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最終章 砂漠の薔薇
〇〇九 薔薇の掟①
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「ナナシは競売所で刃傷沙汰をやらかしてるから注意してくれ。以上、解散」
顔合わせが終わった後、ギャレットが去り際に爆弾落としていきやがった。
剣を掴んだ時負った傷に巻かれた包帯をわざとらしく見せながらな。
だがその言い方だと百人が百人とも俺がギャレットを斬ったって受け取るよな!?
誤解を解こうと周囲を見回すと、そこにいた全員が「刃傷沙汰ってお前何やったんだよ」っていう顔して俺を見て、視線が合いそうになると慌ててフッと目を逸らしてそれぞれの持ち場へ散って行く。
ギャレットォーッ!
言い方! それと言葉が絶望的に足りないぞ!
俺、完っ全に警戒されちまったじゃねえか!
クラス替え初日に友達作りに失敗したお友達みたいなことになってんじゃん俺!
サロンにぽつんと取り残された俺に、ナズーリンが話し掛けてくれる。
「ナナシはボクと同じ日本人なんだ?」
ナズーリン!
お前良い奴だな!
友達同士の集まりで会場に一人だけ遅れて到着したとき「来た来た! ここ座れよ。ほら、詰めて詰めて」って隣の席ポンポンして「お前何頼む?」って訊いてくれるタイプだろ。
しかもやっぱりナズーリンも日本人か!
「でもこっちに来たのまだ若……小さい頃だったから日本語はもうほとんど忘れちゃった。ギデオンの方が喋れるくらいだよ」
今「若い頃」って言いそうになって「小さい頃」って言い直さなかったか!?
一見年齢不詳だけど実際は俺よりかなり年上の様な気がするのは突っ込んじゃいけないか。
「ナナシは何歳なの?」
「覚えてる限り十八歳だったと思うけど、何時の間にか髪伸びてるし、何か俺、記憶がなくってよく分かんねえんだ……」
そういえばギャレットは俺に何も訊かなかったな。
競売所の元締めもだったけど、やっぱり詮無いことだと思っているんだろう。
「ふーん、そうなの? でも十八歳ならボクと同じだ。同郷同士仲良くしようね!」
「お、おう」
タ、タメかあ……?
本当にタメ歳かあ?
圧し切られて頷いてしまったが、年上の人から同年代として付き合うように強いられているのかこれは。
そのとき、俺の腹の虫が盛大に鳴いた。
そういえば、朝飯の後から何も食べてない。
昼は怒ってて食べ逃したし、夜はそれどころじゃなかったからな。
……恥ずかしい。
「あはは! ナナシ、お腹空いてるの? じゃあまず調理場に行こうか。ギデオンは和食も作れるから夜食作って貰おう。それから邸の中を案内するね。その頃にはナナシの部屋も準備が整ってるだろうから」
俺が羞恥に俯いていると、ナズーリンが笑い飛ばしてくれたので俺もちょっと笑う。
「ギデオンはどこかの料亭で修行してたらしくて何でも作れちゃうんだよ。ヤらせてあげたら大抵のものは作ってくれるから、ナナシも何か食べたいものがあったらギデオンにヤらせてあげてお願いするといいよ。ボクはラーメンが食べたいときはギデオンと寝てるんだ。従業員と寝るのはホントはダメなんだけど、ギャレットも見逃してくれてる。この世界の人って性欲が凄いからヤらせてあげたら欲しいものは大抵手に入るよ」
「へ、へえ……」
ラーメン一杯のために高級男娼が調理場担当に身体を売るのか。
そういう世界なのか。
「え、じゃあ、もしかしてこれから夜食作って貰うのも……!?」
「違う違う! それはないから安心して。今その話したら紛らわしかったよね。ご飯は三食ちゃんと出ます。ナナシは今日競り落とされて来たばっかで事情が事情だし夜食くらいタダで作ってくれるよ」
よ、よかった。
食われなきゃ食えないのかと思ったぜ。
「それにナナシは水揚げが済むまでは手を出したらダメだからね。金貨三〇〇〇〇枚ってことは処女でしょ? 初めては出来るだけ高く売らないと」
それな。
男に犯されるくらいなら舌噛んで死んでやる。
顔合わせが終わった後、ギャレットが去り際に爆弾落としていきやがった。
剣を掴んだ時負った傷に巻かれた包帯をわざとらしく見せながらな。
だがその言い方だと百人が百人とも俺がギャレットを斬ったって受け取るよな!?
誤解を解こうと周囲を見回すと、そこにいた全員が「刃傷沙汰ってお前何やったんだよ」っていう顔して俺を見て、視線が合いそうになると慌ててフッと目を逸らしてそれぞれの持ち場へ散って行く。
ギャレットォーッ!
言い方! それと言葉が絶望的に足りないぞ!
俺、完っ全に警戒されちまったじゃねえか!
クラス替え初日に友達作りに失敗したお友達みたいなことになってんじゃん俺!
サロンにぽつんと取り残された俺に、ナズーリンが話し掛けてくれる。
「ナナシはボクと同じ日本人なんだ?」
ナズーリン!
お前良い奴だな!
友達同士の集まりで会場に一人だけ遅れて到着したとき「来た来た! ここ座れよ。ほら、詰めて詰めて」って隣の席ポンポンして「お前何頼む?」って訊いてくれるタイプだろ。
しかもやっぱりナズーリンも日本人か!
「でもこっちに来たのまだ若……小さい頃だったから日本語はもうほとんど忘れちゃった。ギデオンの方が喋れるくらいだよ」
今「若い頃」って言いそうになって「小さい頃」って言い直さなかったか!?
一見年齢不詳だけど実際は俺よりかなり年上の様な気がするのは突っ込んじゃいけないか。
「ナナシは何歳なの?」
「覚えてる限り十八歳だったと思うけど、何時の間にか髪伸びてるし、何か俺、記憶がなくってよく分かんねえんだ……」
そういえばギャレットは俺に何も訊かなかったな。
競売所の元締めもだったけど、やっぱり詮無いことだと思っているんだろう。
「ふーん、そうなの? でも十八歳ならボクと同じだ。同郷同士仲良くしようね!」
「お、おう」
タ、タメかあ……?
本当にタメ歳かあ?
圧し切られて頷いてしまったが、年上の人から同年代として付き合うように強いられているのかこれは。
そのとき、俺の腹の虫が盛大に鳴いた。
そういえば、朝飯の後から何も食べてない。
昼は怒ってて食べ逃したし、夜はそれどころじゃなかったからな。
……恥ずかしい。
「あはは! ナナシ、お腹空いてるの? じゃあまず調理場に行こうか。ギデオンは和食も作れるから夜食作って貰おう。それから邸の中を案内するね。その頃にはナナシの部屋も準備が整ってるだろうから」
俺が羞恥に俯いていると、ナズーリンが笑い飛ばしてくれたので俺もちょっと笑う。
「ギデオンはどこかの料亭で修行してたらしくて何でも作れちゃうんだよ。ヤらせてあげたら大抵のものは作ってくれるから、ナナシも何か食べたいものがあったらギデオンにヤらせてあげてお願いするといいよ。ボクはラーメンが食べたいときはギデオンと寝てるんだ。従業員と寝るのはホントはダメなんだけど、ギャレットも見逃してくれてる。この世界の人って性欲が凄いからヤらせてあげたら欲しいものは大抵手に入るよ」
「へ、へえ……」
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そういう世界なのか。
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