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最終章 砂漠の薔薇
〇一四 勇者マジシコい②
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握りしめていた香油壜が手から滑り落ちて床石に当たって砕ける音がしたが、今はそんなことに構っていられない。
だって、エリアスだぜ!?
俺が毎日ズリネタにしていた勇者エリアスが今俺の目に前にいて俺の手を握ってるんだぜ!?
ヤベエ! 急かされて来たからさっきシコってた手、洗ってない!
「やっと会えた……ナナセ、よく無事で……! 捜した……!」
エリアスはキラキラした顔で一言喋る度に言葉を詰まらせながら、俺の手に何度も口付けている。
すまないエリアス、その手は……。
心の中で謝りながら俺は夢でも見ているような気分でポ~ッとしちまってて、エリアスが何を言ってるのか全く耳に入ってこなかった。
「……エリアス? 何で? 嘘、本物……? これ、夢か?」
実物の勇者マジシコい。
それにこの瞳、これ榛色っていうのか?
淡褐色と淡緑色が混ざり合ってて宝石みたいですっげー綺麗!
「夢ではない。本物だ。好きなだけ触れて確かめてみるといい」
シコってて洗ってない手で触ってもいいのかよ!?
エリアスは俺の両手を自分の両頬へ誘導すると、俺の掌に頬を擦りつけて瞼を閉じる。
うわ、睫毛長っ!
なんかすっげー良い匂いするし!
流石勇者、ファンサすげえな!?
この世界にチェキがないことが悔やまれる。
エリアスの頬はちょっと冷たくて、その後俺の掌に何度も落とされた唇は熱かった。
だがしかし、夢のようなファンサタイムは空気を読まないギャレットの声によって中断される。
「裏口にお仲間が」
「すまない。ギャレット殿、恩に着る」
「何のことだ。私は競り落とした男娼を旅の途中の外国の貴族の元に身請けさせただけ」
裏口!? 仲間!? 身請け!?
どゆこと!?
ギャレットがいっぱい喋った時は碌なことがなかったが、俺、勇者にお持ち帰りされんのかよ!?
「……この礼はいつか必ず」
「急げ」
「帰ろう、ナナセ。帰って結婚式のやり直しをするぞ」
「け、結婚式っ……!?」
俺が慌てて両手を突っ張って身体を離して距離を保つと、エリアスがどうしたのかと言うように首を傾げて俺を見る。
だって結婚式って、それはエリアスが聖者様と挙げるはずじゃなかったのかよ。
しかもやり直しってそれじゃあまるで俺が聖者様みたいじゃないか。
――そこで俺ははたと気付く。
俺は婚礼衣装を身に着けていたんじゃなかったか。
俺が嵌めていた虹色の指輪の裏には「エリアスより愛をこめて」と彫られていたんじゃなかったか。
そしてエリアスが俺を迎えに来ただけでなく、結婚式のやり直しをしようと言う。
全ての事実が俺が件の聖者であることを示している。
焦ってギャレットを見ると、無言で頷いている。
最早言葉が足りないというレベルを通り越して無言かよ。
意味が分からない。
「あの、こんなこと、間違ってたらごめんだけど――」
そうじゃないかなと思うことはあった。
そうだったらいいなと思っていた。
だけどそうじゃなかったとき、現実があまりにも惨めだからなるべく考えないようにしていた。
「――勇者の捜してた聖者って、もしかして俺?」
震える声でそう問えば、エリアスが青褪めた顔で訝しそうに俺を覗き込む。
「ナナセ……? もしかして記憶がないのか?」
それな!
だって、エリアスだぜ!?
俺が毎日ズリネタにしていた勇者エリアスが今俺の目に前にいて俺の手を握ってるんだぜ!?
ヤベエ! 急かされて来たからさっきシコってた手、洗ってない!
「やっと会えた……ナナセ、よく無事で……! 捜した……!」
エリアスはキラキラした顔で一言喋る度に言葉を詰まらせながら、俺の手に何度も口付けている。
すまないエリアス、その手は……。
心の中で謝りながら俺は夢でも見ているような気分でポ~ッとしちまってて、エリアスが何を言ってるのか全く耳に入ってこなかった。
「……エリアス? 何で? 嘘、本物……? これ、夢か?」
実物の勇者マジシコい。
それにこの瞳、これ榛色っていうのか?
淡褐色と淡緑色が混ざり合ってて宝石みたいですっげー綺麗!
「夢ではない。本物だ。好きなだけ触れて確かめてみるといい」
シコってて洗ってない手で触ってもいいのかよ!?
エリアスは俺の両手を自分の両頬へ誘導すると、俺の掌に頬を擦りつけて瞼を閉じる。
うわ、睫毛長っ!
なんかすっげー良い匂いするし!
流石勇者、ファンサすげえな!?
この世界にチェキがないことが悔やまれる。
エリアスの頬はちょっと冷たくて、その後俺の掌に何度も落とされた唇は熱かった。
だがしかし、夢のようなファンサタイムは空気を読まないギャレットの声によって中断される。
「裏口にお仲間が」
「すまない。ギャレット殿、恩に着る」
「何のことだ。私は競り落とした男娼を旅の途中の外国の貴族の元に身請けさせただけ」
裏口!? 仲間!? 身請け!?
どゆこと!?
ギャレットがいっぱい喋った時は碌なことがなかったが、俺、勇者にお持ち帰りされんのかよ!?
「……この礼はいつか必ず」
「急げ」
「帰ろう、ナナセ。帰って結婚式のやり直しをするぞ」
「け、結婚式っ……!?」
俺が慌てて両手を突っ張って身体を離して距離を保つと、エリアスがどうしたのかと言うように首を傾げて俺を見る。
だって結婚式って、それはエリアスが聖者様と挙げるはずじゃなかったのかよ。
しかもやり直しってそれじゃあまるで俺が聖者様みたいじゃないか。
――そこで俺ははたと気付く。
俺は婚礼衣装を身に着けていたんじゃなかったか。
俺が嵌めていた虹色の指輪の裏には「エリアスより愛をこめて」と彫られていたんじゃなかったか。
そしてエリアスが俺を迎えに来ただけでなく、結婚式のやり直しをしようと言う。
全ての事実が俺が件の聖者であることを示している。
焦ってギャレットを見ると、無言で頷いている。
最早言葉が足りないというレベルを通り越して無言かよ。
意味が分からない。
「あの、こんなこと、間違ってたらごめんだけど――」
そうじゃないかなと思うことはあった。
そうだったらいいなと思っていた。
だけどそうじゃなかったとき、現実があまりにも惨めだからなるべく考えないようにしていた。
「――勇者の捜してた聖者って、もしかして俺?」
震える声でそう問えば、エリアスが青褪めた顔で訝しそうに俺を覗き込む。
「ナナセ……? もしかして記憶がないのか?」
それな!
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異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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