異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

文字の大きさ
上 下
223 / 266
最終章 砂漠の薔薇

〇一六 この感情の正体は②

しおりを挟む
紳士ヘンタイかッ!?
もしかしてエリアスって優良物件に見せかけた事故物件なのか!?

「エリアスッ!」

もういっそ蹴り飛ばしていいかな!?
そう思った時、突然ノックもなしに扉が外から開け放たれた。

「……っと、邪魔したか?」

扉を開けて悪びれもせずそう言ったのは、豪奢なジュストコールを身に纏い、まるで絵本の中から抜け出してきたような金髪碧眼の王子様然とした青年で、背後に側近を幾人も従えて俺たちの様子を面白そうに見ている。

直後、俺の膝蹴りがエリアスの顎にクリーンヒットした。

それを見て大爆笑している青年はとりあえず放置することにして、俺は急いで捲れたブラジャーと腰布を整えていると、エリアスは俺の膝蹴りなど大して効いていない様子で立ち上がる。

「陛下。聖者ナナセを救出して只今戻りました」

――陛下。
それじゃあこの王子様みたいな人が王様なのか。
エリアスが俺に蹴られるところを見てめっちゃ笑ってたけど。

「ご苦労。大儀だったな、エリアス。ナナセ、この科白を口にするのは二度目だが、よく無事に戻った。もうこれきりにしてくれよ」

二度目?
確か攫われた俺が無事戻るのはこれで三度目じゃないのか?
ソースはウルソナの新聞。
陛下の言葉に俺がきょとんとしているとエリアスが助け舟を出してくれる。

「陛下。ナナセは現在、呪詛により魔力だけでなく記憶も封じられています」

エリアスが拳を握り締めて苦々し気に俺の現状を説明すると、陛下も笑いを引っ込めた。

「……そうだったのか。道理で捜索魔法でも発見出来なかったわけだ。それでは、気配を追うことも出来まい。忌々しいことを……」
「直ちに解呪の準備を、陛下」
「お前の部下から連絡を受けて、解呪の出来る者を集めさてさせているが数日を要する」
「数日、ですか……陛下のお力でもっと早くなんとかなりませんか」
「こういう時ばかり持ち上げるな。これでも全力を尽くしている。それよりまず、王宮の内部にいた聖者をまんまと勾引かされるという此度の失態、お前にも責任を取って貰うぞ――」

陛下はそこで一旦言葉を切ると、今までの砕けた調子を消し去り王者の威厳を以て高らかに告げる。

「勇者エリアス・フォン・ブルーメンタール、お前には謹慎処分を命ずる。解呪の準備が整うまで隊舎で大人しくしていろ。以上だ」
「謹んで拝命致します」

エリアスが深く頭を下げた。
その様子を満足げに眺めた陛下は再び噴き出す一歩手前といった様子で改めて俺に向き直る。

「ナナセ。今にそこの勇者が鼻持ちならないほど浮かれて手を付けられなくなる。解呪の準備が整うまで責任取ってお前が相手をしていろ。勇者に脂下がった顔で王宮内をうろつかれてはウザくて敵わん」

それだけ言うと陛下は最後に俺に向かってにっこりと微笑んで、側近を引き連れて去っていった。
俺はその様子を唯々突っ立ったまま呆然と眺めていることしか出来なかったのである。

でも、改めて納得したこともあった。
こんなにもエリアスに強く惹かれて已まない理由がそれだ。
エリアスのことも自分の名前さえも忘れるほどの強力な呪詛を掛けられても尚、この気持ちだけは呪いに打ち勝って余りある。
俺はそれを証明して見せたのだ。
その事実は俺にとってとても誇らしいものだった。
自分でも戸惑うほどのこの感情の正体は、正しく恋なのだ。
しおりを挟む
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)

次章続巻も順次刊行予定
OLOLON

※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
感想 21

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...