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最終章 砂漠の薔薇
〇二六 生きること、死ぬこと、愛すること②
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「大丈夫、大丈夫」
王冠の「聖者のメダイユ」を外して、さっき落とした「聖者のメダイユ」と交換して元の位置に戻せばミッションコンプリート。
これでこの「聖者のメダイユ」があと数百年はこの国を災厄から守ってくれるだろう。
昔はちょっとした怪我を治す程度の効果しかなかった「聖者のメダイユ」も、今では一国を災いから遠ざける力を持つまでになった。
「ちょ、ちょっと! 兄ちゃん何やってんだよ!」
「ナナセ、もう行こう」
エリアスは少年には目もくれず、少し苛々しながら俺の腕を引っ張る。
「兄ちゃんの名前も『ナナセ』って言うの? 俺の名前も『ナナセ』って言うんだ。偉大な聖者様の名前から貰ったんだ」
この国のみならず、この世界では俺に肖ってか男女ともに「ナナセ」って名前の奴は少なくない。
ちな、男は「エリアス」の方が圧倒的に多いけどな。
「そっか、お前もナナセか。それじゃあ同名の好でこれをやろう」
纏わりついてくる子供に俺はつい今しがた交換した「聖者のメダイユ」を差し出す。
「え、でもこれさっきまで国宝の王冠に付いてたやつじゃ……?」
交換したやつだからそれにはもうあんまり魔力は残っていないけど、天命を全うするくらいの間は護ってくれるだろう。
そのとき学生の団体の中から少年を呼ぶ声がしてそちらを振り向いた刹那、エリアスが俺の手を引く。
一瞬で景色が変わり、俺たちは高い塔の上へと移動していた。
これは俺の従僕だったヒューが使っていた転移門を必要としない転移魔法の応用だ。
この一万年の間に俺たちは他にも様々な魔法を習得している。
昔は丸っきり使えなかった四大精霊魔法も、エリアスが使えるものだったら魔導書「黎明と黄昏」を介して、なんと俺にも使えるようになった。
その逆に俺の治癒や転送魔法も魔導書「黎明と黄昏」を介せばエリアスも使える。
エリアスが使っても治癒の贄の請求は何故か俺のところへ来るのが解せないんだが。
「あの少年には忘却魔法を掛けておいた」
流石エリアス、卒がない。
「ありがとな」
「明け方の星が見たいのだろう? 急がないと明け方に間に合わなくなるぞ」
確かに明け方の星を見たいと言ったのは俺だけどさ。
でも今日はこの後一件、結構前に起きた兵器の暴発事故以来、不安定なアルビオンとの転移門を修復して世界を救ってくるだけだ。
そしたらもう帰ってヤルだけなのに間に合わなくなるってどんだけヤル気なんだよ。
そこは何とかエリアスの方で間に合わせてくれよ。
「ナナセ? その顔は忘れているな? 今日は私がナナセに最初に求婚した記念日だろう?」
「あ……!」
ヤッベエ! 本気で忘れてた!
全ての発端は今から丁度一万年前の今日だった。
あれから俺は凡そ一万年の月日をエリアスと共に過ごしている。
何で「丁度」だったり「凡そ」だったりするのかは、まあ色々あったからだ。
魔導書「黎明と黄昏」は正しく機能して、闇と光が混ざり合ったことで魔族の暴走は徐々に沈静化し、俺たちの後に勇者も聖者も現れていない。
この世界が勇者と聖者を生み出す必要がなくなったからだ。
王冠の「聖者のメダイユ」を外して、さっき落とした「聖者のメダイユ」と交換して元の位置に戻せばミッションコンプリート。
これでこの「聖者のメダイユ」があと数百年はこの国を災厄から守ってくれるだろう。
昔はちょっとした怪我を治す程度の効果しかなかった「聖者のメダイユ」も、今では一国を災いから遠ざける力を持つまでになった。
「ちょ、ちょっと! 兄ちゃん何やってんだよ!」
「ナナセ、もう行こう」
エリアスは少年には目もくれず、少し苛々しながら俺の腕を引っ張る。
「兄ちゃんの名前も『ナナセ』って言うの? 俺の名前も『ナナセ』って言うんだ。偉大な聖者様の名前から貰ったんだ」
この国のみならず、この世界では俺に肖ってか男女ともに「ナナセ」って名前の奴は少なくない。
ちな、男は「エリアス」の方が圧倒的に多いけどな。
「そっか、お前もナナセか。それじゃあ同名の好でこれをやろう」
纏わりついてくる子供に俺はつい今しがた交換した「聖者のメダイユ」を差し出す。
「え、でもこれさっきまで国宝の王冠に付いてたやつじゃ……?」
交換したやつだからそれにはもうあんまり魔力は残っていないけど、天命を全うするくらいの間は護ってくれるだろう。
そのとき学生の団体の中から少年を呼ぶ声がしてそちらを振り向いた刹那、エリアスが俺の手を引く。
一瞬で景色が変わり、俺たちは高い塔の上へと移動していた。
これは俺の従僕だったヒューが使っていた転移門を必要としない転移魔法の応用だ。
この一万年の間に俺たちは他にも様々な魔法を習得している。
昔は丸っきり使えなかった四大精霊魔法も、エリアスが使えるものだったら魔導書「黎明と黄昏」を介して、なんと俺にも使えるようになった。
その逆に俺の治癒や転送魔法も魔導書「黎明と黄昏」を介せばエリアスも使える。
エリアスが使っても治癒の贄の請求は何故か俺のところへ来るのが解せないんだが。
「あの少年には忘却魔法を掛けておいた」
流石エリアス、卒がない。
「ありがとな」
「明け方の星が見たいのだろう? 急がないと明け方に間に合わなくなるぞ」
確かに明け方の星を見たいと言ったのは俺だけどさ。
でも今日はこの後一件、結構前に起きた兵器の暴発事故以来、不安定なアルビオンとの転移門を修復して世界を救ってくるだけだ。
そしたらもう帰ってヤルだけなのに間に合わなくなるってどんだけヤル気なんだよ。
そこは何とかエリアスの方で間に合わせてくれよ。
「ナナセ? その顔は忘れているな? 今日は私がナナセに最初に求婚した記念日だろう?」
「あ……!」
ヤッベエ! 本気で忘れてた!
全ての発端は今から丁度一万年前の今日だった。
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何で「丁度」だったり「凡そ」だったりするのかは、まあ色々あったからだ。
魔導書「黎明と黄昏」は正しく機能して、闇と光が混ざり合ったことで魔族の暴走は徐々に沈静化し、俺たちの後に勇者も聖者も現れていない。
この世界が勇者と聖者を生み出す必要がなくなったからだ。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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