【R18】転生先は男女比１：３０の貞操逆転世界～ビッチを夢見る三十路の魂～

『お約束から始まる新生活』

『お約束から始まる新生活』

「……っ！？」

トラックにはねられる！

その衝撃に固く目を閉じていたものの、一向に自分の体が吹き飛ぶことはなかった。

おそるおそる目をあける。

「え？」

……ここは？

いや、ここは！？

ベッドから起き上がり、暗い部屋を見渡す。

置いてある家具も窓の位置も、なじみのあるものだ。

カーテンを開け放つと、そこそこ散らかった部屋があらわになる。

壁にかかった学生服。

机の上に放り出された教科書は高校二年のもの。

……懐かしい部屋だった。

「オレは確か……子供を？　それで神様の声を聞いて？」

子供を事故から助けて、トラックにはねられた。

その際に神様の言葉を聞く。

「……そんなバカな？」

死に際の幻聴と思った

あれは本当に神様の声だった？

「神様なんて……いるはずない、だろ？」

当たり前の事をつい、宙に疑問として投げかけた時。

『テステス。聞こえますか？　私は今、貴方の頭に直接語り掛けています』
「ひいっ？」

トラックにはねられる直前と同じように、耳元でささやかれるような、それでいて別人の声が響いた。

『先輩から話は聞いています。別の地球を救った魂という事で転生を許可された方ですね。ご希望が多数の異性との交友という事だそうで私の担当するこちらの地球にて承りました』
「あの、ええと」

会話についていけないオレは、ただとまどう。

声の主はそんなオレに構う事なく、淡々と説明を続けた。

『貴方からすると男女の性的倫理観が逆転している世界になります。また男女比は１：３０。ずいぶんと勝手も違うでしょうがおいおい慣れてください。ですが、この地球であれば貴方が前世で願ったお望みの生き方ができるかと思いますよ？　加えて先輩からも言われていますし、私の方からもちょっとした加護を差し上げます。それでは私はこれで、よい人生を。あと……そろそろ出ませんと遅刻しますよ？』
「え、ちょっと！？」

しかしその後、何度呼びかけても返事が返ってくる事はなかった。

テレビをつけるといつもなら家を出ている時間だった。

カバンに机の上の教科書をつっこみ制服を着る。

そんなあの頃と寸分かわらない状況で、たった一つだけ変わっていたもの、それは。

「誰だ、このイケメンは……」

寝ぐせの確認をしようと、洗面台に立った時、知らない男がいた。

イケメン、というか、庇護欲マックスな感じの可愛い系美少年。

フツーに自分で自分がまぶしいレベルだ。

あと瞳。

黒目の日本人のはずなのに……妙だ。

黒なんだが角度や光の関係で七色に見えるカンジがする。

ふと見れば、枕元にメガネがおいてあった。

”女の子をその気にさせちゃう魔眼もサービスサービスぅ！　けど刺激が強そうと思ったらこれをかけてね。魔眼殺しだよ？”

魔眼……殺し？

「え？　実は異世界ファンタジー転生？」

軽い口調からして、これは前の世界の神様のサービスか？

オレはひとまず黒縁メガネをかける。

度は入っていないようだ。

鏡を見直すと、イケメンはメガネをかけてもイケメンという事が再確認できた。

あと、気のせいか、七色に光っていた瞳が普通の黒一色になった気がする。

「……早く出ないと！」

学生服を着こみ、かつて住み慣れたアパートを出て学校へ向かった。