246 / 266
最終章 砂漠の薔薇
〇二六 生きること、死ぬこと、愛すること②
しおりを挟む
「大丈夫、大丈夫」
王冠の「聖者のメダイユ」を外して、さっき落とした「聖者のメダイユ」と交換して元の位置に戻せばミッションコンプリート。
これでこの「聖者のメダイユ」があと数百年はこの国を災厄から守ってくれるだろう。
昔はちょっとした怪我を治す程度の効果しかなかった「聖者のメダイユ」も、今では一国を災いから遠ざける力を持つまでになった。
「ちょ、ちょっと! 兄ちゃん何やってんだよ!」
「ナナセ、もう行こう」
エリアスは少年には目もくれず、少し苛々しながら俺の腕を引っ張る。
「兄ちゃんの名前も『ナナセ』って言うの? 俺の名前も『ナナセ』って言うんだ。偉大な聖者様の名前から貰ったんだ」
この国のみならず、この世界では俺に肖ってか男女ともに「ナナセ」って名前の奴は少なくない。
ちな、男は「エリアス」の方が圧倒的に多いけどな。
「そっか、お前もナナセか。それじゃあ同名の好でこれをやろう」
纏わりついてくる子供に俺はつい今しがた交換した「聖者のメダイユ」を差し出す。
「え、でもこれさっきまで国宝の王冠に付いてたやつじゃ……?」
交換したやつだからそれにはもうあんまり魔力は残っていないけど、天命を全うするくらいの間は護ってくれるだろう。
そのとき学生の団体の中から少年を呼ぶ声がしてそちらを振り向いた刹那、エリアスが俺の手を引く。
一瞬で景色が変わり、俺たちは高い塔の上へと移動していた。
これは俺の従僕だったヒューが使っていた転移門を必要としない転移魔法の応用だ。
この一万年の間に俺たちは他にも様々な魔法を習得している。
昔は丸っきり使えなかった四大精霊魔法も、エリアスが使えるものだったら魔導書「黎明と黄昏」を介して、なんと俺にも使えるようになった。
その逆に俺の治癒や転送魔法も魔導書「黎明と黄昏」を介せばエリアスも使える。
エリアスが使っても治癒の贄の請求は何故か俺のところへ来るのが解せないんだが。
「あの少年には忘却魔法を掛けておいた」
流石エリアス、卒がない。
「ありがとな」
「明け方の星が見たいのだろう? 急がないと明け方に間に合わなくなるぞ」
確かに明け方の星を見たいと言ったのは俺だけどさ。
でも今日はこの後一件、結構前に起きた兵器の暴発事故以来、不安定なアルビオンとの転移門を修復して世界を救ってくるだけだ。
そしたらもう帰ってヤルだけなのに間に合わなくなるってどんだけヤル気なんだよ。
そこは何とかエリアスの方で間に合わせてくれよ。
「ナナセ? その顔は忘れているな? 今日は私がナナセに最初に求婚した記念日だろう?」
「あ……!」
ヤッベエ! 本気で忘れてた!
全ての発端は今から丁度一万年前の今日だった。
あれから俺は凡そ一万年の月日をエリアスと共に過ごしている。
何で「丁度」だったり「凡そ」だったりするのかは、まあ色々あったからだ。
魔導書「黎明と黄昏」は正しく機能して、闇と光が混ざり合ったことで魔族の暴走は徐々に沈静化し、俺たちの後に勇者も聖者も現れていない。
この世界が勇者と聖者を生み出す必要がなくなったからだ。
王冠の「聖者のメダイユ」を外して、さっき落とした「聖者のメダイユ」と交換して元の位置に戻せばミッションコンプリート。
これでこの「聖者のメダイユ」があと数百年はこの国を災厄から守ってくれるだろう。
昔はちょっとした怪我を治す程度の効果しかなかった「聖者のメダイユ」も、今では一国を災いから遠ざける力を持つまでになった。
「ちょ、ちょっと! 兄ちゃん何やってんだよ!」
「ナナセ、もう行こう」
エリアスは少年には目もくれず、少し苛々しながら俺の腕を引っ張る。
「兄ちゃんの名前も『ナナセ』って言うの? 俺の名前も『ナナセ』って言うんだ。偉大な聖者様の名前から貰ったんだ」
この国のみならず、この世界では俺に肖ってか男女ともに「ナナセ」って名前の奴は少なくない。
ちな、男は「エリアス」の方が圧倒的に多いけどな。
「そっか、お前もナナセか。それじゃあ同名の好でこれをやろう」
纏わりついてくる子供に俺はつい今しがた交換した「聖者のメダイユ」を差し出す。
「え、でもこれさっきまで国宝の王冠に付いてたやつじゃ……?」
交換したやつだからそれにはもうあんまり魔力は残っていないけど、天命を全うするくらいの間は護ってくれるだろう。
そのとき学生の団体の中から少年を呼ぶ声がしてそちらを振り向いた刹那、エリアスが俺の手を引く。
一瞬で景色が変わり、俺たちは高い塔の上へと移動していた。
これは俺の従僕だったヒューが使っていた転移門を必要としない転移魔法の応用だ。
この一万年の間に俺たちは他にも様々な魔法を習得している。
昔は丸っきり使えなかった四大精霊魔法も、エリアスが使えるものだったら魔導書「黎明と黄昏」を介して、なんと俺にも使えるようになった。
その逆に俺の治癒や転送魔法も魔導書「黎明と黄昏」を介せばエリアスも使える。
エリアスが使っても治癒の贄の請求は何故か俺のところへ来るのが解せないんだが。
「あの少年には忘却魔法を掛けておいた」
流石エリアス、卒がない。
「ありがとな」
「明け方の星が見たいのだろう? 急がないと明け方に間に合わなくなるぞ」
確かに明け方の星を見たいと言ったのは俺だけどさ。
でも今日はこの後一件、結構前に起きた兵器の暴発事故以来、不安定なアルビオンとの転移門を修復して世界を救ってくるだけだ。
そしたらもう帰ってヤルだけなのに間に合わなくなるってどんだけヤル気なんだよ。
そこは何とかエリアスの方で間に合わせてくれよ。
「ナナセ? その顔は忘れているな? 今日は私がナナセに最初に求婚した記念日だろう?」
「あ……!」
ヤッベエ! 本気で忘れてた!
全ての発端は今から丁度一万年前の今日だった。
あれから俺は凡そ一万年の月日をエリアスと共に過ごしている。
何で「丁度」だったり「凡そ」だったりするのかは、まあ色々あったからだ。
魔導書「黎明と黄昏」は正しく機能して、闇と光が混ざり合ったことで魔族の暴走は徐々に沈静化し、俺たちの後に勇者も聖者も現れていない。
この世界が勇者と聖者を生み出す必要がなくなったからだ。
0
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)



神官、触手育成の神託を受ける
彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。
(誤字脱字報告不要)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる