184 / 266
第三章 黎明と黄昏
〇三七 自己防衛おじさん①
しおりを挟む
死を受け入れる必要はない。
生きたってことを叫べばいいのだ。
その二つはいつだって表裏一体なのだから。
俺は絶望的に言葉が足りていなかったけれど、エリアスは俺の言いたいことを正しく理解してくれた。
俺は泣いて泣いていっぱい泣いて、泣き疲れて眠っている間にロスの創造都市ゴルゴヌーザを後にしてルヴァ魔導帝国へと戻されていた。
目を覚ましたら、見覚えのあるルヴァ王宮のアール・ヌーボー様式の寝室のベッドで寝かされていて、ベッドサイドに引き寄せた椅子に座っていたエリアスが俺の手を握っていたのだ。
もうゴルゴヌーザは懲り懲りだからいいけど、何があったのかはエリアスが大体報告済みらしく、俺は何故か病人みたいにベッドに寝かされ、お見舞いに来てくれる人たちから腫物に触るような扱いを受けている。
大体な、お見舞いってなんだよお見舞いって!
俺は別に病気でもなんでもねえぞ!?
徹夜でセックスして寝不足で風呂で溺れかけたけど身体は至って健康だし!
でもな、エリアスの顔見たら何も言えなかった。
エリアスがな、起きてもりもり飯食ってる俺を見て泣きそうな顔で笑うんだよ。
今度はなんというか、エリアスから母性を感じるのは俺だけだろうか。
やっぱりBボタンを押したい。
その進化を止めたい。
だが心配かけたのは事実だし、そんな顔見たらもうエリアスの気の済むようにしてやろうと覚悟を決めた。
俺が大人しく寝ているだけでエリアスを安心させられるなら安いもんだしな。
何より驚いたのは、あしながおじさんがお見舞いのついでに例の課題を受け取りに来たときのことだ。
先触れの後、白髪に白い髭を蓄えた壮年の紳士――あしながおじさんが部屋に入って来るなり、エリアスは瞠目したかと思うと素早く立ち上がってぴしりと背筋を伸ばす。
「前皇帝陛下……」
待って♡
エリアス、今なんて?
しかし、寝ていていい雰囲気ではないので俺もベッドに肘をついて起き上がろうとすると制止の声が掛けられる。
「ナナセくん、ああ起きるな。そのままでいい。今回は大変だったね。それにご苦労だった」
おじさんは俺にそう微笑みかけてから、今度はエリアスに向き直った。
「エリアスくん。私は既に退位した身だよ。今はナナセくんのあしながおじさんとしてここにいる。この意味がわかるね?」
「……は」
あーこの喋り方、なるほど誰かの喋り方に似てると思ってた現皇帝陛下の喋り方とそっくりだわ。
なるほどな。おじさんの息子だったか。
俺の理解が追い付こうとしている間にもエリアスとあしながおじさん――ルヴァの前皇帝陛下の会話は進む。
「そしてそれが例の魔導書だね。本当に成功したんだね……」
「『黎明と黄昏』です。この為に一人犠牲に……」
提出するために用意しておいた「黎明と黄昏」をエリアスが差し出したが、おじさんは手を伸ばしかけたものの触れる直前で指を折って手を引っ込めた。
「そうか……いや、この件について私に発言する権利はないな。止めておこう。それに使用者も恐らく君たち二人に限定されていることだろう。私には閲覧権限がない」
どうするのだろうと思って見ていると、おじさんは引っ込めた手で髭をひとつ撫でてから高らかに宣言する。
「魔導書『黎明と黄昏』の提出により卒業に必要な条件を十分に満たしたものとする。これを以て卒業を認める」
待って♡
だからねえ、待って♡
さっきから超展開過ぎない!?
生きたってことを叫べばいいのだ。
その二つはいつだって表裏一体なのだから。
俺は絶望的に言葉が足りていなかったけれど、エリアスは俺の言いたいことを正しく理解してくれた。
俺は泣いて泣いていっぱい泣いて、泣き疲れて眠っている間にロスの創造都市ゴルゴヌーザを後にしてルヴァ魔導帝国へと戻されていた。
目を覚ましたら、見覚えのあるルヴァ王宮のアール・ヌーボー様式の寝室のベッドで寝かされていて、ベッドサイドに引き寄せた椅子に座っていたエリアスが俺の手を握っていたのだ。
もうゴルゴヌーザは懲り懲りだからいいけど、何があったのかはエリアスが大体報告済みらしく、俺は何故か病人みたいにベッドに寝かされ、お見舞いに来てくれる人たちから腫物に触るような扱いを受けている。
大体な、お見舞いってなんだよお見舞いって!
俺は別に病気でもなんでもねえぞ!?
徹夜でセックスして寝不足で風呂で溺れかけたけど身体は至って健康だし!
でもな、エリアスの顔見たら何も言えなかった。
エリアスがな、起きてもりもり飯食ってる俺を見て泣きそうな顔で笑うんだよ。
今度はなんというか、エリアスから母性を感じるのは俺だけだろうか。
やっぱりBボタンを押したい。
その進化を止めたい。
だが心配かけたのは事実だし、そんな顔見たらもうエリアスの気の済むようにしてやろうと覚悟を決めた。
俺が大人しく寝ているだけでエリアスを安心させられるなら安いもんだしな。
何より驚いたのは、あしながおじさんがお見舞いのついでに例の課題を受け取りに来たときのことだ。
先触れの後、白髪に白い髭を蓄えた壮年の紳士――あしながおじさんが部屋に入って来るなり、エリアスは瞠目したかと思うと素早く立ち上がってぴしりと背筋を伸ばす。
「前皇帝陛下……」
待って♡
エリアス、今なんて?
しかし、寝ていていい雰囲気ではないので俺もベッドに肘をついて起き上がろうとすると制止の声が掛けられる。
「ナナセくん、ああ起きるな。そのままでいい。今回は大変だったね。それにご苦労だった」
おじさんは俺にそう微笑みかけてから、今度はエリアスに向き直った。
「エリアスくん。私は既に退位した身だよ。今はナナセくんのあしながおじさんとしてここにいる。この意味がわかるね?」
「……は」
あーこの喋り方、なるほど誰かの喋り方に似てると思ってた現皇帝陛下の喋り方とそっくりだわ。
なるほどな。おじさんの息子だったか。
俺の理解が追い付こうとしている間にもエリアスとあしながおじさん――ルヴァの前皇帝陛下の会話は進む。
「そしてそれが例の魔導書だね。本当に成功したんだね……」
「『黎明と黄昏』です。この為に一人犠牲に……」
提出するために用意しておいた「黎明と黄昏」をエリアスが差し出したが、おじさんは手を伸ばしかけたものの触れる直前で指を折って手を引っ込めた。
「そうか……いや、この件について私に発言する権利はないな。止めておこう。それに使用者も恐らく君たち二人に限定されていることだろう。私には閲覧権限がない」
どうするのだろうと思って見ていると、おじさんは引っ込めた手で髭をひとつ撫でてから高らかに宣言する。
「魔導書『黎明と黄昏』の提出により卒業に必要な条件を十分に満たしたものとする。これを以て卒業を認める」
待って♡
だからねえ、待って♡
さっきから超展開過ぎない!?
0
異世界で聖者やってたら勇者に求婚されたんだが
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
第一章 聖者降臨
📖文庫版(紙の書籍)
📖Kindle(電子書籍)
📖BOOK☆WALKER(電子書籍)
次章続巻も順次刊行予定
OLOLON
※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる