異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが

マハラメリノ

文字の大きさ
上 下
213 / 266
最終章 砂漠の薔薇

〇一二 勇者シコい②

しおりを挟む
思うにこの邸はウィンチェスター・ハウスみたいに増改築を繰り返して造られたんじゃないだろうか。
ウィンチェスター・ハウスとは銃の製造メーカーで有名なあのウィンチェスター家の屋敷のことで、ウィンチェスター家は銃の製造で成功を収めたものの、二代目当主とその娘が立て続けに亡くなり、ウィンチェスター銃で殺された人たちの霊に呪われていると信じた夫人が、霊障を避けるために隠し部屋や秘密の通路を三十八年間に渡り三百六十五日造り続けていたっていうサイコなエピソード付きのミステリースポットだ。
今は観光名所としてハロウィンや十三日の金曜日には肝試しツアーが組まれている。

だが「砂漠の薔薇」の場合は、霊障除けなどではなくまず間違いなく足抜け除けだ。
俺もダンジョン攻略という冒険心疼かなくはないが、この邸内の複雑さと来たら迷子になったら発見して貰うまでにガチで飢え死にもあり得るだろう。
だから俺は知ってる道しか通らないし、ぼんやり歩いていて横道に逸れないように気を付けている。

ナズーリンにせがまれて新聞を読んでやって以来、俺は毎朝皆に新聞を読んでやるようになった。
その代わりに俺は皆からこの世界のことを教えて貰う。
それが切欠でスーリとショシャンナとも徐々に打ち解けてきた気がする。

ギャレットはあれから毎朝ずっと新聞を食堂のテーブルに置き忘れて行く。
ナズーリンが言うには今までそんなことはなかったそうだから、最初にナズーリンたちの興味のある記事が掲載された新聞を置き忘れたのもギャレットの計算だったのかという疑惑が浮上する。
どうも食えない奴なんだよな、ギャレットって。

朝食後は芸能人の楽屋みたいな化粧室パウダールームでメイドに髪や爪を整えてムダ毛の処理をして貰う。
ナズーリンは化粧もして貰ってるな。
俺はおかっぱは手入れが面倒臭いと愚痴をこぼしたら、ボブカットだって訂正された。
ボブ!
ボブって言ったら絵画教室のアフロヘアーのおじさんだろ。
俺の知ってるボブと違う。

甘皮を切って爪を艶々に磨いて貰ったら、ナズーリンたちはその日の最初の客の相手をしに行くが、まだ水揚げ前の俺はサンルームへ昼寝しに行く。
客に絡まれたくなかったら邸内を無闇にうろつくなと言われているからだ。
外は砂漠で日中は気温が相当高いと思うんだが、この邸の中は涼しくて身体を動かしていないと肌寒いくらいだからサンルームは温かくて眠気を誘う。

サンルームは畳に換算すると十畳くらいの部屋で、扉の向かい側の一面が床から天井まで嵌め殺しの硝子張りになっていてその向こうには、様々な花が咲き乱れるイングリッシュガーデン風に整えられた庭園が見える。
こんな砂漠の中に緑の庭園があるなんて凄い。

中央には猫足のカウチソファーとサイドテーブルに水差しとグラスがある。
大人しく昼寝していればおやつを持って来てくれるという。
しおりを挟む
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨


📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)

次章続巻も順次刊行予定
OLOLON

※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
感想 21

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...