陽気な吸血鬼との日々

波根 潤

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中間テスト期間

十七、

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 (レバニラってこんな味か)

 ケリーに苦手ではないと言ったが、実際のところ食べたことなかった。少しクセはあるが、美味しい。

 「ケリーって苦手な食べ物ないの?ニンニク食べれる?」
「食べれるよー!グリーンピースが苦手!」
「一緒だ」

 たわいのない話をしながら食べ進めるが、やはり米が多い。食べられないことはないが、お腹が苦しくなってくる。

 「清飛、大丈夫?やっぱり多かった?」
「大丈夫、食べられる」
「ごめんねっ、無理しないでね!」

 (だから多いって言った……。)

 一言文句でも言えたら良かったが、作ってくれたのだし、折角用意してくれたごはんを残したく無かったから言わなかった。

「ごちそうさま」
「お粗末さまでした。無理させてごめんね」
「無理してない。でもちょっと休憩する」

 横になりたかったが、以前ケリーに「食べてすぐに寝ると牛になるよ!」言われた為ベッドを背に寄りかかる。ケリーが食器をさげて、洗い物を始めた。同じ部屋で、自分以外の生活音が聞こえてくるのが心地よくて、目を閉じてその音を聞いていると段々と眠たくなってくる。

(やばい、寝そう。)

 ダメだ、寝ちゃダメだと睡魔に抗う。まだ勉強しなきゃいけないし、信じている訳ではないが牛になってしまう。だが、どうだろう。試験まではまだ数日あるし、そこまで根をつめなくても大丈夫な気がしてきた。それに、連日勉強し続けるせいで疲れている。テスト期間だが、一日くらい休んでもいいか。
 
(いや、でも寝たら牛に……。)
「うし……」
「ん?牛?牛肉食べたい?」

いつの間にか洗い物が終わってて、目を開けると少し首を傾げているケリーが隣にいた。温かいお茶をテーブルに置いてくれている。

「明日牛丼にしよっか!」
「……うん」

独り言が漏れていたようで、しかも聞かれていたようで恥ずかしくなる。恥ずかしさを誤魔化したくて、お茶を一口啜る。

「なんか、不思議な味」
(味というかにおい?色は紅茶っぽいけど。)

「ルイボスティーにしてみた!」
「ルイ……?なんか小洒落てるな」
「夜だからカフェインは控えた方がいいかなって」
(しっかりしてるなあ……。)

 初めて飲んだが不味くはない。だが、苦い緑茶よりは飲みやすかった。

 「教科書見てもいい?」
「え、うん」

 ケリーがテーブルの端に寄せていた英語の教科書を開き、読み始める。そういえばずっと日本語で話してるけど、英語は話せるのだろうか。本来の姿を思い出すと、むしろ英語の方が得意な気がする。

「ケリー、英語話せる?」
「話せるよ!ってか見て!教科書にKellyって書いてある!」
「良かったね」

 楽しそうで何よりだった。

「ってか、そっか!家事くらいしかできることないって思ってたけど、英語なら教えられるよ!」
「え、本当?それは嬉しい」
「もちろん!」

 教えてくれるならありがたい。一人で勉強するのは自分のペースで出来るがいかんせん手間だ。先程まで今日はもう休もうと思っていたが、少しだけ勉強しようとノートを広げる。

「ここ教えて」
「ああ、これは動詞が……」


「ありがと、助かった」
「いえいえ、なんか英語の科目って複雑だね。喋ることはできても難しかったよ」

そう言っていたが、ケリーの教え方はわかりやすかった。発音も綺麗でよく話していたんだな思う。

「なんでそんなに話せるの?」
「他の国にも旅行とか行くから。英語は世界共通語だし覚える吸血鬼多いよ」
「そっか……って、日本語話せる吸血鬼ってどのくらい?」
「どのくらいだろ。少なくはないと思う。日本好きな吸血鬼は覚えるけど、難しくて挫折する吸血鬼も多いかな」

 これまでスムーズに会話できていたから、ケリーの言葉に驚く。

(もしかして、ケリーって頭いい?)

「でも生きる時間が長いから、一度断念しても数年後にまた覚えようとチャレンジする吸血鬼もいる。日本旅行行きたい吸血鬼って多いし」
「そんなに魅力ある?」
「住んでたら普通かもしれないけど、俺たちからしたら魅力的だよ!俺、出汁好き!」
「おお、流石料理人」

「カツオ節削りたいんだー!」とワクワクしながら言うケリーは少年のようだった。


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