256 / 266
番外編 シュノー・ブリューテ
雄っぱい揉む?①
しおりを挟む
⚠️結婚式前、辺境伯領での話です。
結婚式の会場として私の実家であるブルーメンタール辺境伯領のギュンター城を使用させて貰うに当たって、ナナセは迷惑ではなかっただろうかと変に気を回して心配していたが、勇者と聖者の結婚式という歴史に残る一大式典を自分の城で挙げることが出来るとなれば、ヴェイラ王国北部の防衛の要であるのと同時に、北部最大の貿易都市でもあるこの地に齎される経済効果と恩恵は計り知れない。
何処の領主でも迷惑どころか金を払ってでも誘致したいと思うだろう。
現に、身内だけの非公開の式だと告知はしているのにも拘わらず、既に祝賀ムードのお祭り騒ぎで目抜き通りは露店で埋め尽くされている。
この地は例年冬の間は寒さが厳しいため、客足が遠退くものなのだが、今冬は聖者の治癒を受けに来る者や、商機を見出した商人などが続々と集まって来ているのだ。
寒さに弱いナナセを城の外に出すのは心配だが、この分ではお披露目しない訳にはいかないかも知れない。
ナナセは露店を見て回るのが好きだから街の様子を知ればきっと喜ぶに違いないが、外に出すわけにはいかないので黙っていようと思う。
ナナセもここの寒さが余程堪えたのか室内に引き籠ったきりで、今は暖炉の前の長椅子で健やかな寝息を立てている。
今日の治癒も終えた後で、疲れて眠っているのだ。
尤も、疲労の原因は治癒を施したからではなくその後、闇魔法の代償として子種を捧げる行為によるものなのだが。
今は私が式の準備に掛かり切りでナナセをほったらかしにしてしまっている状態なので、暇を持て余してご機嫌斜めになられるよりは、こうして近くで大人しく眠っていてくれる方が私としても安心ではあった。
しかし本音を言うと構って貰えなくてつまらない。
ナナセは眠っていても美しいが起きていた方が断然面白いと思う。
私は書き物机の前から立ち上がり、結婚式で使う花の見本が詰められた平たい木箱を持ってナナセが寝そべっている長椅子の端に腰かけた。
黒い鞣革の紐を解くと、箱の中には格子状に仕切りが付いていて各々、冬の花が標本のように収められている。状態保存の魔法が掛けられているので、水をやらずに温かい室内に置いておいても萎れる心配はない。
今は冬で、外は雪と氷に閉ざされてはいるが、この地は花咲く谷の名の通り、一年を通して様々な花が咲く。
私とナナセの婚礼に相応しい、私たち二人を象徴する花と言えば春から初夏にかけて咲く林檎の花だろう。
なにしろ私がナナセに最初に贈った指輪は、恥ずかしながら林檎の花で編んだおもちゃのような拙いものだったのだ。
それでもナナセはとても喜んでくれて、指輪をそのままドライフラワーにして今だにとても大事にしてくれている。
季節外の花でも専門の魔法士に依頼すればどうにか都合できるので、当初はブルーメンタール家の威信を賭けて城中を飾れるほどの林檎の花を手配するつもりでいた。
ところが、ナナセが「式はエリーの誕生日なんだからこの谷に咲いてる冬の花が良い」なんて可愛らしいことを言うものだから、こうして花咲く谷の冬の花の見本を取り寄せてみたのだ。
そういう訳で、この冬の花の中からナナセの婚礼衣装を飾る花を選ぶつもりでいる。
数種類を組み合わせるのもいいが、やはりナナセの黒髪には白い花が一番似合うので一種類で纏めるほうがいいと思う。
候補として挙げられる白い花は二種類。
五枚の花弁が星型に見える花「星の花」と、雪の結晶を幾つも重ね合わせたような八重咲の花「雪の花」だ。
華やかさで選ぶのであれば「雪の花」だが、ナナセの名前は「七つの星」という意味だそうだから、「星の花」も捨てがたい。
試しに、眠るナナセの髪に二種類の花を飾ってみたが、ナナセは眠っていても美しいという既に知っていることしか分からなかった。
結婚式の会場として私の実家であるブルーメンタール辺境伯領のギュンター城を使用させて貰うに当たって、ナナセは迷惑ではなかっただろうかと変に気を回して心配していたが、勇者と聖者の結婚式という歴史に残る一大式典を自分の城で挙げることが出来るとなれば、ヴェイラ王国北部の防衛の要であるのと同時に、北部最大の貿易都市でもあるこの地に齎される経済効果と恩恵は計り知れない。
何処の領主でも迷惑どころか金を払ってでも誘致したいと思うだろう。
現に、身内だけの非公開の式だと告知はしているのにも拘わらず、既に祝賀ムードのお祭り騒ぎで目抜き通りは露店で埋め尽くされている。
この地は例年冬の間は寒さが厳しいため、客足が遠退くものなのだが、今冬は聖者の治癒を受けに来る者や、商機を見出した商人などが続々と集まって来ているのだ。
寒さに弱いナナセを城の外に出すのは心配だが、この分ではお披露目しない訳にはいかないかも知れない。
ナナセは露店を見て回るのが好きだから街の様子を知ればきっと喜ぶに違いないが、外に出すわけにはいかないので黙っていようと思う。
ナナセもここの寒さが余程堪えたのか室内に引き籠ったきりで、今は暖炉の前の長椅子で健やかな寝息を立てている。
今日の治癒も終えた後で、疲れて眠っているのだ。
尤も、疲労の原因は治癒を施したからではなくその後、闇魔法の代償として子種を捧げる行為によるものなのだが。
今は私が式の準備に掛かり切りでナナセをほったらかしにしてしまっている状態なので、暇を持て余してご機嫌斜めになられるよりは、こうして近くで大人しく眠っていてくれる方が私としても安心ではあった。
しかし本音を言うと構って貰えなくてつまらない。
ナナセは眠っていても美しいが起きていた方が断然面白いと思う。
私は書き物机の前から立ち上がり、結婚式で使う花の見本が詰められた平たい木箱を持ってナナセが寝そべっている長椅子の端に腰かけた。
黒い鞣革の紐を解くと、箱の中には格子状に仕切りが付いていて各々、冬の花が標本のように収められている。状態保存の魔法が掛けられているので、水をやらずに温かい室内に置いておいても萎れる心配はない。
今は冬で、外は雪と氷に閉ざされてはいるが、この地は花咲く谷の名の通り、一年を通して様々な花が咲く。
私とナナセの婚礼に相応しい、私たち二人を象徴する花と言えば春から初夏にかけて咲く林檎の花だろう。
なにしろ私がナナセに最初に贈った指輪は、恥ずかしながら林檎の花で編んだおもちゃのような拙いものだったのだ。
それでもナナセはとても喜んでくれて、指輪をそのままドライフラワーにして今だにとても大事にしてくれている。
季節外の花でも専門の魔法士に依頼すればどうにか都合できるので、当初はブルーメンタール家の威信を賭けて城中を飾れるほどの林檎の花を手配するつもりでいた。
ところが、ナナセが「式はエリーの誕生日なんだからこの谷に咲いてる冬の花が良い」なんて可愛らしいことを言うものだから、こうして花咲く谷の冬の花の見本を取り寄せてみたのだ。
そういう訳で、この冬の花の中からナナセの婚礼衣装を飾る花を選ぶつもりでいる。
数種類を組み合わせるのもいいが、やはりナナセの黒髪には白い花が一番似合うので一種類で纏めるほうがいいと思う。
候補として挙げられる白い花は二種類。
五枚の花弁が星型に見える花「星の花」と、雪の結晶を幾つも重ね合わせたような八重咲の花「雪の花」だ。
華やかさで選ぶのであれば「雪の花」だが、ナナセの名前は「七つの星」という意味だそうだから、「星の花」も捨てがたい。
試しに、眠るナナセの髪に二種類の花を飾ってみたが、ナナセは眠っていても美しいという既に知っていることしか分からなかった。
0
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。


アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる