で、クラスの中で夏木さんに直接つっかかっていたわけだ。
まさか知り合い、いや、昔からの友人だったわけだ。
「なんだよ? 別にアイツと仲がいいわけじゃないからな?」
「別に何も聞いてないけど……嫌ってはいないんだ?」
「フン、うるさいな」
何かを誤魔化すようにオレの手をひっぱり始めて、オレと夏木さんは校門を出た。
***
「ここだよ。今はちょっと閉めてるけどな」
「へー、夏木さんの家って喫茶店なんだ?」
案内された先は、個人経営の喫茶店だった。
前世では用事もないし、来た事も無い住宅街。
その中にある、落ち着いたカンジの雰囲気がある店構えだった。
一階が店舗で二階が自宅という作りで、なかなかに大きなお店だ。
閉めているという言葉通り、確かに店内に電気はついていない。
「今はちょっと閉めてる?」
「母さんがケガで入院してんだよ。だからその間だけの臨時休業だ」
「そうなんだ。お母さんの具合、大丈夫?」
地雷を踏んだかと思ったが、夏木さんは軽く手を振る。
「庭でコケて骨折しただけだ。ただ折れたのが大腿骨……ふとももの骨でな。手術は終わったし、すぐに帰ってくるけど、リハビリやなんやで、しばらくは歩けないってよ。だから店もしばらくは休みだな」
「そっか、大変だね。お大事にしてね」
「ありがとよ、けど大した事ねーさ」
そんなやりとりをしながらオレたちはシャッターの降ろされた店側の正面ドアではなく、裏手にある『夏木』と表札のかけられた玄関から入った。
21
お気に入りに追加
893
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転生したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております


転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる