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最終章 砂漠の薔薇
〇二六 生きること、死ぬこと、愛すること③
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この東の宇宙ルヴァだけでなく、北、南、西も全ての宇宙の国々が自国に塔を立て、その天辺に俺たちの部屋を用意してくれているので、俺たちはその日の気分で好きなところに滞在しているのだ。
気に入った部屋には何年もいることもあるけど、気に入らなくて寄り付かない部屋もある。
俺も世話になったら治癒くらいはするし、俺たちが長く居付けばその国は恩恵を受けて繁栄するから国策としては割と重要なんだろう。
だが勿論、部屋の決定権は俺にある。
獣人領のアルブム城の星座の部屋とか、ヴェイラ王国のヴェルスパ宮殿の鳥籠の部屋みたいなのは却下だが、最近滞在した畳と掘り炬燵の部屋は良かった。
冬になったら蜜柑持ってまた行きたいな。
そんな俺たちは現在どういった身分かというと、これがちょっと複雑だ。
ちょっと長生きしてるだけで俺もエリアスも紛うことなく人間なんだが、現人神のような扱いを受けている。
国家元首クラスになると俺たちが実在することを知っているけど、一般人には神話の登場人物か過去の偉人か何かだと思われているのだ。
身分階級で説明するならルッツことルートヴィヒ陛下の存命中に、エリアスは現象界大公という爵位を戴き、「グロスヘルツォーク・ウルロ」と呼ばれるようになり、俺は現象界方伯という爵位を戴き、「ラングラフ・ウルロ」と呼ばれるようになった。
だが、今でも専ら「勇者様」と「聖者様」って呼ばれる機会の方が多い。
方伯は俺の元いた世界アルビオンで言えば、神聖ローマ帝国時代の伯爵位で公爵と同等の発言権を持つ。
アルビオンではすでに現存しないけど、ヴェイラ王国では長く空席だったこの爵位を俺のために復活させたのだという。
貴族制度は今も残っているものの、ルートヴィヒ陛下ことルッツは王政を廃止し議会制を取り入れて自身がヴェイラ王朝最後の国王となった。
マキシミリアン殿下の件では彼なりに思うところがあったのだろう。
思い返すのは一万年前、旅の一座に身を窶したルッツに便乗して王都を脱出して一緒に旅をしたときのことだ。
エミューの乗り方を教わりながら「王侯貴族もみんなエミューに乗ればいいのにな」って口にした俺にルッツは言ったんだ。「そうだな……その通りだ」って。
俺はルッツのその言葉が今もずっと心に残っている。
ルッツはあのとき既に王政を廃止すると決心していたのだろう。
そんなルッツも天命を全うしてもういない。
ルッツだけじゃない。あの頃の知り合いはもう誰一人いない――。
俺たちも最初の十年ほどは、自分たちが歳を取らなくなっていることに全く気付かなかったんだ。
魔導書「黎明と黄昏」の内容を充実させるために、あちこち旅をしていたからな。
だが偶にヴェイラの王都へ戻る度に旧知の人たちが老け込んでるものだから、これはどうもおかしいぞってことにやっと気付いた。
原因は言わずもがな、俺の治癒能力にあったのだ。
人の老化のメカニズムを知ってるか?
そもそも生物の寿命と言うのは染色体の先端に付いているテロメアという物質の長さで決まる。
ところがこのテロメアは細胞分裂する度に徐々に摩耗し短くなっていく。
即ちこれが老化現象だ。
しかしハダカデバネズミのようにテロメアを常に取り換える能力を持っている不老生物や、ベニクラゲのようにテロメアを再生させ事実上の不老と若返りを実現させている生物も存在する。
ここまで言えばもうお分かりだろう。
俺の治癒能力はテロメアまでをも再生してしまうのだ。
気に入った部屋には何年もいることもあるけど、気に入らなくて寄り付かない部屋もある。
俺も世話になったら治癒くらいはするし、俺たちが長く居付けばその国は恩恵を受けて繁栄するから国策としては割と重要なんだろう。
だが勿論、部屋の決定権は俺にある。
獣人領のアルブム城の星座の部屋とか、ヴェイラ王国のヴェルスパ宮殿の鳥籠の部屋みたいなのは却下だが、最近滞在した畳と掘り炬燵の部屋は良かった。
冬になったら蜜柑持ってまた行きたいな。
そんな俺たちは現在どういった身分かというと、これがちょっと複雑だ。
ちょっと長生きしてるだけで俺もエリアスも紛うことなく人間なんだが、現人神のような扱いを受けている。
国家元首クラスになると俺たちが実在することを知っているけど、一般人には神話の登場人物か過去の偉人か何かだと思われているのだ。
身分階級で説明するならルッツことルートヴィヒ陛下の存命中に、エリアスは現象界大公という爵位を戴き、「グロスヘルツォーク・ウルロ」と呼ばれるようになり、俺は現象界方伯という爵位を戴き、「ラングラフ・ウルロ」と呼ばれるようになった。
だが、今でも専ら「勇者様」と「聖者様」って呼ばれる機会の方が多い。
方伯は俺の元いた世界アルビオンで言えば、神聖ローマ帝国時代の伯爵位で公爵と同等の発言権を持つ。
アルビオンではすでに現存しないけど、ヴェイラ王国では長く空席だったこの爵位を俺のために復活させたのだという。
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マキシミリアン殿下の件では彼なりに思うところがあったのだろう。
思い返すのは一万年前、旅の一座に身を窶したルッツに便乗して王都を脱出して一緒に旅をしたときのことだ。
エミューの乗り方を教わりながら「王侯貴族もみんなエミューに乗ればいいのにな」って口にした俺にルッツは言ったんだ。「そうだな……その通りだ」って。
俺はルッツのその言葉が今もずっと心に残っている。
ルッツはあのとき既に王政を廃止すると決心していたのだろう。
そんなルッツも天命を全うしてもういない。
ルッツだけじゃない。あの頃の知り合いはもう誰一人いない――。
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だが偶にヴェイラの王都へ戻る度に旧知の人たちが老け込んでるものだから、これはどうもおかしいぞってことにやっと気付いた。
原因は言わずもがな、俺の治癒能力にあったのだ。
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ここまで言えばもうお分かりだろう。
俺の治癒能力はテロメアまでをも再生してしまうのだ。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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