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第三章 黎明と黄昏
〇三七 自己防衛おじさん②
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「俺の行ってた大学、早期卒業制度取り入れてないですよ。それにあったとしても日本の教育制度では最短でも三年から三年半は掛かるはずじゃ……?」
やっと口を開くことが出来たものの、話に付いていけない俺は超現実的なことを並べ立てて正気を保とうとしていた。
「ナナセくんがこちらへ来ている間に、あちらで教育制度に少々見直しがあってね。来年の春にはナナセくんが新制度の早期卒業の第一号になる予定だよ。おめでとう」
教育制度に少々見直し!?
「へ? あ、りがとうございま、す……? でも、どういう錬金術で?」
「なに、アルビオンで言う『レアメタル』だったかな? あれをほんのすこぅし融通してやっただけだよ。魔法の発達したこの世界では無価値なものなんだがね」
おじさんは人差し指と親指で「ほんのすこぅし」のジェスチャーをしながらウィンクして見せる。
それ、あっちの世界に「ほんのすこぅし」しか存在しないからクッソ高いやつだろ!
こっちの世界にどれだけ存在するかは知らないが。
つまり金か!?
想像を絶するほどの大金が動いたのか!?
治癒とか出来て魔導書も作れちゃうこの世界に必要な俺と、アルビオンに必要なレアメタルを物々交換したわけか!?
俺は政府に売られたのか!?
そんでもって俺をこっちに居つかせるために、教育制度を少々見直ししてさっさと卒業させて結婚させてしまえってことか!?
なんかそれ、当初エリアスが俺に求婚なんかするわけないってヴェイラの女王陛下の陰謀説を唱えていたときのシナリオそっくりになってきたな!?
しかも黒幕はヴェイラの女王陛下ではなくてルヴァの前皇帝陛下だったか。
俺の勘違いだらけの憶測も、今となっては結構いい線いってたわけだ。
いや、よくはないんだけどな?
しかしレアメタルか。
レアメタルは、スマートフォンの画面のタッチセンサーに使われるインジウムやリチウムイオン電池に使われるリチウムのような稀少金属のことだ。
地殻中の存在量が少なくて取り出すのにコストと手間が掛かるだけでなく、製錬するのも精錬するのも難しい。
だがそういった技術こそ実は魔法の得意分野なのだ。
この世界には金属の精霊こそいないが、地や火の精霊の力を借りれば製錬するのは簡単だろうし、凄まじい純度で精錬できるだろう。
アルビオンでも近年はレアメタルを必要としない技術も開発され、遠くない将来には不要になるとはいえ、まだまだ全てが実用化されるまでには至っていないから需要は高いはずだ。
それで卒業できちゃうんだから、俺はどこまでも金属に助けられているな。
「今回の一件では流石におじさんも各方面からの風当たりが強くてね。ほら、ヴェイラには前の聖女殿。ナナセくんの母君のことがあっただろう?」
待って♡
お母様が前の聖女!?
それマ!?
「おや、知らなかったのかい? ナナセくんの母君は前の聖女殿だったんだよ。それで彼女の息子のナナセくんにまで何かあったら流石に示しがつかないからねえ。でも君たちが予定よりも早く結婚してくれたら世論も納得してくれて私も言い訳が立つんだよ。それにはまず、ナナセくんが大学を卒業しないことには話が進まないんだろう?」
だから俺を卒業させられるようレアメタル持参で働きかけたという訳か。
おじさん、保身に走りやがったな!
自己防衛おじさんかよ!
俺はもう考えるのを止めたぞ♡
「だから君たちは出来るだけ早く結婚するように」
「はい! 仰せのままに!」
良い返事だな、エリアス!
それに今日一良い笑顔だ!
俺はさっき考えるのを止めたからもう知らない♡
そうして、おじさんは「黎明と黄昏」は君たちが持っていなさいと言って結局受け取らずに帰って行ったので俺たちの手元に残った。
やっと口を開くことが出来たものの、話に付いていけない俺は超現実的なことを並べ立てて正気を保とうとしていた。
「ナナセくんがこちらへ来ている間に、あちらで教育制度に少々見直しがあってね。来年の春にはナナセくんが新制度の早期卒業の第一号になる予定だよ。おめでとう」
教育制度に少々見直し!?
「へ? あ、りがとうございま、す……? でも、どういう錬金術で?」
「なに、アルビオンで言う『レアメタル』だったかな? あれをほんのすこぅし融通してやっただけだよ。魔法の発達したこの世界では無価値なものなんだがね」
おじさんは人差し指と親指で「ほんのすこぅし」のジェスチャーをしながらウィンクして見せる。
それ、あっちの世界に「ほんのすこぅし」しか存在しないからクッソ高いやつだろ!
こっちの世界にどれだけ存在するかは知らないが。
つまり金か!?
想像を絶するほどの大金が動いたのか!?
治癒とか出来て魔導書も作れちゃうこの世界に必要な俺と、アルビオンに必要なレアメタルを物々交換したわけか!?
俺は政府に売られたのか!?
そんでもって俺をこっちに居つかせるために、教育制度を少々見直ししてさっさと卒業させて結婚させてしまえってことか!?
なんかそれ、当初エリアスが俺に求婚なんかするわけないってヴェイラの女王陛下の陰謀説を唱えていたときのシナリオそっくりになってきたな!?
しかも黒幕はヴェイラの女王陛下ではなくてルヴァの前皇帝陛下だったか。
俺の勘違いだらけの憶測も、今となっては結構いい線いってたわけだ。
いや、よくはないんだけどな?
しかしレアメタルか。
レアメタルは、スマートフォンの画面のタッチセンサーに使われるインジウムやリチウムイオン電池に使われるリチウムのような稀少金属のことだ。
地殻中の存在量が少なくて取り出すのにコストと手間が掛かるだけでなく、製錬するのも精錬するのも難しい。
だがそういった技術こそ実は魔法の得意分野なのだ。
この世界には金属の精霊こそいないが、地や火の精霊の力を借りれば製錬するのは簡単だろうし、凄まじい純度で精錬できるだろう。
アルビオンでも近年はレアメタルを必要としない技術も開発され、遠くない将来には不要になるとはいえ、まだまだ全てが実用化されるまでには至っていないから需要は高いはずだ。
それで卒業できちゃうんだから、俺はどこまでも金属に助けられているな。
「今回の一件では流石におじさんも各方面からの風当たりが強くてね。ほら、ヴェイラには前の聖女殿。ナナセくんの母君のことがあっただろう?」
待って♡
お母様が前の聖女!?
それマ!?
「おや、知らなかったのかい? ナナセくんの母君は前の聖女殿だったんだよ。それで彼女の息子のナナセくんにまで何かあったら流石に示しがつかないからねえ。でも君たちが予定よりも早く結婚してくれたら世論も納得してくれて私も言い訳が立つんだよ。それにはまず、ナナセくんが大学を卒業しないことには話が進まないんだろう?」
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