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最終章 砂漠の薔薇
〇一六 この感情の正体は②
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紳士かッ!?
もしかしてエリアスって優良物件に見せかけた事故物件なのか!?
「エリアスッ!」
もういっそ蹴り飛ばしていいかな!?
そう思った時、突然ノックもなしに扉が外から開け放たれた。
「……っと、邪魔したか?」
扉を開けて悪びれもせずそう言ったのは、豪奢なジュストコールを身に纏い、まるで絵本の中から抜け出してきたような金髪碧眼の王子様然とした青年で、背後に側近を幾人も従えて俺たちの様子を面白そうに見ている。
直後、俺の膝蹴りがエリアスの顎にクリーンヒットした。
それを見て大爆笑している青年はとりあえず放置することにして、俺は急いで捲れたブラジャーと腰布を整えていると、エリアスは俺の膝蹴りなど大して効いていない様子で立ち上がる。
「陛下。聖者ナナセを救出して只今戻りました」
――陛下。
それじゃあこの王子様みたいな人が王様なのか。
エリアスが俺に蹴られるところを見てめっちゃ笑ってたけど。
「ご苦労。大儀だったな、エリアス。ナナセ、この科白を口にするのは二度目だが、よく無事に戻った。もうこれきりにしてくれよ」
二度目?
確か攫われた俺が無事戻るのはこれで三度目じゃないのか?
ソースはウルソナの新聞。
陛下の言葉に俺がきょとんとしているとエリアスが助け舟を出してくれる。
「陛下。ナナセは現在、呪詛により魔力だけでなく記憶も封じられています」
エリアスが拳を握り締めて苦々し気に俺の現状を説明すると、陛下も笑いを引っ込めた。
「……そうだったのか。道理で捜索魔法でも発見出来なかったわけだ。それでは、気配を追うことも出来まい。忌々しいことを……」
「直ちに解呪の準備を、陛下」
「お前の部下から連絡を受けて、解呪の出来る者を集めさてさせているが数日を要する」
「数日、ですか……陛下のお力でもっと早くなんとかなりませんか」
「こういう時ばかり持ち上げるな。これでも全力を尽くしている。それよりまず、王宮の内部にいた聖者をまんまと勾引かされるという此度の失態、お前にも責任を取って貰うぞ――」
陛下はそこで一旦言葉を切ると、今までの砕けた調子を消し去り王者の威厳を以て高らかに告げる。
「勇者エリアス・フォン・ブルーメンタール、お前には謹慎処分を命ずる。解呪の準備が整うまで隊舎で大人しくしていろ。以上だ」
「謹んで拝命致します」
エリアスが深く頭を下げた。
その様子を満足げに眺めた陛下は再び噴き出す一歩手前といった様子で改めて俺に向き直る。
「ナナセ。今にそこの勇者が鼻持ちならないほど浮かれて手を付けられなくなる。解呪の準備が整うまで責任取ってお前が相手をしていろ。勇者に脂下がった顔で王宮内をうろつかれてはウザくて敵わん」
それだけ言うと陛下は最後に俺に向かってにっこりと微笑んで、側近を引き連れて去っていった。
俺はその様子を唯々突っ立ったまま呆然と眺めていることしか出来なかったのである。
でも、改めて納得したこともあった。
こんなにもエリアスに強く惹かれて已まない理由がそれだ。
エリアスのことも自分の名前さえも忘れるほどの強力な呪詛を掛けられても尚、この気持ちだけは呪いに打ち勝って余りある。
俺はそれを証明して見せたのだ。
その事実は俺にとってとても誇らしいものだった。
自分でも戸惑うほどのこの感情の正体は、正しく恋なのだ。
もしかしてエリアスって優良物件に見せかけた事故物件なのか!?
「エリアスッ!」
もういっそ蹴り飛ばしていいかな!?
そう思った時、突然ノックもなしに扉が外から開け放たれた。
「……っと、邪魔したか?」
扉を開けて悪びれもせずそう言ったのは、豪奢なジュストコールを身に纏い、まるで絵本の中から抜け出してきたような金髪碧眼の王子様然とした青年で、背後に側近を幾人も従えて俺たちの様子を面白そうに見ている。
直後、俺の膝蹴りがエリアスの顎にクリーンヒットした。
それを見て大爆笑している青年はとりあえず放置することにして、俺は急いで捲れたブラジャーと腰布を整えていると、エリアスは俺の膝蹴りなど大して効いていない様子で立ち上がる。
「陛下。聖者ナナセを救出して只今戻りました」
――陛下。
それじゃあこの王子様みたいな人が王様なのか。
エリアスが俺に蹴られるところを見てめっちゃ笑ってたけど。
「ご苦労。大儀だったな、エリアス。ナナセ、この科白を口にするのは二度目だが、よく無事に戻った。もうこれきりにしてくれよ」
二度目?
確か攫われた俺が無事戻るのはこれで三度目じゃないのか?
ソースはウルソナの新聞。
陛下の言葉に俺がきょとんとしているとエリアスが助け舟を出してくれる。
「陛下。ナナセは現在、呪詛により魔力だけでなく記憶も封じられています」
エリアスが拳を握り締めて苦々し気に俺の現状を説明すると、陛下も笑いを引っ込めた。
「……そうだったのか。道理で捜索魔法でも発見出来なかったわけだ。それでは、気配を追うことも出来まい。忌々しいことを……」
「直ちに解呪の準備を、陛下」
「お前の部下から連絡を受けて、解呪の出来る者を集めさてさせているが数日を要する」
「数日、ですか……陛下のお力でもっと早くなんとかなりませんか」
「こういう時ばかり持ち上げるな。これでも全力を尽くしている。それよりまず、王宮の内部にいた聖者をまんまと勾引かされるという此度の失態、お前にも責任を取って貰うぞ――」
陛下はそこで一旦言葉を切ると、今までの砕けた調子を消し去り王者の威厳を以て高らかに告げる。
「勇者エリアス・フォン・ブルーメンタール、お前には謹慎処分を命ずる。解呪の準備が整うまで隊舎で大人しくしていろ。以上だ」
「謹んで拝命致します」
エリアスが深く頭を下げた。
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でも、改めて納得したこともあった。
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その事実は俺にとってとても誇らしいものだった。
自分でも戸惑うほどのこの感情の正体は、正しく恋なのだ。
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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