異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

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最終章 砂漠の薔薇

〇一八 聖者パンチ①

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誰がそんな噂を流したのか「聖者キック」を受けられると聞いて集まって来た人たちにエリアスは「先着一名限りで締め切った」と言い放ち、何事もなかったかのようにキスを再開しようとしたので俺はポカポカとエリアスの胸を打って逃れようとした。
俺だって見ず知らずの人を蹴ってやるつもりはなかったが、だからといって人前でキスも困る。

「待って、エリー! 離せ! 一旦俺を離そう!?」
「何を言う。私はもう二度とナナセを離さない」

そういうことじゃなくて!
人前でキスする趣味は俺にはない!
いいから離せって!
けれどエリアスは俺が幾らポカポカ叩いても少しも堪えた様子がなくて、腕を緩めてくれる気配もない。

「おおっ、パンチだ! 『聖者パンチ』だ!」
「『聖者キック』から『聖者パンチ』に切り替わったのか!?」
「『聖者パンチ』ならまだ間に合うのか!?」
「最後尾はどこだ!?」

貴族って他に楽しみないのかよ!?

「悪いがそれも先着一名限りで締め切った」

群がる人々をエリアスが追い払おうとするが、相手は丸腰の貴族なので手荒なことは出来ないのだ。

「噂の出どころは恐らく陛下だな……。目撃者の中で私の報復を恐れない者は陛下くらいしかいない。独り者の僻みはこれだから……。兎に角ここはもう駄目だ。場所を移そう」

最早続行不能と判断したエリアスは俺を軽々と横抱きにすると人垣を掻き分けてその場から脱出を試みる。
まさか男の俺がお姫様抱っこで運ばれる日が来るなんて夢にも思わなかったぜ……。

思えば今日一日で、北の宇宙ウルソナのオアシスの街から駱駝で砂漠を駆け抜け、ウルソナの王宮から北の宇宙ルヴァの王宮を経てヴェイラの王宮へ辿り着くっていう、実質二つの宇宙を飛び越えて物凄い距離を移動したんだよな。
そして今はというと、新聞の姿絵を見て俺が恋焦がれた勇者エリアスその人に抱かれてヴェイラの王宮の中を移動している。
エリアスが歩く速度は俺が歩くのより断然早くて、豪華な王宮の内装や謎技術で光る乳白色の照明が次々に視界に飛び込んできては後ろへ流れていく。
その様子がまるで煌びやかな回転木馬にでも乗っているかのようで面白い。

どれもこれも夢のような出来事の連続だったが、辿り着いたゴージャスなバースデーケーキの断面図みたいな建物の一室で俺は漸く降ろされた。
多分ここが陛下が大人しくしていろと言っていた隊舎だろう。
きょろきょろと見渡してみればそこは風呂場らしく、髪や服から砂粒がパラパラとタイルに落ちるので、砂漠を駆け抜けてきた俺たちは砂だらけだと言うことに気付かされた。

これ、風呂入ったらヤる流れだよな?
俺、このままエリアスとセックスすんのか!?
出来るのか、俺!?
俺に男同士のセックスの仕方を親切に教えてくれた奴隷商のおじさんがいたけど、あんな知識全く役に立たないじゃねえか!
どうすりゃいいんだよ!

服を全部脱ぎ捨てて生まれたままの姿になってしまうと、エリアスが身体を洗ってくれる。
エリアスは俺のチンコの上辺りの、本来陰毛が生えてるところに浮き出た封魔紋を気にしてか、そこには触れないようにしてくれていた。
だけど向かい合わせで立っていると、どうしてもエリアスの身体の一点に目が行ってしまって、故意にそこから視線を逸らすと変にぎこちなくなってしまう。
奴隷生活で他人に身体を洗われるのはもう慣れたが、俺が洗われているばかりではエリアスの身体が洗えない。
そこで俺も恐る恐る手を伸ばし、自分の手に付いた泡をエリアスの肩にそっと付けて掌で塗り広げてみる。
それを見たエリアスは一瞬手を止めたが、直後に嬉しそうに笑うので俺も釣られてちょっと笑う。

気が大きくなった俺は調子に乗って互いの身体を洗いっこした。
そしてここで俺はエリアスの意外な一面を知ることになる。
こいつ、聖人君子の優等生に見えて実は結構悪餓鬼だ!
チンコに触るのはお互いに避けてたけど、エリアスは俺が乳首が弱いことを知っていてそこばっか撫で回す様に洗おうとするから、俺も負けじと脇腹とかを擽ってみたんだけど全然効かねーの。
逆に俺が擽られて腹が痛くなるほど笑わされて、エリアスも声を上げて笑ってて、お湯で泡を流す頃には俺はもう笑い過ぎてぐったりだ。
やってることはエロオヤジと変わりねーのに、イケメンがやると悪餓鬼になるんだな。
妙に脱力して風呂から上がると、バスローブに包まれて再びエリアスに横抱きされて天蓋付きのベッドへ運ばれた。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


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次章続巻も順次刊行予定
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※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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