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第三章 黎明と黄昏
〇三四 三回もセックスって言った②
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ゾアは役割分担がはっきりしている。
今回の「世界の均衡を取り戻す」って役割はどっちかっていうと「大地の管理者」の名を冠する想像力の化身、北の宇宙ウルソナの管轄だ。
創世神話の中では、ウルソナから分離したロスとルヴァは協力関係にあったが、ウルソナとルヴァはほとんどお互いに干渉していない。
「まあ望めば神や悪魔といった存在にも近付けたかも知れないんだけどね。僕は力を手に入れることよりも愛を営む者たちと共に在り続けることを選んだのさ」
ルヴァはルヴァであるが故に、力よりも愛を選んだ。
それがルヴァの本質なのだろう。
だからこそ、こう微妙に苛つくのに完全には憎みきれない。
「でも、どうして俺だったんだ?」
「強くなり過ぎた光と闇を混ぜ合わせて中和するにはどうしても闇魔法が必要だったけど、太古の昔、闇と契約した一族はこの世界ではもう途絶えてしまったから他から呼び寄せるしかなかったんだよ」
「え、じゃあ、じゃあ……ルヴァが俺をこの世界へ呼んだのか?」
「そうだよ」
これにはエリアスも僅かに動揺を見せる。
だってルヴァが呼んでくれたから俺はエリアスと出会えたんだ。
「……ナナセをこの地に呼び寄せたのは何故だ?」
「その答えは、創造都市ゴルゴヌーザが何故この地に在るかってことの答えにもなるね。全ては死から生まれるからだよ。何かを生み出すのに永遠の死の国より相応しい地はないでしょ。それにナナセくんが金属と相性が良いこともあったしね。鍛冶術士としての一面を持つウルソナの力は、ウルソナから分離したロスにも受け継がれているんだよ。だから僕からロスにお願いしてこの地を貸して貰ったってわけ」
こうしてロスに場所を提供してくれるよう頼むのがルヴァに出来る精一杯だったのだろう。
エリアスはそれきり考え込むように口を閉ざしてしまったので今度は俺が訊いてみる。
「じゃあ『遅すぎた』とか『心を決めると良い』って何だったんだよ?」
「それは訊いてくれて嬉しいね。君たちにセックスさせるためだよ。セックスしないことには君の闇魔法は使えないからね。ああ言えば恋人たちはセックスするだろう?」
こいつ、三回もセックスって言った。
一秒間に十回レイプって言うクラウザーさんには遠く及ばないが。
「こう見えて僕は恋愛のスペシャリストだからね」
ルヴァはそう言ってウインクする。
そろそろエリアスの顳顬の血管が切れそうだ。
気持ちは分かるが、駄目だエリアス。
せめて朝飯を食い終わるまで、もうちょっとの辛抱だ。
俺がエリアスの膝にそっと手を置くと、驚いたようにこっちを見た。
それを見てルヴァがニコニコして言う。
「食べ終わったら、宿泊している部屋まで僕が送り届けてあげよう」
気が利くな?
今回の「世界の均衡を取り戻す」って役割はどっちかっていうと「大地の管理者」の名を冠する想像力の化身、北の宇宙ウルソナの管轄だ。
創世神話の中では、ウルソナから分離したロスとルヴァは協力関係にあったが、ウルソナとルヴァはほとんどお互いに干渉していない。
「まあ望めば神や悪魔といった存在にも近付けたかも知れないんだけどね。僕は力を手に入れることよりも愛を営む者たちと共に在り続けることを選んだのさ」
ルヴァはルヴァであるが故に、力よりも愛を選んだ。
それがルヴァの本質なのだろう。
だからこそ、こう微妙に苛つくのに完全には憎みきれない。
「でも、どうして俺だったんだ?」
「強くなり過ぎた光と闇を混ぜ合わせて中和するにはどうしても闇魔法が必要だったけど、太古の昔、闇と契約した一族はこの世界ではもう途絶えてしまったから他から呼び寄せるしかなかったんだよ」
「え、じゃあ、じゃあ……ルヴァが俺をこの世界へ呼んだのか?」
「そうだよ」
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だってルヴァが呼んでくれたから俺はエリアスと出会えたんだ。
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こうしてロスに場所を提供してくれるよう頼むのがルヴァに出来る精一杯だったのだろう。
エリアスはそれきり考え込むように口を閉ざしてしまったので今度は俺が訊いてみる。
「じゃあ『遅すぎた』とか『心を決めると良い』って何だったんだよ?」
「それは訊いてくれて嬉しいね。君たちにセックスさせるためだよ。セックスしないことには君の闇魔法は使えないからね。ああ言えば恋人たちはセックスするだろう?」
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