164 / 266
第三章 黎明と黄昏
〇二四 創造都市ゴルゴヌーザ②
しおりを挟む
さっき出迎えに来てくれたこの街の有力者に、魔導書の編纂について詳しい人を紹介して貰えるように頼んでおいたから、本格的な活動はそれからだし今日はこの後用事もない。
今日のところは部屋でのんびりするのもいいだろうと放置していたら、エリアスが復活したのは日が随分と傾いてからだった。
すっかり忘れていたが昼食を食べ逃したことを思い出して、呼び鈴を鳴らしてホテルの従業員に部屋へ軽食を運んで貰うよう頼むと、銀の大皿に盛られ運ばれて来たのはファラフェルで、ゴルゴヌーザは建築だけでなく食べ物も東欧と中東が融合しているらしい。
ファラフェルってのは、すり潰したひよこ豆を団子状に丸めて素揚げしたものなんだが、様々な文化と融合して単品で食べるよりフムスや刻んだ野菜や素揚げした野菜と一緒にピタパンに詰め込んで食すスタイルが確立している。
ピタは顔が隠れれるくらいの大きさに薄く焼いた円形のフラットブレッドで、半月型に真っ二つに切ると油揚げみたいに開くので、お稲荷さんのように中に色々な食材を詰めて食される。
フムスはにんにくや香辛料を混ぜ込んだひよこ豆のペーストで、原材料はオール植物性なのに何故かツナマヨみたいなある味がしてコクがあって旨い。
つまり、ひよこ豆にひよこ豆を付けて食べるわけだが、そこは原材料がほぼ大豆な「豆腐と油揚げの味噌汁」とか、原材料がほぼ小麦粉な「マカロニグラタンにパン粉をつけてコロッケにしてバンズで挟んだバーガー的なやつ」を普通に受け入れてる俺が突っ込んじゃいけない。
俺の元いた世界アルビオンにも欧州の方にはファラフェル専門店がたくさんあって、歩きながらでも食べられるように紙に包んで提供する露店から、基本のピタとオプションを購入した後、中に詰める具材はビュッフェスタイルで食べ終わるまで何度でもピタに詰め放題というファストフード店もあるが、ここは貴族が泊まるような品のいいホテルなので大皿に盛り付けてカトラリーも一緒に提供される。
お盆のような銀色の楕円形の大皿の上に賽の目に切られたトマトときゅうり、千切りの赤キャベツとにんじん、素揚げしたアスパラガスと輪切りのナス、それにフムスとファラフェルとピタが盛られていて、これで一人前。
皿から溢れんばかりの具材をピタに効率よく綺麗に詰めるには集中力がいるから、蟹を食べるときみたいに無言になる。
そうして黙々と食事に集中していると――。
――ナナセ。
俺はまた不意に名前を呼ばれた気がしてエリアスを見る。
声は随分と近くで聞こえた。
この部屋には俺とエリアスしかいない。
「呼んだ?」
エリアスは食事の手を止め、淡褐色と淡緑色の混ざり合う榛色の瞳を瞬かせた後、頷きながら答える。
「――ああ、呼んだ」
なんだよ。やっぱりエリアスだった。
しかしエリアスは俺が続きを促すと、困ったように笑って続けた。
「すまない。呼んでみただけだ」
おいおい。呼んでみただけって、俺たちもいよいよ本格的なバカップルらしくなってきたな!
今日のところは部屋でのんびりするのもいいだろうと放置していたら、エリアスが復活したのは日が随分と傾いてからだった。
すっかり忘れていたが昼食を食べ逃したことを思い出して、呼び鈴を鳴らしてホテルの従業員に部屋へ軽食を運んで貰うよう頼むと、銀の大皿に盛られ運ばれて来たのはファラフェルで、ゴルゴヌーザは建築だけでなく食べ物も東欧と中東が融合しているらしい。
ファラフェルってのは、すり潰したひよこ豆を団子状に丸めて素揚げしたものなんだが、様々な文化と融合して単品で食べるよりフムスや刻んだ野菜や素揚げした野菜と一緒にピタパンに詰め込んで食すスタイルが確立している。
ピタは顔が隠れれるくらいの大きさに薄く焼いた円形のフラットブレッドで、半月型に真っ二つに切ると油揚げみたいに開くので、お稲荷さんのように中に色々な食材を詰めて食される。
フムスはにんにくや香辛料を混ぜ込んだひよこ豆のペーストで、原材料はオール植物性なのに何故かツナマヨみたいなある味がしてコクがあって旨い。
つまり、ひよこ豆にひよこ豆を付けて食べるわけだが、そこは原材料がほぼ大豆な「豆腐と油揚げの味噌汁」とか、原材料がほぼ小麦粉な「マカロニグラタンにパン粉をつけてコロッケにしてバンズで挟んだバーガー的なやつ」を普通に受け入れてる俺が突っ込んじゃいけない。
俺の元いた世界アルビオンにも欧州の方にはファラフェル専門店がたくさんあって、歩きながらでも食べられるように紙に包んで提供する露店から、基本のピタとオプションを購入した後、中に詰める具材はビュッフェスタイルで食べ終わるまで何度でもピタに詰め放題というファストフード店もあるが、ここは貴族が泊まるような品のいいホテルなので大皿に盛り付けてカトラリーも一緒に提供される。
お盆のような銀色の楕円形の大皿の上に賽の目に切られたトマトときゅうり、千切りの赤キャベツとにんじん、素揚げしたアスパラガスと輪切りのナス、それにフムスとファラフェルとピタが盛られていて、これで一人前。
皿から溢れんばかりの具材をピタに効率よく綺麗に詰めるには集中力がいるから、蟹を食べるときみたいに無言になる。
そうして黙々と食事に集中していると――。
――ナナセ。
俺はまた不意に名前を呼ばれた気がしてエリアスを見る。
声は随分と近くで聞こえた。
この部屋には俺とエリアスしかいない。
「呼んだ?」
エリアスは食事の手を止め、淡褐色と淡緑色の混ざり合う榛色の瞳を瞬かせた後、頷きながら答える。
「――ああ、呼んだ」
なんだよ。やっぱりエリアスだった。
しかしエリアスは俺が続きを促すと、困ったように笑って続けた。
「すまない。呼んでみただけだ」
おいおい。呼んでみただけって、俺たちもいよいよ本格的なバカップルらしくなってきたな!
0
お気に入りに追加
1,328
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
ある日、人気俳優の弟になりました。2
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる