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『始まりはお約束』
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『始まりはお約束』
夕方とも夜とも言えない時間。
視界が悪かったのか、それともよそ見だったのか。
信号のない歩道でそれは起きた。
歩道を渡っていた子供が急に立ち止まり硬直した。
なんだ? と思い子供の視線の先をたどれば猛スピードのトラックが迫っている。
子供は動かない。
いや、へたりこんでしまった。
ガードレールを乗り越え、とっさに飛び出すオレ。
ドラマや小説じゃあるまいし、見知らぬ他人のためにそんな事をするヤツがいるはずもないと思っていたんだけどな。
どうやらオレは自分が思うより善人だったらしい。
それともヒーロー願望があったのかな。
「なにやってんだ、クソガキ!」
動き出した自分の体をどこか他人のように思いながら、横断歩道の真ん中で硬直している男の子を蹴り飛ばす。
助けてやったんだ。口の悪いのと蹴り飛ばしちまったのは勘弁してくれな?
「……あーあ、せめて彼女の一人くらい欲しかったなぁ」
思い出すのは過去に一度だけ告白した高校時代の事だ。
相手にはフラれたばかりか、周囲に面白おかしく吹聴され、笑いものにされたつらい過去。
オレに人を見る目がなかったというだけの話かもしれないが、それがトラウマになり、以来どれだけ誰かを好きになっても告白する事はできなかった。
「彼女、欲しかったなぁ……」
最期の言葉にしてはしまらないが、オレにはお似合いだろ。
「うあーん!」
蹴り飛ばされた子供たちが道路のすみで泣いていた。
オレにはこの子と違って悲しむ家族もいない。
親もすでに事故で亡くして、天涯孤独の人生だった。
幸せは少なかったかもしれない、そんな三十五年ほどの人生だったが、どうにかお仕舞のカッコはつけられたさ。
そうやって自分の人生に対して、オレにしちゃそこそこがんばったんじゃないの? と満足げに笑ってやった瞬間。
『ヘイ! アンタが救ったあの子ね。将来、世界を救う科学者になるのよ。ま、その功績をたたえて、最期の望みを叶えてあげるわ。って言っても後輩が担当してる平行世界の地球でだけどね? あとイケメン要素も追加しておくように言っておくから来世では彼女たくさんつくりなー』
「は?」
耳の奥で囁かれるような声がした。
『世界を救ったごほうびでモテモテにしてあげるって言ってるの! これからアンタの行く地球は人口減少で大変だから、がんばって子供たくさん作ってね! もちろん色々とサービスもしておくから!? じゃーねー、おっ手っ柄ちゃーん!』
どこから聞こえてるんだ? と声の主を探そうとして。
「あ」
オレはトラックのヘッドライトの中に飲み込まれた。
夕方とも夜とも言えない時間。
視界が悪かったのか、それともよそ見だったのか。
信号のない歩道でそれは起きた。
歩道を渡っていた子供が急に立ち止まり硬直した。
なんだ? と思い子供の視線の先をたどれば猛スピードのトラックが迫っている。
子供は動かない。
いや、へたりこんでしまった。
ガードレールを乗り越え、とっさに飛び出すオレ。
ドラマや小説じゃあるまいし、見知らぬ他人のためにそんな事をするヤツがいるはずもないと思っていたんだけどな。
どうやらオレは自分が思うより善人だったらしい。
それともヒーロー願望があったのかな。
「なにやってんだ、クソガキ!」
動き出した自分の体をどこか他人のように思いながら、横断歩道の真ん中で硬直している男の子を蹴り飛ばす。
助けてやったんだ。口の悪いのと蹴り飛ばしちまったのは勘弁してくれな?
「……あーあ、せめて彼女の一人くらい欲しかったなぁ」
思い出すのは過去に一度だけ告白した高校時代の事だ。
相手にはフラれたばかりか、周囲に面白おかしく吹聴され、笑いものにされたつらい過去。
オレに人を見る目がなかったというだけの話かもしれないが、それがトラウマになり、以来どれだけ誰かを好きになっても告白する事はできなかった。
「彼女、欲しかったなぁ……」
最期の言葉にしてはしまらないが、オレにはお似合いだろ。
「うあーん!」
蹴り飛ばされた子供たちが道路のすみで泣いていた。
オレにはこの子と違って悲しむ家族もいない。
親もすでに事故で亡くして、天涯孤独の人生だった。
幸せは少なかったかもしれない、そんな三十五年ほどの人生だったが、どうにかお仕舞のカッコはつけられたさ。
そうやって自分の人生に対して、オレにしちゃそこそこがんばったんじゃないの? と満足げに笑ってやった瞬間。
『ヘイ! アンタが救ったあの子ね。将来、世界を救う科学者になるのよ。ま、その功績をたたえて、最期の望みを叶えてあげるわ。って言っても後輩が担当してる平行世界の地球でだけどね? あとイケメン要素も追加しておくように言っておくから来世では彼女たくさんつくりなー』
「は?」
耳の奥で囁かれるような声がした。
『世界を救ったごほうびでモテモテにしてあげるって言ってるの! これからアンタの行く地球は人口減少で大変だから、がんばって子供たくさん作ってね! もちろん色々とサービスもしておくから!? じゃーねー、おっ手っ柄ちゃーん!』
どこから聞こえてるんだ? と声の主を探そうとして。
「あ」
オレはトラックのヘッドライトの中に飲み込まれた。
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