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第三章 黎明と黄昏
〇二八 永遠の死の国①
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確か、前にもあったよなこういうの。
ジェットコースターで落下するときみたいな、マイナスGのエアタイム。
あのときは船の甲板から目的地である魔物の襲撃を受けた村へ飛び降りたんだけど、二回目ともなれば流石に俺も慣れる、わけねえっ!
またしても悲鳴を上げる暇もなくエリアスと俺は創造都市ゴルゴヌーザの墻壁を飛び越えて「永遠の死の国」へと降り立った。
「大丈夫かナナセ」
「……うん。まあなんとか。さっきの警邏隊の人、追ってくるかな?」
「墻壁の外まで追いかけてくるほどの給料は貰っていないだろう」
「そっか。それじゃあひとまずは安心だな。それよりここが『永遠の死の国』……?」
「そうなのだろうな。私も初めて踏み入る」
膝がガクガクでへたり込みそうだが、エリアスに支えて貰いながら周辺を見回した。
見渡す限り、太古の原生林異世界版といった風情の景色が広がっている。
夜にも拘らずびっくりするほど明るいのは、今夜が満月だからという理由だけではない。
辺り一面に蛍光黄緑色に発光する苔が自生しているからだ。
巨大なゼンマイのような形をした羊歯植物や、おかしな形の木々は緑色に苔むし、紫色や橙色の葉を付けていて、提灯みたいに膨らんだピンクや水色に発光する花だか実だかをつけているものもある。
足元は苔と岩石で、背丈ほどもある水晶みたいな六角柱の鉱石があちこちから飛び出しているだけでなく、様々な大きさの八面体や十二面体や二十四面体の何かの結晶がそこかしこにゴロゴロと転がっていた。
死の国という語感だけで荒涼とした岩石砂漠のようなところを想像していたんだけど、ここは少し蒸し暑くて太古の時代、それこそ顕生代あたりはこんな感じだったんじゃないだろうかと思わせる。
兎にも角にも、寝間着にニスデールを羽織っただけという格好だった俺たちは、森の中へと足を踏み入れ墻壁から離れた木陰で、荷物の中に入れてあった軽装に着替えを済ませた。
「エリー、俺たちこれからどうしよう。言っとくけど朝になったら俺だけゴルゴヌーザの宿屋へ送るってのはナシだからな」
上からだけでなく下からも蛍光色の薄明りに照らされる幻想的な景色を眺めながら、エリアスに釘をさす。
「……朝まではもたないかも知れない」
思いも寄らぬその返事に驚いてエリアスの方を振り返ってぎょっとした。
――角が伸びている。
び、Bボタン!!
俺は今、物凄くBボタンを連打したい!
お客様の中にBボタンをお持ちの方はいらっしゃいませんかー!?
どうやったらエリアスの進化をキャンセルできるんだよ!?
ゴルゴヌーザで見た時は五センチほどだったエリアスの額の角が、今は一〇センチほどにまで成長していたのだ。
育ち盛り過ぎない!?
困ったように苦笑するエリアスに俺はドスを効かせた声で牽制する。
「馬鹿なこと考えんなよ。それに『死ぬときは一緒』だろ? 俺を置いて行くなよ」
「誤解だ。ナナセを置いて行こうとしたわけではない。一時的に私から遠ざけてナナセの安全を確保してからなんとかして戻るつもりだった」
「それが馬鹿なことだって言ってんの。前に俺が『魔王になってもエリーのことが好きだ』って言ったの忘れたのかよ」
それはいつかの獣人領で舞踏会の終わる頃、夜が明けてゆくのを二人で眺めながら言った言葉だ。
ジェットコースターで落下するときみたいな、マイナスGのエアタイム。
あのときは船の甲板から目的地である魔物の襲撃を受けた村へ飛び降りたんだけど、二回目ともなれば流石に俺も慣れる、わけねえっ!
またしても悲鳴を上げる暇もなくエリアスと俺は創造都市ゴルゴヌーザの墻壁を飛び越えて「永遠の死の国」へと降り立った。
「大丈夫かナナセ」
「……うん。まあなんとか。さっきの警邏隊の人、追ってくるかな?」
「墻壁の外まで追いかけてくるほどの給料は貰っていないだろう」
「そっか。それじゃあひとまずは安心だな。それよりここが『永遠の死の国』……?」
「そうなのだろうな。私も初めて踏み入る」
膝がガクガクでへたり込みそうだが、エリアスに支えて貰いながら周辺を見回した。
見渡す限り、太古の原生林異世界版といった風情の景色が広がっている。
夜にも拘らずびっくりするほど明るいのは、今夜が満月だからという理由だけではない。
辺り一面に蛍光黄緑色に発光する苔が自生しているからだ。
巨大なゼンマイのような形をした羊歯植物や、おかしな形の木々は緑色に苔むし、紫色や橙色の葉を付けていて、提灯みたいに膨らんだピンクや水色に発光する花だか実だかをつけているものもある。
足元は苔と岩石で、背丈ほどもある水晶みたいな六角柱の鉱石があちこちから飛び出しているだけでなく、様々な大きさの八面体や十二面体や二十四面体の何かの結晶がそこかしこにゴロゴロと転がっていた。
死の国という語感だけで荒涼とした岩石砂漠のようなところを想像していたんだけど、ここは少し蒸し暑くて太古の時代、それこそ顕生代あたりはこんな感じだったんじゃないだろうかと思わせる。
兎にも角にも、寝間着にニスデールを羽織っただけという格好だった俺たちは、森の中へと足を踏み入れ墻壁から離れた木陰で、荷物の中に入れてあった軽装に着替えを済ませた。
「エリー、俺たちこれからどうしよう。言っとくけど朝になったら俺だけゴルゴヌーザの宿屋へ送るってのはナシだからな」
上からだけでなく下からも蛍光色の薄明りに照らされる幻想的な景色を眺めながら、エリアスに釘をさす。
「……朝まではもたないかも知れない」
思いも寄らぬその返事に驚いてエリアスの方を振り返ってぎょっとした。
――角が伸びている。
び、Bボタン!!
俺は今、物凄くBボタンを連打したい!
お客様の中にBボタンをお持ちの方はいらっしゃいませんかー!?
どうやったらエリアスの進化をキャンセルできるんだよ!?
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育ち盛り過ぎない!?
困ったように苦笑するエリアスに俺はドスを効かせた声で牽制する。
「馬鹿なこと考えんなよ。それに『死ぬときは一緒』だろ? 俺を置いて行くなよ」
「誤解だ。ナナセを置いて行こうとしたわけではない。一時的に私から遠ざけてナナセの安全を確保してからなんとかして戻るつもりだった」
「それが馬鹿なことだって言ってんの。前に俺が『魔王になってもエリーのことが好きだ』って言ったの忘れたのかよ」
それはいつかの獣人領で舞踏会の終わる頃、夜が明けてゆくのを二人で眺めながら言った言葉だ。
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※この作品の出版権は作者本人に帰属しています。詳しくはこちらを参照してください。
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