異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

文字の大きさ
上 下
254 / 266
番外編 聖者の取説

聖者の取説④

しおりを挟む
つまり四大精霊魔法が一切使えないのに闇魔法や転移魔法が使えるナナセがイレギュラー中のイレギュラーなのだ。
私から見れば、凡庸な四大精霊魔法より、高位の魔法士しか使えない転移魔法や失伝したはずの闇魔法を使える方が遥かに稀少価値が高いのだから何も気に病むことはないと思うのだが、ナナセはどうしても気になって仕方がないようである。

寒さに弱いのは精霊の加護がないせいもあると言われ、面白くなさそうに口を尖らせているのが可愛くて、抱き寄せて暖炉の前に置かれた一人掛けのソファーに座れば、もぞもぞ動いて座りの良い位置を見付け大人しく膝の上に収まってくれた。
しかし、ナナセがこれほど寒さに弱いとなると、結婚式当日のナナセの寒冷対策を早急に考えなければならないだろう。
少し目を離した隙に死んでしまうのではないかと気が気ではない。

「ところでナナセ、グッピーとは何だ?」
「観賞用の熱帯魚だよ。温度差に弱いんだ」

丁度そこで二杯目のグリューワインが運ばれて来て、酒精アルコールの力で饒舌になったナナセと他愛もない話をしているうちに、気付けばナナセはすっかり出来上がっていた。

「だーかーらー、俺はー寒いのはー駄目だけどー、暑いのはー……駄ー目ー!」

ナナセは上機嫌でんふんふ含み笑いをしながら猫みたいにぐにゃぐにゃになってしな垂れかかってくる。

「……ナナセ? それでは寒いのも暑いのもどっちも駄目なのではないか?」

酔っ払いに正論を説いてみたものの、ナナセは喉の奥でんふんふ笑っているだけでやはり分かっていないようだ。
ナナセは二十歳の誕生日に酒を解禁したのだが、ワインやビールは余り好きではないらしく偶にスパークリングワインを舐める程度だった。
だからどの程度飲めるのかは私はも把握していなかったのだ。
それにしてもグリューワインたった二杯でここまでベロベロに酔えるとは、ナナセの行動は何故毎回こんなに予測がつかないんだ。

「ナナセ、酔っているだろう。着いたばかりだが今日のところはもう休んだ方がいい」
「やーだ♡ 酔ってーないっ♡ 俺はー♡ 酔ってーないっ、ぜっ♡」

酔っ払いは皆そう言う。絵に描いたような酔っ払いだ。
酔っ払いに絡まれるのは御免だが、こんなに愛らしい酔っ払いなら私は進んで絡まれにに行く。

「どうやらナナセは酒が弱いようだ」
「ちげえってー♡ 俺がー♡ 弱いんじゃー♡ ねーもーんー♡ さっきのー♡ ベージュ脂肪細胞とおんなじだもーん♡」
「どういうことだ?」
しおりを挟む
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)

次章続巻も順次刊行予定
OLOLON

※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
感想 21

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...