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最終章 砂漠の薔薇
〇二六 生きること、死ぬこと、愛すること④ 【完】
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つまり俺の肉体は治癒能力に目覚めた十八歳の頃から歳を取っていない。
一度や二度治癒を受けた程度では大して寿命が延びることはないが、毎日繰り返し治癒をしている間ずっと俺の側にいたエリアスも同様にだ。
歳を取らないと気付いたとき、俺はテロメアまで再生してしまっていることにすぐに思い当ってエリアスと話し合った。
俺たちは外的要因で殺されないとも限らないので不死ではないが、このままずっと不老なのではないかと。
俺はせめて自分の両親だけでも同じように救いたかったのだが、エリアスの意見は彼らはそれを望まないだろうというもので、あのときは少し喧嘩した。
結果はエリアスの言う通り、俺の申し出は両親に却下されてしまったのだ。
両親や友人知人たちとの別れはつらいものだった。
だからこそ俺は覚えている。
みんなが生きたってことを。
全部、全部、俺が覚えてるから。
俺が思うに、世界はたった三つのものだけで出来ている。
生きること、死ぬこと、愛すること。
それだけだ。
俺はそのうちのひとつ、「死ぬこと」を欠いて尚、エリアスを愛して生き続ける。
かつて魔導書を編纂するためロスの創造都市ゴルゴヌーザの墻壁の外に広がる「永遠の死の国」へ足を踏み入れ、ルヴァに手料理を振舞われたとき、おかしいと思うべきだったんだ。
死の国の物を口にしても無事に帰ることが出来たのは、あのとき既に俺たちが「死ぬこと」を欠いた人間だったからだろう。
「エリー、ごめんてー!」
抱き着いて甘えれば許してくれるような可愛いエリアスはとっくの昔にどっかいっちゃったんだけど、その代わりにある時からおっそろしく格好良いエリアスが爆誕した。
進化の最終形態エリアスが格好良すぎたので今回ばかりはBボタンを押せなかった俺を笑ってくれ。
クッソ格好良いエリアスは一万年経っても惚れ惚れする。
もうお色気担当キャラと言っていい。
俺はその、淡褐色と淡緑色の混ざり合う榛色の瞳に軽く睨まれるだけで「抱いて♡」ってなってしまう。
ああ、それ、その目な。抱いて♡
お詫びにエリアスの両手を取って今度は俺が転移魔法の術式を展開する。
場所は問題の転移門だ。
「こんなことでは誤魔化されないからな」
俺が記念日忘れちゃってたから、エリアスちょっと怒ってるかもと思ったけどそうでもないみたいだ。
だって言葉とは裏腹に、滅茶苦茶甘くて優しい目で俺を見てるんだもん。
俺は忽ち嬉しくなって、展開させた転移魔法の術式を完成させながらエリアスに向かって笑いかけ、格好付けて言う。
「さーてと! それじゃあ二人でまた世界、救いに行ってくるか!」
今から丁度一万年前の今日、異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが、俺の中二病はまだ治りそうにない――。
「異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが」最終章 砂漠の薔薇 完
明日の更新は「最終章の登場人物紹介」「全登場人物紹介」「番外編」の3本同時投稿です。
一度や二度治癒を受けた程度では大して寿命が延びることはないが、毎日繰り返し治癒をしている間ずっと俺の側にいたエリアスも同様にだ。
歳を取らないと気付いたとき、俺はテロメアまで再生してしまっていることにすぐに思い当ってエリアスと話し合った。
俺たちは外的要因で殺されないとも限らないので不死ではないが、このままずっと不老なのではないかと。
俺はせめて自分の両親だけでも同じように救いたかったのだが、エリアスの意見は彼らはそれを望まないだろうというもので、あのときは少し喧嘩した。
結果はエリアスの言う通り、俺の申し出は両親に却下されてしまったのだ。
両親や友人知人たちとの別れはつらいものだった。
だからこそ俺は覚えている。
みんなが生きたってことを。
全部、全部、俺が覚えてるから。
俺が思うに、世界はたった三つのものだけで出来ている。
生きること、死ぬこと、愛すること。
それだけだ。
俺はそのうちのひとつ、「死ぬこと」を欠いて尚、エリアスを愛して生き続ける。
かつて魔導書を編纂するためロスの創造都市ゴルゴヌーザの墻壁の外に広がる「永遠の死の国」へ足を踏み入れ、ルヴァに手料理を振舞われたとき、おかしいと思うべきだったんだ。
死の国の物を口にしても無事に帰ることが出来たのは、あのとき既に俺たちが「死ぬこと」を欠いた人間だったからだろう。
「エリー、ごめんてー!」
抱き着いて甘えれば許してくれるような可愛いエリアスはとっくの昔にどっかいっちゃったんだけど、その代わりにある時からおっそろしく格好良いエリアスが爆誕した。
進化の最終形態エリアスが格好良すぎたので今回ばかりはBボタンを押せなかった俺を笑ってくれ。
クッソ格好良いエリアスは一万年経っても惚れ惚れする。
もうお色気担当キャラと言っていい。
俺はその、淡褐色と淡緑色の混ざり合う榛色の瞳に軽く睨まれるだけで「抱いて♡」ってなってしまう。
ああ、それ、その目な。抱いて♡
お詫びにエリアスの両手を取って今度は俺が転移魔法の術式を展開する。
場所は問題の転移門だ。
「こんなことでは誤魔化されないからな」
俺が記念日忘れちゃってたから、エリアスちょっと怒ってるかもと思ったけどそうでもないみたいだ。
だって言葉とは裏腹に、滅茶苦茶甘くて優しい目で俺を見てるんだもん。
俺は忽ち嬉しくなって、展開させた転移魔法の術式を完成させながらエリアスに向かって笑いかけ、格好付けて言う。
「さーてと! それじゃあ二人でまた世界、救いに行ってくるか!」
今から丁度一万年前の今日、異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが、俺の中二病はまだ治りそうにない――。
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明日の更新は「最終章の登場人物紹介」「全登場人物紹介」「番外編」の3本同時投稿です。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
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📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
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※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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