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最終章 砂漠の薔薇

〇一二 勇者シコい①

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この娼館「砂漠の薔薇デザート・ローズ」で個室を与えられている男娼は俺を含めて四人。
その他にも男娼はいるらしいが、住んでる棟が違うため顔を合わせたことはない。
専ら四人の寮生活みたいな感じだ。

砂漠の中のオアシスの街だけど、俺の部屋には風呂もトイレも付いていて、お湯も使い放題だ。
外は灼熱の砂漠が広がっているにもかかわらず、表面をツルツルに磨き上げられた石造りの部屋はひんやりとしていて気持ちが良い。

内装は東欧風だけどちょっと中東要素も入っていたりでよく分からない。
歴史を調べればどうやってこういう文化が生まれたのか、成り立ちがわかるんだろうか。

家具はベッドが一台、ドレッサーが一台、姿見が一つ、嵌め殺しの窓際にソファーがあって、ウォークインクローゼットがあって、床には絨毯が一枚、その上にクッションがたくさん。
掃除も洗濯もメイドがやってくれる。

ここへ来たときは俺の持ち物は何一つなかったけど今では持ち物が増えた。
姿見の裏には新聞の切り抜きの勇者の姿絵を隠しているし、桃や杏の種子から取った薔薇の毒は香油が入っていた青い色付きの硝子壜の中に隠している。
この世界の果物はマンモスサイズなので食べるのが大変なのと、種子の殻が硬くて割るのに苦戦していて集まり具合は芳しくない。

おまけに大きな桃を素手で抱えてしまったから、腕の内側の柔らかいところに桃の表皮の産毛が刺さって痛くて堪らなかった。
皮を剥く時も手に産毛が刺さって酷い目に遭ったし、今後は桃は止めることにする。
杏子と枇杷でいいだろ。
だけど、痛がっているのをナズーリンに見られて桃の産毛だと白状すると手当をして貰えたのはいいが、ギャレットにチクられて滅茶苦茶叱られた上にすっかり食いしん坊キャラ扱いだ。

ここでの一日の始まりは、朝、メイドに起こされるところから始まる。
朝と言っても辛うじて午前中だというだけで、もう日が昇り切った時間だ。
それは一夜を共にした客を明け方に帰した男娼がひと眠りして起きてくる時間に合わせているからなのだが、それに気付いたときはなんとも言えない気分になった。
メイドはそのまま支度を手伝ってくれるが、水揚げ前にも拘わらず何故か毎日着飾らせられる。

衣装はだいたい異世界版民族衣装みたいなのばかりで、上はホルターネックの臍出しスタイルなんだが、ここで【悲報】俺氏、ブラジャーデビューする。
しかも俺こないだ気付いちゃったんだけど、乳首が超敏感で服が擦れるだけでビンビンに立ってて、ここ暑い国だから着る物みんな生地が薄いし誤魔化しようがないくらい主張しちゃってたんだよ。だけどな、それがブラジャーで解消。
もう泣いてもいいか? いいよな? ちょっと泣いた。

気を取り直して衣装の説明に戻ると、下は俺の下腹部に浮き出た淫紋がギリギリ隠れる腰の低い位置で留めた幅の広いベルトの前面と背面だけに長い布がたっぷりと付いていて足元まで垂れているものが多い。横は脚も横尻も丸見えだ。
今日はそれの水色のやつで、更にアクセサリーをたくさんつける。
王冠やサークレットのような髪飾りだとか、上腕二頭筋のところに着ける腕輪だとか、ネックレスやアンクレットもだ。

それから食堂へ降りて行って朝飯を取るんだが、この邸は構造が複雑で俺の部屋が何階に当たるのかすら分からない。
ゲームのダンジョンの中にあるような小さな石階段がついててそれを使ってるから俺の部屋は上の方にあることは確かなんだが。
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