異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

文字の大きさ
上 下
247 / 266
最終章 砂漠の薔薇

〇二六 生きること、死ぬこと、愛すること③

しおりを挟む
この東の宇宙ルヴァだけでなく、北、南、西も全ての宇宙の国々が自国に塔を立て、その天辺に俺たちの部屋を用意してくれているので、俺たちはその日の気分で好きなところに滞在しているのだ。
気に入った部屋には何年もいることもあるけど、気に入らなくて寄り付かない部屋もある。
俺も世話になったら治癒くらいはするし、俺たちが長く居付けばその国は恩恵を受けて繁栄するから国策としては割と重要なんだろう。
だが勿論、部屋の決定権は俺にある。
獣人領のアルブム城の星座の部屋とか、ヴェイラ王国のヴェルスパ宮殿の鳥籠の部屋みたいなのは却下だが、最近滞在した畳と掘り炬燵の部屋は良かった。
冬になったら蜜柑持ってまた行きたいな。

そんな俺たちは現在どういった身分かというと、これがちょっと複雑だ。
ちょっと長生きしてるだけで俺もエリアスも紛うことなく人間なんだが、現人神のような扱いを受けている。
国家元首クラスになると俺たちが実在することを知っているけど、一般人には神話の登場人物か過去の偉人か何かだと思われているのだ。

身分階級で説明するならルッツことルートヴィヒ陛下の存命中に、エリアスは現象界ウルロ大公グロスヘルツォークという爵位を戴き、「グロスヘルツォーク・ウルロ」と呼ばれるようになり、俺は現象界ウルロ方伯ラングラフという爵位を戴き、「ラングラフ・ウルロ」と呼ばれるようになった。
だが、今でも専ら「勇者様」と「聖者様」って呼ばれる機会の方が多い。

方伯は俺の元いた世界アルビオンで言えば、神聖ローマ帝国時代の伯爵位で公爵と同等の発言権を持つ。
アルビオンではすでに現存しないけど、ヴェイラ王国では長く空席だったこの爵位を俺のために復活させたのだという。
貴族制度は今も残っているものの、ルートヴィヒ陛下ことルッツは王政を廃止し議会制を取り入れて自身がヴェイラ王朝最後の国王となった。
マキシミリアン殿下の件では彼なりに思うところがあったのだろう。
思い返すのは一万年前、旅の一座に身を窶したルッツに便乗して王都を脱出して一緒に旅をしたときのことだ。
エミューの乗り方を教わりながら「王侯貴族もみんなエミューに乗ればいいのにな」って口にした俺にルッツは言ったんだ。「そうだな……その通りだ」って。
俺はルッツのその言葉が今もずっと心に残っている。
ルッツはあのとき既に王政を廃止すると決心していたのだろう。
そんなルッツも天命を全うしてもういない。
ルッツだけじゃない。あの頃の知り合いはもう誰一人いない――。

俺たちも最初の十年ほどは、自分たちが歳を取らなくなっていることに全く気付かなかったんだ。
魔導書「黎明と黄昏」の内容を充実させるために、あちこち旅をしていたからな。
だが偶にヴェイラの王都へ戻る度に旧知の人たちが老け込んでるものだから、これはどうもおかしいぞってことにやっと気付いた。

原因は言わずもがな、俺の治癒能力にあったのだ。
人の老化のメカニズムを知ってるか?
そもそも生物の寿命と言うのは染色体の先端に付いているテロメアという物質の長さで決まる。
ところがこのテロメアは細胞分裂する度に徐々に摩耗し短くなっていく。
即ちこれが老化現象だ。

しかしハダカデバネズミのようにテロメアを常に取り換える能力を持っている不老生物や、ベニクラゲのようにテロメアを再生させ事実上の不老と若返りを実現させている生物も存在する。

ここまで言えばもうお分かりだろう。
俺の治癒能力はテロメアまでをも再生してしまうのだ。
しおりを挟む
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)

次章続巻も順次刊行予定
OLOLON

※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
感想 21

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...