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賑やかな杉野家
三十一、
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「今のが従兄弟さん?」
「うん、大翔」
ケリーが走っていく背を見送って聞いてくる。
「元気な子だね!仲良いんだ」
「元気だとは思うけど別に普通じゃない?」
「口ではこう言ってるけど仲良いわよ!大翔の方が懐き度合いはすごいけど」
大翔がいなくなったことで忍は威嚇をやめて再び俺の膝の上にのった。今度は眠らず膝の上に座っている。すっかりここが定位置のような表情をしているのが面白い。ふわふわとした背中を撫でると柔らかくて気持ちいい。少しも嫌がらず人懐っこい様子を見せる忍になんであんなにも嫌われるのか分からない。
「清飛によく懐いてるね!」
「この子って昔からそうなのよ。なぜか動物が寄ってきてよく懐くの」
「美恵子さんと大翔が強引に近づきすぎなんだと思うけど。動物園のふれあいコーナーでもうさぎに威嚇されてたでしょ」
「そんなこともあったわね!」
俺が忍を撫でるのをケリーはじっと隣で見ていた。 そういえばケリーは撫でないのだろうか。可愛いって言ってたし嫌いではないと思うのだが。
「……ケイ、撫でない?」
呼び慣れない名前に躊躇しながら聞くと、困ったような笑みを浮かべられた。
「撫でたいけどアレルギーで無理なんだ。見ておくだけで十分だよ!」
「え、そうなの?」
「あら、それは残念ね」
ケリーが犬アレルギーなど聞いたことがなかった。というか吸血鬼にアレルギーがあるのか。あってもこれまでからして不思議ではないが、それなら同じ空間にいるだけでクシャミとか出るんじゃないだろうか。
なんとなくだが、ケリーが言ってるのが本当では無いような気がする。そう思っていると、ふとある考えが浮かんだ。
(もしかして、手が冷たいから?)
手が冷たいから忍を驚かせないように触れない可能性がある。人間よりも動物の方が敏感だろうし、より不快感を感じるかもしれない。優しいケリーのことだからそのように考えて触れないようにしてるのかもしれない。
実際はどうか分からないが、もしそうだったら少し辛い。なんて、俺も直接触れられるのを拒否したのだから、ケリーの性格を思うとやはり申し訳なくなってくる。
(いや、俺は犬ではないし触りたいとかはないか。)
薄らと浮かんだ妙な考えを振り払った。
「シャワー浴びてきたー!」
三人で駄弁っていると大翔が戻ってきた。途端に忍が床におりて低い声で唸る。しかし、大翔は気にしない様子で俺に飛びついてきた。重い。出会った時はあんなに小さかったのに。
「清飛くん!ねね、ゲームしよ!今日は勝つよ!」
「いつも負けてるのに」
「今日は大丈夫!自信があるんだ!」
大翔の声はまだ声変わりしていないので高い。近くで大声で話すので耳がキンキンしてくる。ケリーも声が大きい時はあるが、ものすごく高い訳ではないので煩くは無かった。
「大翔!清飛は今日お友達と一緒に来てるんだから我慢しなさい!」
「お友達?」
(え、気づいてなかったのか。)
美恵子さんの言葉に漸く大翔はケリーの存在に気づいたらしい。俺の隣に座るケリーを見て目を丸くした。だが、その目は一瞬にして鋭い物になり、睨みつける。
「誰あんた!何しに来たの!」
ケリーに強い言葉を浴びせた大翔に驚き、俺は声も出せなくなる。
(え、なに?)
「こら、大翔!」
「いえ!大丈夫ですよ!大翔くん、清飛の友達のケイです。よろしく……」
「やだ!清飛くん時々しか来ないのに、いつも一緒にいられる人が家まで来ないでよ!」
「折角来てくれた清飛の友達になんてこというの!京くんに謝りなさい!」
「嫌だよ!僕悪くないもん!」
「いや、そうだよね、悲しいよね!大翔くんごめんね!」
「京くんが謝らなくてもいいの!」
ポカンとしている俺を他所に大翔と美恵子さんは言い合いをして、ケリーは宥めるという不思議な構図になる。足元では忍がずっと吠えているしどうしたら良いか分からない。
(いや、俺が悪いのか。)
大翔が俺に懐いてくれてるのは知ってるし、(アパートに引っ越すタイミングでわんわん泣いてたし)あまり帰ってこなくて寂しがられるのも無理はない。今回はケリーもいるし一緒に遊べないと知ってそりゃショックだろう。そもそも来る予定は無かったのだが、ケリーも巻き込んでしまっているし、大人しく大翔に付き合うしかない。
(このまま言い合いが続くよりは良いよな。)
「大翔、落ち着いて。ゲームしよ!」
「本当?」
「ケイごめん、ちょっと離れていい?」
「あ、うん!大丈夫!むしろ気にしないで、遊んでおいで」
「わーい!やったー!」
「もう、ごめんね。京くん」
大翔に腕を引っ張られリビングのテレビの前に移動する。特に仕切り等は無いので、振り返ればケリーと美恵子さんの姿が見える。
「なんのゲームするの?」
「これー!」
大翔が見せてきたのは色々なキャラクターが車に乗ってレースするゲームだった。昔一緒に遊んだゲームだが、新しいバージョンが出たようで「2」と書いてある。
「懐かしい。2出たんだ、これ」
「もう三ヶ月も前だよ!僕めっちゃやってるから今日は絶対勝てると思う!」
「どうかな」
ソファに座ってコントローラーを持つ。久しぶりの感覚に我ながら少しワクワクしてるのを感じた。
「うん、大翔」
ケリーが走っていく背を見送って聞いてくる。
「元気な子だね!仲良いんだ」
「元気だとは思うけど別に普通じゃない?」
「口ではこう言ってるけど仲良いわよ!大翔の方が懐き度合いはすごいけど」
大翔がいなくなったことで忍は威嚇をやめて再び俺の膝の上にのった。今度は眠らず膝の上に座っている。すっかりここが定位置のような表情をしているのが面白い。ふわふわとした背中を撫でると柔らかくて気持ちいい。少しも嫌がらず人懐っこい様子を見せる忍になんであんなにも嫌われるのか分からない。
「清飛によく懐いてるね!」
「この子って昔からそうなのよ。なぜか動物が寄ってきてよく懐くの」
「美恵子さんと大翔が強引に近づきすぎなんだと思うけど。動物園のふれあいコーナーでもうさぎに威嚇されてたでしょ」
「そんなこともあったわね!」
俺が忍を撫でるのをケリーはじっと隣で見ていた。 そういえばケリーは撫でないのだろうか。可愛いって言ってたし嫌いではないと思うのだが。
「……ケイ、撫でない?」
呼び慣れない名前に躊躇しながら聞くと、困ったような笑みを浮かべられた。
「撫でたいけどアレルギーで無理なんだ。見ておくだけで十分だよ!」
「え、そうなの?」
「あら、それは残念ね」
ケリーが犬アレルギーなど聞いたことがなかった。というか吸血鬼にアレルギーがあるのか。あってもこれまでからして不思議ではないが、それなら同じ空間にいるだけでクシャミとか出るんじゃないだろうか。
なんとなくだが、ケリーが言ってるのが本当では無いような気がする。そう思っていると、ふとある考えが浮かんだ。
(もしかして、手が冷たいから?)
手が冷たいから忍を驚かせないように触れない可能性がある。人間よりも動物の方が敏感だろうし、より不快感を感じるかもしれない。優しいケリーのことだからそのように考えて触れないようにしてるのかもしれない。
実際はどうか分からないが、もしそうだったら少し辛い。なんて、俺も直接触れられるのを拒否したのだから、ケリーの性格を思うとやはり申し訳なくなってくる。
(いや、俺は犬ではないし触りたいとかはないか。)
薄らと浮かんだ妙な考えを振り払った。
「シャワー浴びてきたー!」
三人で駄弁っていると大翔が戻ってきた。途端に忍が床におりて低い声で唸る。しかし、大翔は気にしない様子で俺に飛びついてきた。重い。出会った時はあんなに小さかったのに。
「清飛くん!ねね、ゲームしよ!今日は勝つよ!」
「いつも負けてるのに」
「今日は大丈夫!自信があるんだ!」
大翔の声はまだ声変わりしていないので高い。近くで大声で話すので耳がキンキンしてくる。ケリーも声が大きい時はあるが、ものすごく高い訳ではないので煩くは無かった。
「大翔!清飛は今日お友達と一緒に来てるんだから我慢しなさい!」
「お友達?」
(え、気づいてなかったのか。)
美恵子さんの言葉に漸く大翔はケリーの存在に気づいたらしい。俺の隣に座るケリーを見て目を丸くした。だが、その目は一瞬にして鋭い物になり、睨みつける。
「誰あんた!何しに来たの!」
ケリーに強い言葉を浴びせた大翔に驚き、俺は声も出せなくなる。
(え、なに?)
「こら、大翔!」
「いえ!大丈夫ですよ!大翔くん、清飛の友達のケイです。よろしく……」
「やだ!清飛くん時々しか来ないのに、いつも一緒にいられる人が家まで来ないでよ!」
「折角来てくれた清飛の友達になんてこというの!京くんに謝りなさい!」
「嫌だよ!僕悪くないもん!」
「いや、そうだよね、悲しいよね!大翔くんごめんね!」
「京くんが謝らなくてもいいの!」
ポカンとしている俺を他所に大翔と美恵子さんは言い合いをして、ケリーは宥めるという不思議な構図になる。足元では忍がずっと吠えているしどうしたら良いか分からない。
(いや、俺が悪いのか。)
大翔が俺に懐いてくれてるのは知ってるし、(アパートに引っ越すタイミングでわんわん泣いてたし)あまり帰ってこなくて寂しがられるのも無理はない。今回はケリーもいるし一緒に遊べないと知ってそりゃショックだろう。そもそも来る予定は無かったのだが、ケリーも巻き込んでしまっているし、大人しく大翔に付き合うしかない。
(このまま言い合いが続くよりは良いよな。)
「大翔、落ち着いて。ゲームしよ!」
「本当?」
「ケイごめん、ちょっと離れていい?」
「あ、うん!大丈夫!むしろ気にしないで、遊んでおいで」
「わーい!やったー!」
「もう、ごめんね。京くん」
大翔に腕を引っ張られリビングのテレビの前に移動する。特に仕切り等は無いので、振り返ればケリーと美恵子さんの姿が見える。
「なんのゲームするの?」
「これー!」
大翔が見せてきたのは色々なキャラクターが車に乗ってレースするゲームだった。昔一緒に遊んだゲームだが、新しいバージョンが出たようで「2」と書いてある。
「懐かしい。2出たんだ、これ」
「もう三ヶ月も前だよ!僕めっちゃやってるから今日は絶対勝てると思う!」
「どうかな」
ソファに座ってコントローラーを持つ。久しぶりの感覚に我ながら少しワクワクしてるのを感じた。
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